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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第5話 武神の遺産と一族
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武神の遺産と一族(2)



「……………………」



 予想外に黙りこくってしまった知有に、和希は焦った。


 しまった。

 しっかりしているように見えても小学5年生だ。

 家のなかのこと、親のことを、割りきって話せるような気持ちにはなれなくて当然だ。


 自分のこどもの頃の経験ゆえに、家族関係の破綻に慣れきった和希が、自分の麻痺した感覚で軽く聞いてはいけなかった。



「あの、家主さん、その…………」



 知有は知有なりの苦労をしているはずだ。

 配慮の足りない聞き方をしてしまった自分に後悔しながら、言わなくても良いのだと伝える言葉を考えていると。



「おはようございます!!」



 まったく空気を読まないタイミングで道場の引き戸を開け、元気な挨拶をしてくる奴がいた。

 男にしては明るく響く、そして剣道で鍛えられた声。



「……おはよう、慶史」



 四尺棒いりのケースを背中に背負った、真面目そうな優しげな顔立ちのメガネの少年に、和希は声をかける。

 和希と一番仲が良い、一年下の後輩の今井慶史だ。

 知有のお気に入りでもあり、ちょくちょく、この上泉邸にも遊びに来る。



「えっと……2人とも、雑巾がけ中ですね。

 じゃあ、俺も」



 ナイス慶史。話を切り替えてくれた。

 これで先程の話は一旦、流せる。よかった。



「いや、いい」


「??」


 知有は雑巾を畳んだ。


「慶史。いまちょうど、和希に言われたんだ。

 家のことを教えてくれ、って。

 たしかに、なにも言わずに和希にここにいてくれというのは、虫がいい話だった」


「いや、大丈夫ですよ家主さん?」


 一応補足してみたが、どうも知有は話す気になっているのらしい。いいから、と、和希の手からも、雑巾をとりあげた。



「2人とも、ちょっと、ついてきてくれないか?」



 雑巾を部屋の隅のバケツにかけると、知有はそう声をかけて、道場を出た。




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