63話 慣れないことをすると眠気が凄まじい
眉をしかめる → 眉をひそめる に直しました。
誤字脱字報告ありがとうございます。
二徹明けくらいしんどい……。
ミスティス先生の授業が終わり、自室のベッドに倒れ込む。
先生は笑顔のスパルタだった。
休憩も水分補給もちゃんとさせてくれるけど、限界ギリギリまで追い込んでくる。
今日は得意の氷属性魔法の強化訓練をしたのだけれど、コントロールを覚える為に氷像を造れと言われた時はどうしようかと思った。
どう考えても初心者に対する要求じゃないよ。難易度設定がおかしい。
いっそ先生を凍らせば早いんじゃないかと悪魔が囁いた。
けど頑張ったよ!
不毛の地にソラのモニュメントが完成した。二メートルくらいの大きさのやつだ。
まだ溶けずに残っている。二、三日はもつらしい。
イメージしやすいのがソラだったんだよね。日頃モフりまくっている成果です。
そのソラはといえば、まだ戻ってこない。
「遅いな……」
もふもふの体毛が恋しい。
早くいつもみたいにぎゅーってして埋もれたい。もう中毒だよ。
枕に顔を埋めてウトウトしていると、部屋の扉がガリガリと音を立てた。
「……ソラ?」
爪で扉を引っかくような音に慌てて駆け寄る。
近くにいても当たらないよう気を付けながら扉を開ければ、そこにいたのは全身真っ黒な狼。
「そ、ソラ……!?」
黒い狼なんてウチにいたっけ? と思うほどの凄まじい汚れっぷりだ。
泥塗れな体毛から、葉っぱや小枝が至る所からこんにちはと顔を出している。
「ガウゥ……」
衝撃のあまり固まる私に、黒いソラはへにょんと耳を垂れさせしょんぼりとしてしまった。
「どっ、どうしたの……いや綺麗にする方が先だよね。ソラ、動かないでね」
習いたての浄化魔法をソラにかける。
便利だからと全属性を試した後、ミスティス先生に教えてもらったのだ。
浄化魔法は水属性。相性は悪くなかったので、すんなり習得できたんだよ。
キラキラと爽やかなミストに包まれたソラは、みるみる綺麗になっていく。
よっし! 成功だ!
数秒していつもの素晴らしいモフモフに戻った。もう汚れは全くない。
「ガウ!」
すごいと言わんばかりに尻尾をブンブンと振るソラ。押し倒す勢いで頬をペロペロ舐めてくるオマケ付きだ。
よっぽど泥まみれが不快だったのだろう。
「ふはっ、くすぐったいよ。一応、シャワーも浴びる?」
「ガウ!」
ソラは元気よく吠えると洗面室へと走って行く。
洗面台だけじゃなくてバスタブとシャワーもあるんだよね、この部屋。
「……部屋の外で待とうか」
中が見えないよう扉があるとはいえ、なんとなく部屋で待つのは妙な気がして自室を出る。
ソラは出会った時から私に身体を洗わせてくれない。
メイドさんにも断固拒否で、自分で洗っているのだ。
人型になれるから羞恥心があるのではと推測している。ちょっと残念。
ウロウロする元気もないし、どこにも行かず直ぐ外で待つことにした。
扉横の壁に凭れるようにストンと座る。
体育座りでジッとしているとすぐに眠気が襲ってきて、頭が膝に吸い寄せられるように沈む。
一日魔法を使い続けたせいか、ひどく眠い……。
「――い」
…………ん。誰か何か言った……?
自然と遠のく意識に抗えず半ば寝ていると、誰かに呼び掛けられた気がした。
……ちょっと眠いんで気のせいってことにさせてください……。
「おい!」
「うおぅ!!」
突然、肩を揺さぶられてビクッとなり目を開ける。だ、誰!?
「何でそんなとこで寝てんだお前」
見上げれば巨人の様に見下ろしてくる一人の人物。
なぜか赤褐色頭のヤンキーことユイルドさんが、思いっ切り眉をひそめていた。




