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アッサリ終わる私の人生

「マジでないわぁ……」


 転職して早二ヶ月。

 募集要項の提示条件はどこへやら。

 せっかく最初に就職したブラック企業から抜け出すことに成功したというのに、気付けばまた同じ道を辿っている。


 どこが『多少の残業あり』なのか。


 日本語を学び直せと叫びたくなるほどの残業三昧が現実だ。

 終電で帰るのは当たり前。昼休憩だってまともに取れることは、ほぼない。良くて仕事をしながら何か片手間につまめる程度だ。


 中小企業だから一人で何役もこなさなくてはいけないのは分かる。

 分かるけど限度がある!


 なにも私の仕事が特別遅いわけじゃない。

 社員みんなが同じような状況なのだ。いやむしろ先輩の方が私より酷いと思う。


「転職したい……」


 睡眠不足と過労でふらつきながら、ヨロヨロと暗い家路を歩く。

 向かっているのは家賃七万円のワンルームマンション。

 実家はない。


 早くに両親を亡くし親戚中をたらい回しにされてきたので、生家はとっくの昔に駐車場になっている。

 今私が住んでいるマンションも父方の親戚が建てたもの。父の家系は揃って不動産業を営んでいるのだ。土地も結構持っているようだし、割と裕福な方だと思う。


 え? 家賃?

 キッチリ払ってますよ!

 滞納したら本気で追い出しに掛かるような連中だからね!


 あ、いや、一応お世話になっているからその言い草もどうかと思うけど。


 ともかくそんなわけで、仕事を簡単に辞めることができない状況なのに、なぜか私は意図せずブラック企業へと突入してしまう。解せぬ。

 二度あることは三度あるとか言うし、次にいいところが見つかっても気を付けよう。二十代の内に見つかるといいな……。


 ご老人にも負ける速度の足取りで歩いていると、もはや緊急用に持っているにすぎない携帯電話が存在を主張する。


 何だろう、携帯の請求金額確定のお知らせか?


 ここで友人からのお誘いとは思えない私の交友関係が末期。

 数人ぐらいは友人と呼べる存在もいたけれど、仕事で断り続けていたらその内に誘いも来なくなった。

 そりゃそうだと諦めの境地に達しているから別にいい。

 悲しいという気持ちはもう通りすぎたんだよ……っ!


 一応確認の為に鞄から取り出してみれば、案の定なお知らせ。

 やっぱりかと思って画面を見つめる。


 なんだかなぁ……。

 こんな時、せめて兄妹とかいたらなーと思ってしまう。

 交友関係を諦めたと言っても、寂しいと感じる時はどうしてもあるのだ。


 頼れるお兄ちゃんとか欲しかった。

 優しくてデロデロに甘やかしてくれるような超イケメンの兄が……! って、まあそんなの二次元にしかいないよね。世知辛い。

 でもどうせ夢見るならハイスペックな方がいいじゃないか!


 そんな現実逃避をしている私は気が付かなかった。

 すぐ後ろまで猛スピードで乗用車が迫っていることを――。



 ……享年二十三歳とか早すぎない?


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