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142話 縁とは不思議なもの

「ホムラくんに訊きたいことがあって呼んだんだった。えっと、早速いいかな?」

 気を取り直して本題に軌道修正する。

 ナチュラルにセクハラしてる場合じゃなかったよ。ごめん。


『何すか? 何でも答えちゃうよ!』

「白竜って見たことある?」

 本にも紹介されているアイテム名である白竜は、竜種の中でもレア中のレアと言われている。

 見れば幸運が訪れる、とされているくらいに。

 というのも、ちょっとした理由があるのだ。


『あるよ?』

「本当!? どこで!?」

『実家の近くに普通にいたよ? 家族ぐるみで付き合ってたっす。年の近い幼なじみもいたりして』

 兄様。どれだけ貴重な地を壊したのですか。

 そしてホムラくんの希少性はどこまで上がるの。

「そ、その白竜一家はご無事だった?」

『うん。そっちに被害はなかったから大丈夫っす。みんな元気かなー』

 よかった……! いやホムラくん家が壊れてるから全くよくはないけど。


「ん? ホムラくん、誰にも挨拶しないままずっとここにいる……よね?」

 家の材料を探しにツバク共和国にいたところへ兄様が討伐依頼任務で赴き、命の代わりに従属することを選んだって聞いている。

 確かそのままうちへ連れて来られたはず。

 実家に帰った話は聞いたことがないから、何十年と会っていないことになるんじゃないだろうか。

 あれ、マズくない?


『でも心配はしてないと思うっすよ。結構、家から自由に飛び出してたし』

「そうなの?」

『だってオヤジがうるさいんすもん。次の竜王はお前だ! とか言われても、オレ興味ないし』

 ……待って。気になるワードしかない。

 ナギサくんだけじゃなく私まで絶句しそうだ。

 魔物の種ごとに王がいることは良く知っている。

 だけど竜種と言えば魔物の最上位。つまり竜王ともなれば、全魔物の頂点と言ってもいい。

 その候補が私の膝の上、だと……?


「あの、ホムラくん。もしかしてホムラくんのお父さんて――」

『竜王っす』

 兄様。貴方が普段ぞんざいに扱っているホムラくん、もう天然記念物なみの希少価値まで来てますよ。知ってました!?

「……そういえば、よく報復に来ないね」

『まあ誰も死んでないし、オレん家が壊れただけっすから』

「大らかすぎない!?」

 ホムラくんの家族が俄然気になる。

 今更すぎるが詳しく聞いたことがなかった。


『リリちゃん、なんでそんな複雑そうな顔してるんすか? ま、まさか竜王に興味が!?』

「あるけど今はとりあえず白竜の方が知りたいかな……」

『より上を狙ってた!?』

 ズギャーンとショックを受けるホムラくん。

 SDキャラみたいでこんな可愛い見た目なのに、竜王候補……。

「竜王より上の存在って何ですか?」

 ずっと黙って話を聞いていたナギサくんが、若干冷めた目でホムラくんを見ながら質問してくる。

 最初の警戒心はどこへ行ったの? いや、この異常なフレンドリーさを目の当りにしたら分からなくもないけども。


 ホムラくんは構わずバサッと四枚の翼を広げると、得意気に語ってみせた。

『聞いて驚くがいい人間! 竜王さえも凌ぐ存在――それは竜神っす!』

「へー。竜神って本当にいるんですか」

『リアクション薄っ!? 神だよ!?』

「途方もなさすぎて実感がいまいち湧かないですね」

 分かる。

 大きすぎる存在ってそういうものだよね。現実味がなくなるというか、勝手に偶像化しちゃうというか。

 ともかく白竜というのも、その竜神の血族だけらしいのだ。

 だからごく僅かしかおらず、とても希少な存在。

 加えて守護を目的とした魔法しか使えず攻撃性がゼロなので、主に人間から神聖視される傾向にある。

 前世で言うところの麒麟とか白澤のような扱いと言えばいいだろうか。

 だから『見れば幸運が訪れる』なんて噂される所以となっている。


「竜神と魔王ってどちらの方が強いんですか?」

 ナギサくん、そんな小学生男児みたいな質問を……。

 聖の頂点対魔の頂点ならどっちが強いかって話かな。

 もし父様と戦うとしたら、絶対防御対殲滅必至攻撃って感じのハルマゲドンな図になる……んだと思う。

『どうっすかねー。リリちゃんのお父さんの本気、見たことないし』

「間違いなく見ない方が平和だよ……」

 私の発言でみんなの心が一つになった。質問してきたナギサくんもだ。

 きっと同じ光景を頭に描いたに違いない。


『結局のところ、リリちゃんは白竜に会いたいってことっすか?』

「うん。会える?」

『またいきなりなんで?』

「このアイテムのことで何か話が聞けないかなって思って」

 白竜姫の泪が載った本をホムラくんに見せる。

 ホムラくんて字が読めるのかな? と心配するも、ふむふむと頷く声がするので心配ないようだった。

 さすが竜王の息子さん。教育も完璧だ。なのになぜこの口調……。

 親しみが湧いて私は好きだけど。


『あー……。これっすか』

「何か知ってるの?」

『ここに載ってる白竜姫、幼なじみの母ちゃん』

「ええええ!?」

 まさかの本人特定!? 今日、何回驚くの私!

『本人から聞いたことあるから間違いないっす。でも今はもう姫じゃなくて、代替わりした竜神のお嫁さんになったから、竜神妃っすけど』

「り、竜神も代替わりするの?」

『そうっす。年取って守護の力が弱まると隠居するんすよ』

 だとしたら、どれだけ昔の話なんだろうか。


 さすが伝承。

 もう残ってない気が限りなくする。


「ちなみにそこに書いてあることって本当? あらゆる攻撃から身を守るってなってるけど」

『みたいっすよ。一時期噂になって、人間がそれ欲しさに戦争起こしたとか何とか』

 そりゃなるよ。垂涎物だよ。

『リリちゃんもそれ欲しい口っすか?』

「うん。できれば」

『物理耐性上げたいから?』

「ナギサくんが持ってたら安全だなって思って」

 正直に答えれば、ホムラくんはぷるぷると震え出す。


『さすがリリちゃん! やっぱ天使! あのドS兄さんと血縁とか信じられないっす。そのままでいてね!』

「う、うん?」

『じゃあオレは兄さんに外出許可取ってくるっす!』

 それだけ言い残し、バビューンと飛んでいくホムラくん。

 あっという間に姿が見えなくなった。

 まだ現存するのか訊きそびれちゃったよ……。


「とりあえず連れて行ってくれるということでいいのかな?」

「でしょうね」

「手土産は何がいいんだろう……?」

「気にするのそこですか」

 え? 違う?

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