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24話 自分の非力さを痛感する

「……もう大丈夫だよ~」

 セリちゃんの言葉と図書館の外まで来たことに、ホッと胸を撫で下ろす。


 こんなに怖い図書館は初めてだ。

 みんなが普段、魔物を見る目ってこんな感じなのか。

 私に対していつもいかに友好的に接してくれているのかがよく分かる。

 今までが安全すぎて気付かなかった。


「二人ともごめんね」

 これでは何しに来たのか分からない。

「……仕方ないよ~。性質が悪いのもいたから~」

「……役得」


 二人は優しいからそう言ってくれるけど、自分の弱さを痛感した。

 いや、自覚していた以上のチキンっぷりだった。

 あんな視線だけで負けているようじゃ、この先ソラだって守れない。


 私も強くならなきゃ駄目だ。


 魔法はまだ使えないとしても、走り込みとかしてせめて精神と肉体を鍛えよう。

 ……なんか、三歳児が掲げる目標にしてはハードな気もするけど。

 いや気にしたら負けだ! 私は魔族! 普通じゃない!


「セリちゃん、リドくん。ありがとう。帰るね」

「……部屋まで送る」

「えっ、いいよ! さすがにそこまでお願いできないし、転移魔法陣で帰るから」

「……ダメ~。このまま一人で帰しちゃったら、心配でお仕事どころじゃないもん~」

 め、面目次第もございません。

「……そういうこと。セリ」

「……は~い」

「「……【複製】」」

 前回見たのと同じ魔法陣と光に包まれ、リドくんたちが四人になる。

 ここを空けるわけにはいかないから、また分身体にお任せするのだろう。


「……ここを頼む」

『……仕方ない』

『……分かった~』

 また揉めるのかと思いきや、チラッと私を見た分身体たちはアッサリ頷く。

 そんなにゲッソリした顔してますか。

「すみませんがお願いします」

 今回もお願いすると分身体の二人は私の頭を優しく撫で、図書館に入って行った。


「……俺たちも行こうか」

「はい。お願いします」

 本体の二人にも頭を下げる。お手数をお掛けします。


 てっきり降ろしてくれるのかと思いきや、抱っこしたまま歩き出すリドくん。

 こ、このままですか……?

「リドくん、私自分で歩けるよ」

「……俺がこうしたい。駄目?」

「滅相もない!」

「……リドずるい~。ソラも可愛いけど、セリだってリリシア様抱っこしたい~」

「……ソラは俺に触られるのを拒否した。だから交代はしない」

「……ず~る~い~!」

 セリちゃんが可愛すぎてこんな時なのに顔がニヤけそうだ。


「あれ? そういえば転移魔法使わないの?」

 あまりに普通に歩くから気付くのが遅れた!

 転移魔法は発動者に触れていれば、複数人の転移も可能だ。その方が断然早いのに。

「……それだと一瞬すぎるから」

「……リリシア様が落ち着くまで一緒にいられないよ~」

 なんてこった。そこまでしてくれているなんて……。

「ありがとう。リドくん、セリちゃん」

 人目に付かないようお城の裏側を通って居住塔に向かってくれる二人に、心の底から感謝した。



「……【複製】」

 私の部屋の前に着くなり魔法を発動させるリドくん。

 何かと思えば一冊の本が手に納まっている。

「……多分これが一番天狼について詳しく載ってる」

「え、持ってていいの?」

 本は複製してくれないって言ってたのに。


「……うん。ソラがいるから必要でしょ? でも天狼は基本的に人に寄りつかないから、謎が多い。あまり期待しないで」

「ありがとう、リドくん!」

 感激のあまり思わずハグしまくる。兄さまのスキンシップ過多がうつってきたかもしれない。ファンの皆様ごめんよ!


「……リドのカッコつけ~」

「……うるさい」

「……いいもん、ディートハルト様に報告しちゃうも~ん」

「……俺を殺す気?」

「……嫌なら今度リリシア様のお世話はセリに譲ること~。あとケーキ奢ってくれたら内緒にする~」

「……分かった」

 闇取引するほど恐れられてますよ兄さま……。


「……じゃあ俺たちはこの辺で」

 私をそっと床に降ろし、優しく頭を撫でてくれるリドくん。

 リドくんの腕も安定感抜群だった。細く見えても意外とガッシリしてるとか、理想的すぎる。このナデナデ加減もたまらない。

 ソラもセリちゃんから降ろしてもらうと、私のところにやって来ておすわりした。


「お二人ともありがとうございました」

「……気にしないで」

「……い~よ~。ちょっと元気になったみたいでよかった~」

「うん。リドくんとセリちゃんといると、すごくホッとするからね」

「……そんなこと言われると戻りたくなくなっちゃうよ~」

 ぎゅうぎゅうとハグしてくるセリちゃん。こ、こんな感じだったのかソラ。

 リドくんとは別の安定感がありそうだよ。


「……セリ。気持ちは分かるけど、リリシア様が休めないだろ」

「……うぅ~。分かった~」

 しぶしぶ離れるセリちゃんとリドくんを、ソラと一緒に見送る。

「……じゃあまた」

「……またね~」

 すぐにフッと消える二人の姿。

 転移魔法で帰ったようだ。


 そういえば本当はそんな簡単な魔法じゃないんだっけ。みんなホイホイ使うから忘れがちだけど。


 ……私も頑張ろう!


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