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19話 目覚め

「んん……」

 あれ、寝ちゃってたのか私……。いや気絶したんだっけ?


「リリ!!」


「え? 兄さま?」

 なぜここに? ここは父さまたちの寝室では?

 こんなバカでかいベッドがあるのはさすがにこの部屋だけだ。

 なんで兄さまが隣にいるの?


「あまり兄様を心配させないでくれ……」

「……もしかして、ずっと傍にいてくれたのですか?」

「ああ。父上たちは泣く泣く執務中だ。とても心配していたぞ」

「も、申し訳ない……」

 そりゃいきなり気絶されたらビックリするよね。


「はっ! 子天狼は!?」

「……やつならそこだ」


 兄さまが目線で指したのはベットの足元。

 目が合えば子天狼はゆっくりと近付いて来る。

 そのまま傍まで来ると、私に頭をすり寄せてきた。き、キュン死にする……!!

「そいつ、リリから離れようとしなかったのだ。メイドが部屋に入ってくる度に威嚇していたぞ」


 この子は私を萌え殺す気でしょうか。


「そうなんだ。ありがとう」

 子天狼を抱きしめて思う存分モフる。なんなら匂いも嗅ぐ!

 ちょっと嫌がってる気もしないではないが止めないぞ!

「……兄様には無しか?」

「ごめんなさい、兄さま。ありがとうございます。ずっと傍にいてくれて」

「そうじゃない。……ん」

 両手を広げてくる兄さま。

 ここにも私を萌え殺す気のお人が!


 子天狼をそっと放し、思いっ切り抱きつく。

 華奢に見えるけど男らしい胸板が受け止めてくれて、ビクともしない。細マッチョだ。それにいつも良い匂いがする。

 こんなこと出来るのも私が子どもの内だろうなぁ……。

 そういえば兄さまに恋人はいないのだろうか。


「ガウガウ」

 兄妹仲良くハグしていたら、子天狼がドレスの袖を引っ張ってくる。甘噛みでグイグイと自分に引き寄せるように。ん? 遊び道具の要求?


「なんだ一人前に嫉妬か。人型になってから出直せ」

「いやいや、さすがに嫉妬はないですよ兄さま」

「オスだぞ。そいつ」

「なるほど男の子――って、人型! なれるんだった! それっていつですか?」

「さあ、いつだったかな」

 私の髪を手で梳きながら微笑む兄さま。お、教えない気だ!

 ベッドに出てからの目的地が図書館に決まった。


「そんなことより何か腹に入れた方がいい。キリノムに用意させる」

 確かに喉も乾いたな。どれくらい気絶してたんだろう。

「兄さま。今何時ですか?」

「闇の五刻だ」

 夕方五時とな。めっちゃ寝てる。四、五時間は経ってる。


「では行ってくる。ここで大人しくしているのだぞ」

 兄さまは私の額にキスを一つ落とすと目の前から姿を消した。

 転移魔法で移動したらしい。私も使いたい。瞬間移動とか人類の夢だよね。


 すぐに動く気分にはなれないので、ふかふかベッドにボフンと倒れて待つことにする。

 すると子天狼が頭の近くで伏せ、ペロペロと頬を舐めてきた。

「ふはっ、くすぐったいよ」

 人には懐かないって聞いたけど、さっきから随分デレ屋さんじゃないか?

 噛みつかれたのが嘘みたいだ。


 そんなことされたら調子に乗って触りまくるぞ!

 お返しとかばりに子天狼の背中を撫でていると部屋の扉がノックされた。

「はい。誰ですか?」

「メルローにございます。入ってもよろしいでしょうか」

「うん、どうぞ」

「失礼致します」


 左手に水差しとコップを載せた銀のトレーを持ったメルローが、お辞儀をして部屋に入ってくる。

 あれ? なんかちょっと雰囲気が……。


 ピンと伸びた姿勢はいつも通りだけど、なんだか元気がないように感じた。


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