アイドルの殺傷力偏差値(4)
◇◇◇
「結局、それはなんの暗器だったんですか?」
その夜。上泉邸。大座敷。
慶史に尋ねられた和希は首を横に振る。
「笑ってごまかされた。
感触から言うと、結構、ガチで刺さる系な気がしたけど。
ほら」
和希は自分の服の脇腹を見せた。
ごく小さな穴だが、なにかが刺さったところがはっきりわかる。
脇腹の傷を見せようと、和希は服をめくって見せた。
「…え?…あの?? 和希さん??」
「なに?」
「いや、なんでもないです………よね…。
えっと、しっかり刺さってますね。
タクティカルペンとか、女性の護身用具あたりかなと思ったんですが、もっと殺傷力が高そうな」
和希の脇に残る傷跡から、何故か若干目をそらしながら慶史がいう。
バキバキの女の腹筋(古傷多少あり)がそんなに苦手だったのだろうか。一応次から気をつけよう。
「しかし、仮にも、友達のふりしてくれっていう相手に、随分手荒なことしてくれるよね」
呆れたように笑う和希に、「……でも。なんか和希さん楽しそうですね」と慶史は尋ねる。
「え? どこが?
痛い思いしたし、結局大文字山競走は部長の負傷により延期だし、なにも楽しいことなんかないけど?」
「そうですか? でも…」
慶史が何事か言いかけた、その時。
「お風呂っ、あがったぞーー!」
そう、大声でぱたぱた走ってきたパジャマ姿の知有。
そして、そのあとをすすすっとついてくるのは、なぜか、しれっと家主とともに風呂に入ってきた曲者、IoRi。
こちらは上泉邸で貸し出された浴衣を着ている。
長い髪をくるりと緩く器用にまとめたその姿は、昼間暴挙に出た曲者とわかっていても、清楚かつ色っぽく見える。浴衣恐るべしというか、規格外の美女恐るべしというか。
うん、こっちなら目をそらすのもわかる。和希でさえ若干目のやり場に困る。
「久しぶりに人とお風呂に入った!
今度和希も入ろう?」
「いや、ちょっと、私は、あんまり人と入るのは……」
「じゃあ慶」
「却下します」
「なんで和希が即答!?」
「先輩として後輩がセクハラを受けるのは見過ごせないので」
セクハラと言われて、むー、とむくれる知有。
慶史が笑いながら、和希にドライヤーを差し出すと、和希はコンセントに刺してスタンバイした。
「髪、かわかすからこっち来てください」
言われると、さっさと機嫌を直したか、知有は、とてててっ、と和希のもとにやってくる。
ちょこん、と真ん前に背中を預けて座った知有の髪に、まずタオルをかぶせ、ぽんぽんとタオルで水気をすいとる。
そうして、ドライヤーのスイッチを入れた。
低めの温度に設定した風に、知有の髪が舞い上がる。




