異世界の町
「だめだな。少なくとも俺の世界には
お前がいた世界の情報はないな」
あれから食事が終わりニルのタブレットを使い
できるだけ情報を集めようとしたが
有力なものは得られなかった。
いや一つわかったことがある。
それは俺はかなり遠くにきてしまったということは確実だ。
異世界なのかそれとも違う星にきてしまったのか
定かではないが正直そんなことはどうでもいい
実は夢でしたなんてまさに夢のないことはないだろう
肌で感じたり頭で考えたりできる痛い思いもしている
ここで死んだら間違いなく普通に死ぬだろうな。
そもそも俺はなんでこの世界にきてしまったのか
神社にいってそれからのことがよく思い出せない
もしかしたらその記憶を思い出したら
なぜこの世界にきたのか答えがわかるかもしれない
…さっきから俺仮説ばっかりだ
正直そんなことはどうでもいい
問題はどうやって帰るかだ。
「全くタクは謎が多い奴だな。聞いたことない言葉は話すし
かといってここの世界の言葉を話せるわけでもない
おまけにどこから来たのかわからない」
「ニル」
「でもまっ悪い奴ではないし
なによりおまえ面白いからな気に入ったよ」
ニルは俺がジェスチャーしたときの真似をする
気に入ったのか…
「おまえなにしてんだ」
突然声をかけられた
見てみると気の強そうな顔をした女が立っていた。
身長は俺とニルと同じぐらいだろうか
「よースイン仕事か?」
どうやらニルの知り合いのようだ
「ここの店に食材を納品した帰りだよ」
スインと呼ばれた女は俺とニルのいる席の近くに座った。
「なんだニルここ世界にきてたのか」
「そっ仕事しにな」
「ふーん。わざわざご苦労なこって」
スインは店員がもってきた水をのみ
「ところでそこの異世界人は?」
俺を指さした。
まあこの世界の住民からしたら異世界人か
「あーこいつはタク。今日知り合ったばかりの友達だ
タクこいつは」
「スインだ。ここの住人でマキン外れにあるところで
農家と牧場で働いている。よろしく」
自己紹介してきたので俺もよろしくと返すが
「こいつ何言ってんだ」という感じでスインは困惑した顔をする。
「タクは俺たちの世界と遭遇したことのない異世界の人間だよ。
今は変換ピース使ってるから言葉は理解できるが
しゃべれないんだ」
ニルが説明する。
「ふーんどおりで見たことない容姿だなって感じるわけだ
交流がない異世界に来るなんて肝が据わってるんだな」
褒められたが自分の意志できたわけじゃないんだよな。
「確かに交流のない世界に来るって結構勇気いるよな
俺の生まれ育った世界なんて多くの異世界と交流
が当たり前みたいになってんだけど」
「ゼルジアは今現在は異世界から人材を求めているが
それに反対している住民も多い
歴史をたどれば気持ちはわからなくないが」
「カルヴィアはゼルジアと異世界協定を結んで以降住民同士の交流が多いし
そこに住む人間もいるから対応も普通なんだけどな」
なんか異世界転移も楽じゃないんだな。
「ところでよ。スインこの町の前にある森で
タイガーベアーに遭遇したぞ
情報だと川や海辺でがあるところしかいないって聞いたのによ
どうなってんだ?」
ニルが問い詰めるとスインは何か悲しそうな顔をする
「ああ原因はだいたいわかる。
それは私が口で言わなくても
お前が行く仕事場にいけばわかるさ
さてそろそろ休憩も終わりだ」
そういいスインは立ち上がり
「今日会った新しい異世界人との出会いに免じて
私のおごりだ。タクっていったけ今度うちに遊びにこいよ
うまい飯ぐらいは食わせてやる。それじゃあな」
といい立ち去り俺はその背が見えなくなるまで眺めた。
「おっなんだスインに惚れたかー」
といいニルは俺の首に右肩をまわしてくる。
「く、苦しい」
意思表示のため腕をたたくがきかないようだ。
「くー青春だなー。うらやましいぜ!
俺なんてスクールの同級生に来る告白したんだけど振られちまってよー
泣けるよな!」
とりあえずうんうんとうなずくしかない。
「わかってくれるか!うれしいぞ
よし俺お前を応援してやる!
あいつとは遠い親戚でなある程度のことはわかる」
「勝手に盛り上がってるなそれより早く離せ死ぬ」
俺は再度腕をたたく
「おっと悪いついたかぶっちまった」
やっと首が解放された。
あー苦しかったしかし俺は恋愛してる場合じゃないんだけどな
スインは確かに少し男勝りだけど性格的に合いだから
良い話だが俺は最終的に帰りたいからいつか別れがくるだろうし。
「さて俺たちもそろそろ行こうぜ」
この時間なら夜前には間に合う」
といって立ち上がった。
行くってどこにだ。さっき行ってた仕事って奴か
そういえばニルの仕事聞きそびれてたがなにしにきたんだ。
とつられて立ち上がった時だった。
「大変だー」
と大声が聞こえた。
驚き声の聞こえた方を見ると中年の男が必死な形相で走ってくる。
その後ろから数名後に続くまるで何かに逃げるように
悲鳴が聞こえる
中年は店のまえに止まると自分が走ってきた道を指さし
「猛獣だ!急いで逃げろ!」
と言い残し後から来た人たちと一緒に走っていってしまった。
急いでみて見るとまだ少し距離があるが数匹何か近づいているのが見える。
「なんだよ?猛獣?んなもんすぐ倒してやるよ」
といいニルはバトンを双眼鏡に変え覗く。
そういえばこいつ猫熊のときもそうだったがあまりおろれないな
強いのか
しかしニルは
「おいおい冗談だろ」
双眼鏡を落とし驚いた表情をしていた。
「どうしたんだよ」
俺は双眼鏡を拾い上げ覗いてみると
ニルが驚いた理由がわかった。
迫りくる獣はそれは森で見たのとそれより大きなトラ熊だった。
一週間後で