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50話 家族に隠し事は難しい

 翌日の私は朝からやる気に満ちていた。


 アドレナリン大放出なせいかいつもより早く起き、家族で食卓を囲んでいるテーブルで父様たちを待っている。

 まだかまだかとソワソワしていると、朝食を準備しているメルローとメイドさんたちに微笑ましい顔をされてしまった。

 ご、ご飯が楽しみで待ち切れないわけじゃないよ……?


 ソラを撫でながら待つこと半刻。

 時計の鐘が光の七刻を告げた頃、父様と母様が揃って姿を現した。

 二人とも相変わらず朝から目に毒なくらいの美形だ。五年経っても見た目が全然変わらない。

 兄様やメルロー、城勤めの人たちも含め、一定以上成長した魔族にとって五年程度では外見的変化をもたらさないようで、歳を重ねた感じがまるでない。


「おはようございます。父様、母様」

「おはよう。今日は随分と早起きだな、リリ」

「おはよう。眠れなかったの?」

「はい、あまり眠れませんでした」

 朝が来るのが待ち切れなさ過ぎて。


「それはいけない。父様に顔を見せてごらん」

 手招きされて近付けば、すかさず逞しい腕に抱き上げられ御尊顔が迫ってくる。

「少し目が充血気味か?」

 興奮し過ぎで血走ってるんだとしたら、ヤバい奴じゃん私……。

「へ、平気です! それよりも父様にお願いが」

「ほう。珍しいな。何だ?」

「今日から魔法の練習をさせてください」


 昨日の一件が火を点けてくれたせいで、早く魔法を使いたくて堪らないのだ。

 もうちょっとだけ先の予定だったかもしれないが、早めて欲しい。


「あらあら。急にどうしたの?」

「ぅえ!? えーっと、そう! 無性に魔法が使いたいのです!」

 事の顛末を話すべきか考えていなかったので、咄嗟に出た言い訳がこれ。

 バトルジャンキーか。

 嘘ではないのが複雑である。


「リリ、何か隠していないか?」

 ズバーンと名探偵のような推理と共に扉から登場したのは兄様だ。

 ど、どこから聞いていたのですか!


「何も隠していませんよ?」

「兄様の目を見て言ってみろ」

「……な、何も隠してません」

 だからそんな凛々しい顔で見ないで欲しい。居たたまれぬ。


「嘘だ。一瞬目がコイツを見た」

 私の傍でおすわりしていたソラを眼で指す兄様。

 す、鋭すぎるよ! メンタリストなの!?

 父様の視線も同じく鋭くなる。

「詳しく聞こうではないか。リリ?」

「……はい」

 朝食を食べながら全部白状した。



「なるほど。事情は分かった」

「だからお願いします。一刻も早く魔法が使えるようになりたいんです」

「それでリリは天狼を救おうと言うの?」

 母様の鋭い質問が飛んでくる。

 別に怒っているわけじゃない。純粋に疑問、という感じだ。


「……いえ、そんな大それたことが出来るとは思っていません。悔しいですが。きっと誰かに助けを借りると思います。でもそれは、私が自分で出来る努力をしてこそお願いできるものです」


 セレディさんには宣戦布告のようなことを言ったけど、自分一人で解決出来るとは思っていない。

 でもだからと言って、何もしないわけにはいかない。見過ごせない。

 弱いが故のジレンマ。

 ならば力をつけるしかないのだ。

 守りたいものを守る為に。


「……どうだ? ティエル」

「そうねぇ。もういい頃だとは思っていたから、少しくらい早まってもいいんじゃないかしら」

「本当ですか!?」

「その代わり無茶はしないこと。約束できる?」

「はい! 母様大好き!」

 本日もナイスバディな母様に抱きつく。とても同じものを食べているとは思えないくびれだ。ズルい。


「うふふ。私も大好きよ?」

「なら相思相愛ですね!」


 わがままボディーに埋もれていた私は知らない。

 母様が一人勝ち誇った顔をしていたのを。

 そしてそれを悔しげに見ていた二人と一頭がいたことを。


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