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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第4話 アイドルの殺傷力偏差値
52/145

アイドルの殺傷力偏差値(15)




 和希たちが疾走する方にいる男は2人。

 プラスして2人、行き手をふさごうと走ってくる。


 強行突破を絵に描いたような走り方をする2人の女を、正面から受け止めようとしているのだ。

 男女の体格差を考えず無謀に突っ込んでくる女。

 そう見えているなら好都合。



 男たちにぶつかるギリッギリで。

 地面を蹴る足にカッ!と力をいれると、和希はジグザグにステップを踏んだ。



「……え……ゥッ!?」



 複数にマークされている中その囲みを突破するのは、高校のサッカー部時代、和希が最も得意としていたものだ。

 するりと間を通り抜けられて面食らった男2人が、互いに思い切りぶつかった。

 


「お、うまーい」



 そういうIoRi(イオリ)は、重心を落としながら巧みに足をかけつつ、自分より大きな相手の頭をがっちり掴んで、はたき落とす。

 シンプルかつ見事だが、和希の腕力ではできない技なのは確かだ。

 肘の刃物はもう引っ込んでいる。

 どういう仕組みか気になった。



「急ぎますよ」


 和希は逃げるポーズをつくって、走る。

 


 本当に逃げる方に全ての意識を注ぐわけではない。


 和希より足が速い奴がいないとも限らないのに、詳細のわからない敵に背中を見せて逃げるのは得策ではない。

 追ってこさせ、相手を動かしながら狩る、つもりである。


 その和希の意図が、IoRi(イオリ)に伝わるかはわからないが。

 この戦闘狂がただ逃げるだけということはしないだろう。


 そう考えながら、後ろに迫っていた奴に後ろ蹴りをぶちこむ。

 逃げながらなのであまり力を込められなかったか、相手は倒れる気配なく、ちょっと距離をつくるにとどまった。

 相手は全員、動きが慣れた人間のそれだし、和希とはだいぶ体格の差があるのだ。

 足を掴まれるとこわい。



(……それにしても。

 IoRi(イオリ)選手を捕まえてもどうするつもりだったんだ?

 道なき道を連れていくつもりだったのか?

 それとも、山の反対側に……?)



「ぎゃぁああっ!」



 後ろであがる男の悲鳴。

 気になるがすぐ振り返るには後ろにいる追っ手が邪魔だ。

 しかし気になりすぎて、やっぱり後ろの奴には捻り蹴り(ピトロチャギ)を食らわせることにした。

 今度は和希より大きな男だしちゃんと高さ調節したので、前足底できれいにクリーンヒット。



「……なん……

 ……えええ!?」



 振り返った和希は間抜けな声をあげてしまった。

 さっき和希たちがかぶせられた網がある。

 木の上の面々が落ちてから、網は無意味に地面に這っていたのだが、IoRi(イオリ)はいつの間にかその網に、4人男を絡めとっている。

 一体なにをどうしたのかわからないが、IoRi(イオリ)がその体以上に怪異な腕力と背筋力で網を振り回すと、転倒した状態で引きずられていく。



「だから網、面白くないんだよね」



 そういうと、IoRi(イオリ)は、その場に最後に残った1人をぺしりとワンパン(正確には裏拳)KOしてのけた。

 古来より、可憐な美女が見た目に反した怪力を発揮したという逸話はあちこちで伝承されているが、もし彼女が2000年前にいたら神話になったのではないだろうか。



「……まだ来るみたいですけどね」


「あは。さっき、木から落ちてた人たちか」


「だけじゃなさそうですよ?」



 山道にまた、わらわらと仲間らしき連中が降りてくる。

 しかし、このままだと、後輩たちも登ってきて、巻き込まれてしまう。どうするべきか?



 下るべきかと和希が考えたその時。


「!?」


 ひゅっ、と上からまた人影が降りてきた。

 人影はまたたくまに3人、型通りの綺麗な空手で倒す。


 敵が浮き足立ったところで、残りの敵はIoRi(イオリ)が1人、和希が2人倒した。



「鈴鹿!!」



 腕がたつ美貌の助っ人の名を、和希は呼んだ。



「今日はいないと思ったら……山の上にいたの?」



「イオリがらみで追ってきてる奴がいないか、如意ヶ嶽全体を一巡り回ってたんです。

 あいつらは、反対側の山道から回ってきたみたいですね。

 まだ仲間が待機しているかもしれません。

 とりあえず、今のうちに早急に降りましょう」



「そう……だね。

 後輩たちを巻き込むと、危ないし」



 和希はうなずき、山を下る方向へと目を向けた。


 が。

 その和希の横をすり抜けて山の上方向へと走る人間が。



「!?」



 ずいぶん走って、距離を作ったところで、IoRi(イオリ)は笑って言った。



「いまなにをやってるか忘れたの!?

 競走だよ、競走!!」


「!?」


「このあと石段だよね。

 そのまま上がれば、私が一等賞。

 賞品は私のもの、ってわけだ!」


「あ!! こら!!」


「三条さん!?」


「ごめん鈴鹿、後続の子たちを頼む!!」



 余力を十二分に残していたかのような走りを見せるIoRi(イオリ)に、ふざけんなこのやろうと胸中で叫びながら、和希はその背中を追いかけた。



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