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71話 信じることは距離を縮める第一歩

「うーん……んぶっ!」

 もともと良くない頭を無理に捻りながら歩いていたせいで、誰かにぶつかってしまった。

 顔を見ようと見上げれば、襟足部分だけ長い赤褐色の髪。

 オラついた態度を醸し出すシルバーアクセが、耳や胸元で輝いている。

「何してんだお前……」


「ゆ、ユイルドさん。こんにちは」

「ボサッと歩いてんじゃねーよ」

 バルレイ将軍の息子は今日も変わらずヤンキーだ。この言い様、まさにチンピラじゃん。

「って、痛い痛い! 縮む!」

 ユイルドさんは高身長に任せて私の頭を真上からぐわしっ! と大きな手で鷲掴むとギリギリと締めてくる。

 なんで!? 心の声が読まれた!?


「ちょ、たんま! ギブ!」

「反省したか」

「心の底からごめんなさい!」

 必死になってアクセだらけの腕をタップすれば、ようやく解放してくれた。

 痛い……。通行人の視線込みで。

「ったく昨日は廊下で寝こけるし、お前は警戒心が足りねぇんだよ」


 なんだ、そういうことか。

 でもこんな注意をしてくれるなんて、ユイルドさんの態度が軟化してきた気がして嬉しい。マゾじゃないよ。

 どうでもいい人には注意とかしないからね。

 少しは仲良くなれたと思っていいのだろうか。


「あれ? ソラは一緒じゃないんですか?」

 訓練が終わるにしては早すぎる時間だ。

 休憩中……だとしたら、さすがに別行動かな。

「……反省してないならもう一回いっとくか?」

「いえ! 今後この様なことがなきよう、身を引き締めて参ります!」

「何だそれは」

 前世で活躍した反省文が咄嗟に口から飛び出しただけだよ。


「処世術の一つ?」

「ガキが何言ってんだ……」

 以前は苦労が多かったもんで。


「まあいい。アイツなら森林エリアを駆け回ってるぞ」

「えっ。じゃあ師匠であるユイルドさんはなぜここに?」

「喉が渇いたから飲み物買いに」

「軽っ! ちゃんと見ててくださいよ! 監督不行届きじゃないですか!」

「狼がずっと走ってんの見てるとか暇だろうが」

「全然暇じゃないよ! むしろガン見だよ!」

「そういやお前はそういうヤツだったわ……」

 変なものでも見るような目を向けてくるユイルドさん。

 兄様といい、なぜ私のモフ愛は理解されないのだろう。


「あー、そうだ。お前、森林エリアには近付くなよ」

「? なぜですか?」

「罠だらけにしてある。鈍くさいお前が行けば死ぬぞ」

 な ん だ っ て ?


「そ、ソラはそんなところでランニングを?」

「ただ走ったって意味ねぇだろうが」

「そうかもしれませんけど……」

 それで昨日は木の枝やら葉っぱが刺さった泥んこ状態で帰ってきたんだ……。


「程々にお願いしますね」

「止めたりしねぇのか」

「ソラが決めたことなので。あとユイルドさんに任せた以上、やり方に口を出す気はありませんし」

「ふーん……」

「でも大怪我だけはやめてください!」

「口出してんじゃねぇか」

 ツッコまれると同時に大きな手で髪をぐしゃぐしゃにされた。

 お返しに今度、襟足を三つ編みにしてやろうと思う。



 結局、その日もソラは真っ黒で帰ってきた。


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