46話 貸しは高くつくのが世の常
「ソラ、明日からも人になる練習する?」
「ガウ!」
「そっか。じゃあ必要だよね」
「ガウ?」
「ソラの服」
訓練を続ける兄様と別れ部屋に戻る途中、肝心なことを思い出した。
なんだか未だに信じられなくて忘却の彼方に追いやっていたけど、これからもするなら必要なものだ。
毎回全裸だと困る。例えまだ子どもだとしても困る。
人型になると同時に着られる魔法とかないだろうか。
ピンポイントすぎてさすがに無理かな。
うーん。まあそれは追々誰かに訊くとして、まず物がなければ話にならない。
ってことで早速調達だ!
「キリノムくん。ちょっと質問があるんだけど」
「はい、なんでしょう? 僕のリリシア様への愛の深さですか?」
「行商のおねえさんって子供服も売ってるよね?」
「売ってますが、僕の告白はどうしていつも無視するのでしょうか……」
聞いても反応に困るからだよ!
冗談なのか本気なのか分からない初心者なので勘弁してください。
買い物=キリノムくんというイメージが浮かんだ私は、調理場へとやって来た。
冒頭の質問をする為である。
ソラは衛生上の理由で一応、調理場の外で待機してもらっている。
おすわりして、めちゃくちゃこっちを見ている。可愛い。
「男の子の服って格好良いのあるかな?」
「どうでしょう。品揃えは悪くないとは思いますが、好みの問題もありますし。買わなくても一度呼んで見せてもらってはどうですか?」
「そういうのアリ?」
「はい。問題ないと思いますよ」
なら呼ばない手はない。
「キリノムくん。お願いがあります」
「さすがに子供服は入らないと思いますが頑張ります!」
「違うよ!? 行商のおねえさんを呼んで欲しいだけだよ!?」
「なんだそっちですか」
「そんな趣味はないです。私そんな危ない人に見えてるの……?」
心外だ。ただのモフリストだよ。モフモフにしか欲望がフルスロットルしないよ!
「リリシア様は唯一、僕を惑わす危険な人です」
うん、キリノムくんの方が危ない。本気だとしたら私以上に趣味嗜好が重症だ。
ついでにずっと大人しくしていたソラの機嫌も危ない。
こっちに向かって……というか、キリノムくんに対してめっちゃ呻ってる。
キリノムくんが手を握ってきたから怒ってるんだと思う。
ソラは母様の思惑通り私のボディーガードをしてくれているらしく、接触して来る人には敵意剥き出しになるのだ。
キリノムくんに限らず、お城の人、果ては兄様まで漏れなく……。
「というわけで呼んでください。お願いします!」
「それは構いませんが、なんでそんなものが要るんですか?」
「……な、内緒」
人型をとれるようになったことを誰かに言ってもいいものか、ソラに確認を取るのを忘れていた。
私としては自慢して歩きたいところだけれど、勝手に触れ回るのはダメだろう。
「へぇ……内緒ですか」
チラリとソラを睥睨するキリノムくん。
やばい。勘付かれたかも。
「お、お礼は何でもします!」
「リリシア様。迂闊にそういうことを言っちゃ駄目だって、前にも言いましたよね……」
「ですね。いや、申し訳ない……」
見知った相手にしか言わないよ。でも今みたいに必死になったら自信なはい。
「気を付けてくださいよ……? とりあえず事情は深く訊かないでおきます。では呼びますね」
「ありがとう、キリノムくん!」
「貸し二つということで」
あれ、普通そこは一つじゃないの?




