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京都学生格闘譚  作者: 真曽木トウル
第7話 サークラ美少女を護衛せよ
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サークラ美少女を護衛せよ(12)



「…………追ってきてる?」



 紗紅を担いで走りながら、和希は、背中がわを向いている肩の上の紗紅に尋ねた。

 ふわりとしたやわらかいスカートの生地が、和希の頬をくすぐる。布が勢いでめくれあがらないように、彼女の華奢な膝裏ごと裾を手で押さえる。



「……追って、きてます、ね」



 突然のさらわれ体勢でも存外冷静な紗紅の声に、和希は「了解」と返す。


 土曜日なので、大学のなかはひとけが少ない。

 とにかく、ひとめにつくであろう大学の外へ出ることがマスト。和希は走る。


 後ろから、男子の怒号が聞こえた。


 走っておいかけてきているからか、ジリジリ近づいてくる。

 男子に負けない足は持っているとはいえ、紗紅の体重が軽いとはいえ、さすがに人ひとり担いで走るのは、和希が不利だ。



「……ま、ぬ、まぁ!!!」

「待てゴラァ!!!!!」



 背中にぶつかるぐらい追っ手の声が近くなった。

 和希は早めに紗紅を地面に下ろし、その紗紅を背中にかばいながら、追っ手たち側に向き直る。


 なかなかにすごい形相ぎょうそうの男女が、次から次へと追ってくる。合計で、7、8名ほど。

 ……いや、電話しながら走ってくる奴もいる。助けを呼んでいる?ということは、もっと増える可能性があるのか。



「天沼さん、そのクツで悪いけど、大学の外まで走ってくれる?」


「どうするつもりですか?」


「多少怪我はさせるかも知れないけど、とりあえず黙らせる」


「……………………」


「どうした?」



 紗紅の沈黙。さらに、すぐ目と鼻の先まで追っ手が迫ってきているというのに、紗紅が和希の背中すぐ後ろから動く気配がない。

 やはり、ヒールで走って逃げるのは難しかったか?


 追っ手たちが和希たちを囲むように、ジリジリと距離を測っている。臨戦態勢やむなし。和希は構えた。その時。



 ――――――――バッ、と。

 和希の前に男が1人、躍り出た。


 和希がついさっき見たばかりの服装の、和希より少し背の高い後ろ姿。そして、見慣れた後頭部。メガネのつるが見えてる耳。

 追っ手たちに向けて、四尺二寸の、和希があげた木製のじょうを構えていた。



「……慶、史………?」


「探しましたよ、和希さん」



 いやいやいやいや、なんで探してる?

 約束も何もしていないだろうに。

 事情もなにも話していないのに。



「電話に出てから、確実に何かあったって顔をしていたのに、何も教えてくれなかったので。

 俺が勝手に探しました。

 一緒にいるということは、天沼さんの身にも何かあったんですね?」


「…………正解」



 素手の女2人相手には、まだ戦意をたぎらせていた様子の追っ手たちだったが、武器を構えた男が1人入ってきたのには、とたんに及び腰になって、じり、と、うしろにさがりぎみになっている。

 互いに顔を見合わせ、うまくいけば、このまま、引いてくれそうだ。



「…………お、おまえ、この、天沼が何をしたのか、知って……」



 追っ手の男が、がらがら声で、慶史に言葉をぶつけようとする。

 その鼻先へ慶史がじょうを突きつけ、男が「ひぃっ」と情けない声をあげてうしろに下がった。


 それをきっかけに、1人2人と追っ手たちがきびすを返し、去っていった。

 全員が走って逃げていくのを見届けて、ようやく、慶史はじょうを下ろして後ろを向いた。



「―――――天沼さん、荷物はどこに?」



 柔和な顔とやさしい声で、鋭い質問をする。

 めざとく、紗紅が手ぶらなのに気づいていたようだ。



「……文学部の、1階の大教室に」


「わかった。了解。

 ……取り返してくるので、和希さんと天沼さんは、ちょっと待っててください」


「ありがと。カフェテリアで待っとくよ

 あそこなら土曜も人結構いるから。あとそれ預かる」


「ありがとうございます。

 じゃ。また後で」



 慶史は和希にじょうを渡すと、文学部棟めがけて走り出した。入学の頃よりもだいぶ速くなったその背中は、瞬く間に小さくなっていった。



◇◇◇


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