表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/174

29話 余波

「完全復活!」


 え? ひっぱらないよ?

 だって床に伏せてるだけの話なんて暗いだけだし!

 要約すると、あの後こんな感じだった。


 バルレイ将軍により母さまの元に担ぎ込まれた私。

 魔力操作で体内の流れを整えてもらうも、五日間、高熱でうなされ続けた。

 ああなったのは魔力の暴走だそうだ。

 身体の中で制御しきれず、無理矢理外に出ようと魔力が暴れ回っていた状態。

 放っておくと風船が破裂するみたいな感じに死亡するらしい。怖すぎだよ!


 ベッドの中で朦朧としている私の元には、代わる代わる面識のあるみんながお見舞いに来てくれたと聞いた。

 目が覚めたら全員集合してビックリした。

 そしてそれ以上に驚いたこと。


 バルレイ将軍の首が飛んだ。物理的に。


 でも死んでないよ!

 父さまがフッ飛ばしたすぐ後に、母さまが古代魔法【蘇生】で生き返らせたらしいからね!

 でもまた兄さまに消し飛ばされて、合計二度死んで生き返ったよ!

 いやもうコメントに困るどころじゃない。

 とりあえず将軍に会って謝ろうと思う。

 謝って許されるレベルを銀河の果てまで超えているけども。


「会ってくれるかな……」

「ガウ」

 ストンとソファーに座り直した私にソラがすり寄ってくる。


 ソラも元気になった。

 私の魔法で傷の程度が軽くなり、掛けた本人が寝込んでいる間に完治したそうだ。

 なんと紙でうっかり切ったぐらいになってたらしい。マジか。

 私の目が覚めてからというもの、以前にも増して傍から離れようとしない。

 どんなにモフってもされるがままだ。可愛すぎる。


「よっし! ここで落ち込んでてもしょうがない。とりあえず外出許可を貰いに行こう」

 バルレイ将軍は現在自宅謹慎中。

 城の外に居を構えているので、会うなら父さまか母さまに外出の許可がいる。

 心配をかけたばかりだから勝手に出掛けることは、さすがにできない。


「やるわけないだろ」


「ッ!? 兄さま!?」

 部屋の扉に腕を組んで凭れかかり、厳しい表情を向けてくる兄さまがいた。

 い、いつの間に。そして華麗に不機嫌……。

「どこに行く気だ」

「えっと、バルレイ将軍のお家に」

「何しに」

「多大な迷惑を掛けた謝罪をしたくて」

「必要ない」

 食い気味に兄さまはバッサリと切り捨てる。


「兄さま……」

「……そんな顔したって外に出さない」

「お願いします。ちゃんと顔を見て謝りたいんです」

 兄さまの元に走って行き、目を見て頼む。

 別に遊びに行くわけじゃない。

 ただその場にいただけで責任を取らされ、二度も殺されて蘇生された人に何もしないなんて道理が通らない。だから謝りたいのだ。

 例え許されなくても。


「あれは適切な処分だ。リリが気に病むことはない」

「どこが適切なんですか! 人の命を弄ぶような行為じゃないですか……!」

 母さまの異常な魔法スキルのおかげで何事もなく治まっているけど、本来なら生殺与奪は簡単に行っていいものじゃない。

 人の命ってそんなに軽くないよ……!


「将軍はもっと厳罰を望んでいたぞ」

「え……?」

「きっかけを作ったのも止められなかったのも自分の責任。リリシアに殺されたら生き返らせてくれるな、と母上に頼んでもいた」

 ……はい?

「いやむしろどうやって殺されようかと悩んでいた」


 将軍――――ッ!?

 ちょ、頭イカレちゃったんですか!? 人生の作戦が間違ってるよ! ガンガン行きすぎ! 命を大事に変更して!

「だからリリが行く必要はない」

 あまりのことにヘタリと座り込む。

 マジなの? それが魔族の常識なの? 全く理解が追い付かないよ!


「ようやく元気になったばかりなんだ。リリは大人しくしていろ」

 ふわりと抱き上げられ、そのまま優しくベッドに戻される。

 夜の一人寝は許されないけど、お昼寝は自室でしているのでベッドはあるのだ。

「……寝てるほど病人じゃありません」

「口ごたえ禁止」

 唇にむにっと長く綺麗な人差し指を押し当ててくる兄さま。

「ほら、横になるんだ」

 半ば強制的に寝かしつけられる。

 兄さまとは反対側の枕元にソラがやってくると、丸くなって伏せた。


「お前は降りろ」

「ガウガウ」

「毛皮にされたいのか」

「ガルルルルルル!」

「ストップ! 枕元でケンカしないで!」

 兄さまとソラは変わらず仲が悪い。なんでだ。仲良くしようよ。


「兄さま。ソラと一緒じゃなきゃ寝ません」

「ガウ!」

 ごめんよ兄さま。私はソラに味方すると決めているのだ。

 だからそんな悲しい顔しないで。

 そんな『きゅーん』という効果音が聞こえそうな、罪悪感えぐりまくりの顔をやめて……。


「…………兄さまは私が寝るまで手を繋いでください」

 ダメだ。兄さまの悲しい顔に私は弱い。浮気者でごめんよソラ……!


 そろっと布団から手を差し出せば、ぎゅっと両手で握りしめられた。

 見た人全てが落ちるような、美しく魅力的な笑顔とともに。

「死んでも離さない」


 ……とりあえず寝たら解放してください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ