14話 寝起きドッキリでも別のドッキリだよ
「獣人がいるじゃないか!」
ベッドに入り寝る準備万端になった時、唐突に閃いた。
なんで忘れていたんだ私! もう脳トレを始めるべきかもしれない。
獣人は人に獣の耳や尻尾を生やしただけのパターンと、無理矢理人型にしました! みたいな二足歩行の獣パターンがあるのだけれど、どちらも完全な獣の状態になれると本で読んだことがある。
モフらせてくれないかな?
「あらあら。いきなりどうしたの?」
ネグリジェ姿の母さまが天蓋の布を捲り隣にやって来る。
ここは父さまと母さまの寝室だ。
キングサイズ四倍くらいの巨大ふかふかベッドで、毎晩川の字で寝ているのだ。
お邪魔じゃないかと思うのに、一人寝が許されない……。
「母さま、獣人の方は獣の状態に戻れますよね? 触らせてもらえたりしないでしょうか?」
「そうねぇ。無理じゃないかしら。有事以外だと、愛する者にしかその姿を見せないって言うし」
なにその一途さ。萌える。
というか、そこまでちゃんと本に書いといて欲しい。ぬか喜びさせないで……!
「そうなのですか」
「そもそも他種族とあまり交流を持たないから、このお城で働く人の中にもいないわよ?」
なんですと!?
それは聞き捨てならない。ほとんど居住エリアにいるから見かけないもんだとばっかり思っていた。
「では会えないのですか?」
「種によると思うわ。竜人はまず面会謝絶ね。他種族を見下しているもの。一番可能性があるのは兎人じゃないかしら?」
寂しいと死ぬからですか? なんてことは訊くまい。
「住んでいるところはこのお城から遠いですか?」
「遠いわねぇ。この大陸とは繋がっていない僻地に住んでいるもの」
まさかの離島……。
魔法が使えない私じゃ全然気軽に行ける感じじゃないな。
「そうですか……」
「興味があるの?」
「いえ、一番興味があるのはモフ……ふさふさした毛で覆われた魔物です」
「そのようなものどうするのだ」
夜着に身を包んだ父さまが、母さまとは反対側から入って来る。
なんだこの色っぽい夫婦は。間に挟まれる身にもなってくれ。
「友達になりたいのです」
「友達? リリは変わっているな」
「まわりに小さい子がいないからかしら?」
このお城には私以外に子どもがいない。
魔族は滅多に繁殖をしないのだ。
寿命があまりに長いので、子孫を残そうという意識が低いんだそう。
ただし恋愛は別。
娯楽の一環みたいな感覚で楽しむんだとか。ちょっと意味が分からない。
とりあえず爆発すればいいと思う。
「いえ、単に動物というか魔物が好きなだけです」
「ほう」
「そうなのねぇ。あらあら、もうこんな時間。もっとお話したいところだけれど、このくらいにして寝ましょう? しっかり寝ないと大きくなれないわよ~?」
「寝ます! おやすみなさい!」
魔族も睡眠をとる。
しかも親子で仲良く寝るとか夢の様じゃないか。
弱肉強食の世界ではあるけど、獅子のように崖から突き落とすようなスパルタ教育でもない。
意外と人間ぽいどころか、むしろ前世の私の親戚よりも余程愛情深い。
転生できたことに感謝しながら眠りについた。
――と思ったら翌日に非人道的なことが起こった。
朝起きたら枕元になぜか魔物図鑑で見たばかりの天狼の子どもが。
豆柴くらいの大きさだ。
サンタさんは異世界デリバリーも始めたのか。
……いやいや、ちょっと落ち着こう。
悲しいかなサンタさん=両親だ。小学生の時に知らされる衝撃の事実である。
そして魔物のペットショップは存在しない。
ってことはだよ。
両親のどちらかが誘拐してきたっぽい……!
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