11話 図書館
昼食も終え、やってきました午後のフリータイム。
父さまと母さまは仕事、兄さまも用事で出掛けてしまったので暇だ。
何しよう。昼寝にはまだ早い。
うーん……。図書館にでも行こうかな。
一人でできることって本を読むぐらいしかないんだよね。
図書館は執務塔のさらに隣の塔になる。
お城に図書館があるなんて不思議だけど、失われた叡智と言われる古代魔法が記された魔導書――いわゆる禁書なんかを保管する目的で父さまが建てたそうだ。
父さま自身が本好きなのも大きい。
今では一般の蔵書もかなりの数で、禁書を保管している部屋を除けばお城に入れる人なら自由に利用できる。
私の部屋から遠いのが難点だったのだが、母様が転移魔法を利用したどこで●ドア的な魔法陣でここと繋げてくれたから図書館へは一瞬で行ける。
しかも不安定な私の魔力を使わないで済むという安全設計だ。
大興奮で母さまに感謝したら、ハグされたまま小一時間解放されなかった……。
というわけで図書館へゴー!
ワインレッドの幾何学模様の中心に立ち図書館を思い浮かべる。
すぐにフワッとした浮遊感に襲われ、瞬き後には目的地だ。すごい。
到着地点は禁書保管庫のすぐ目の前。
一般の人は立ち入り禁止の三階部分だ。
ここにも私の部屋にあるのと同じ魔法陣があり、帰りはこれを使う。
私専用に設計されているので、これを使って人が突然部屋に来ることはないよ!
いつものように二階へ続く階段を下り、本館入り口の扉を開ける。
この扉も許可された人にしか開けない魔法が掛けられている防犯仕様だ。
ダークグレーのオシャレな扉を押し開けば、眼前に広がるのは書架の森。
中央部分は吹き抜けとなっていて、その周りを四角く囲うように背の高い書架が整然と並ぶ。
読書スペースには木製で落ち着きがあるシンプルなデザインの机と椅子が百単位で揃えられ、壁際の所々にはソファーも設置されている。
ここが魔王城だということを忘れさせる穏やかなこの空気が、私はとても好きだ。
さて、何を読もうかな。
なんともありがたいことに私はこの世界の文字を生まれながらに読むことができたので、何でも読み放題なのだ。
だからここをよく訪れては読み漁っている。
魔物の知識とか色々知っているのもそのせい。読める原理は謎なのに。
「やっぱ魔物図鑑かな」
魔物図鑑とはその名の通り、存在が確認されている魔物の生態が詳しく載っている本だ。愛読書の一つ。
この世界、コピー機なんてものはないので本は比較的希少だったりする。
それがこんなにも蔵書があるのは司書さんの魔法のおかげなのだ。
「……リリシア様。いらっしゃい」
「……リリシア様。いらっしゃい~」
お。噂をすればご登場である。




