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36話 兄さまの帰還

「ソラただいま!」

「ガウッ!」


 部屋に戻り一目散にソラに抱きつく。このモフモフ加減、癒される……!

「ごめんね。退屈だった?」

「ガウ……」

 へにょんと耳を垂れさせるソラ。

 そろそろ私は萌え殺されるかもしれない。

 美人は三日で飽きるとか言うけど、全然飽きないどころかむしろ好きになる一方だよ。

 一心不乱にモフりまくっていたら、ドンッという衝撃音が突然響いた。


「なっ、何ごと!?」

「グルルルルル……!」

 ソラが私を庇うようにして立つと、庭に向かって唸りだす。

「ソラ? 庭がどうかしたの?」

「ガウ!」

 自信満々に吠えるソラ。一体、何があると言うのだろう。


 不思議に思い窓から外を覗く。

 うーん、いつ見ても広すぎる庭。別段変わった様子は……あった。


「なぜドラゴン!?」

 ソラのお気に入りスポット、ドッグランもどきに真紅の竜が鎮座している。

 敵襲!?

 いやでも結界があるからそう簡単に入れないはず……。

 空を見上げれば半透明な膜は綺麗な円を描いている。綻びもない。

 ということは、誰かが許可して招き入れたということだ。

 き、気になる……。

 なにせ実物のドラゴンを見るのは初めて。興奮するなという方が無理だ。

 モフモフではないけどファンタジーのド定番。

 間近で見たい!


「ソラ、ちょっと見に行かない?」

「ガウガウ」

「ダメなの?」

「ガウ」

「おぅ……」

 ソラには今日、散々お願いを聞いてもらっている。ここは譲歩したいのだが、好奇心にも勝てない!

 どうやって説得しようか考えていると、部屋の扉がノックされた。


「リリ、入ってもいいか?」


 兄さまの声だ。

 あれ? もう任務から戻ってきたのだろうか。早すぎない?

「お帰りなさい兄さま」

 ガチャッと扉を開ければ、朝と何ら変わりない軍服姿の兄さま。

 やっぱり忘れ物でも取りに来たんだろうか。でもなぜ私の部屋に?


「ただいま。良い子にしてたか?」

「はい、多分」

「ふっ。多分てなんだ」

 私を抱き上げて微笑む兄さまは極上のイケメンだ。もうブラコン一直線だ!

「随分早くないですか? 忘れ物?」

「いや。もう解決した」

 解決とな?

 討伐した、じゃなくて。


「……もしかして外にいるドラゴン」

「気付いたのか。殺されるくらいなら俺に従うと言うので、連れ帰ったのだ」

 やっぱりーー!!

「近くで見たいです!」

「リリならそう言うと思って呼びに来た」

「兄さま大好き! 愛してる!」

 よく分かっていらっしゃる。さすが兄さま。殺さないでくれてありがとう!


「……ガウゥゥ!」

 ギュウギュウ抱きついていると不満そうにソラが唸る。

 見に行くの反対してたもんね。

「兄さま。ちょっと降ろしてください」

「嫌だ」

「そ、即答……。お願いします、兄さま」

「ではこの後はずっと兄様と一緒にいるか?」

 なんですかそのラッキーでしかない交換条件。頷く以外に選択肢ないよ。

「もちろんです」

「約束だぞ」

 優しく床に降ろされ、ソラと向き合う。


「ごめんね、ソラ。どうしても見に行きたいんだ」

「ガウ……」

「いっぱいワガママも聞いてもらってごめん」

 なんだか振り回してばっかりだな私。

「……私といるの嫌になった?」

「ガウガウ!!」

 即座に否定してくれるソラがどうしようもなく愛おしくなって、首元に抱きつく。

「ありがとう。ソラ大好き」

 ぎゅっと力を込めるとお返しとばかりに頭を摺り寄せてきた。可愛すぎる!


「はい。そこまで」

「うわぉっ!?」

 急に訪れた浮遊感に間抜けな声を上げてしまう。

 犯人である兄さまを見れば、間近にある綺麗な顔は不機嫌そうだった。

「リリの浮気者」


 否定はしません。


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