表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の娘ですがマイペースに暮らしてます  作者: キイチシハ
第三章 獣人の国とウェンサ帝国編
105/174

103話 閃く時はあっけないくらい一瞬

 結論。

 誰もいませんでした!


 何でもアリ超人の兄様は昨日から護衛任務で不在の為、訊けず仕舞い。

 念話をすれば話はできるけど、護衛の邪魔はしたくないし。

 母様、リドくんとセリちゃん、キリノムくん、メルロー、ミスティス先生と悪魔商会の元締めの座を守っているラーディさんにも念話で訊いてみたけど、ダメだった。

 さすが鎖国同然の国。

 これで転移魔法でパッと行ける可能性は潰えてしまった。


 いよいよ父様の言っていた方法が現実味を帯びてくる。

 みんなにも渡航方法を訊いたら同じことを言われたんだよね……。


「ただいま」

 意気消沈して部屋に戻ればそこにソラの姿はなく、レオンさんがソファーで横になり静かな寝息を立てていた。

 よほど疲れていたんだろう。よく眠っている。


 そりゃそうだよね。

 単身で潜入して情報収集して命の危険に晒されて、気の休まる時なんてなかったと思う。ミッションがインポッシブルすぎるよ。

 起こさないようにベッドから上掛けを持って来てかけ、床に座り綺麗な寝顔を見つめる。


 ……他に何か方法がないかな。

 悔しいけど、父様の案が一番早くて合法的と言える。

 全部をまるっと無視した強行突破をしないのは、魔王の娘が法を守らないという事実を作らない為。

 魔族が人間に攻め入る口実ができてしまうから、それだけはできないのだ。

 王の娘が守らないなら自分達も守る必要がない。そう結論付けられてしまえば、きっと戦争一直線。

 世界の平和は相手を尊重することの上に成り立っていると思うんだ。

 それも危ういバランスの上で。

 身分証を偽造しないのはそういう理由――。


「随分と難しい顔をしておるな」


「!? お、起こしちゃいましたか」

 綺麗な琥珀の瞳が急に開かれて驚いた。

「いや。久しぶりによく休めた」

「あ、起きなくていいですよ。そのまま休んでいてください」

「そうはいかぬ。話があるのだろう」

「……はい」

「まあ聞かずとも、上手くいかなかったと顔に書いてあるがな」

 スルリと私の頬を撫で、少し眉尻を下げ笑うレオンさん。


「すみません。御察しの通りです」

「そうか。ではそなたの父君が言っていた案でいくしかないな」

「! いいんですか?」

「それが近道なのであろう?」

「それは、そうですが……」

「では仕方あるまい」

 静かに見つめてくるレオンさんの瞳には迷いがなく、すでに覚悟が決まっているように見える。


「……レオンさんは強いですね。私なら、そんなにすぐには決められません」

「それは少し違う。そなただから信用しているのだ」

「?」

「森で迷いなく我を治療し、何の見返りもなしに他者の為に動いてくれるそなただからこそ、身を任せようと思えたのだ。でなくば、こんな正気の沙汰とは思えぬ策に乗りはしない」

「なんだか随分と買い被られているみたいですね……」

 そんなことを言われたら申し訳なさでいっぱいになる。

 仮とはいえ、隷属するなんて酷い手段しか提示できなかったのに。


「そのような顔をするな。そなたの悲しい顔は見たくない」

 ごく自然な動きで上向かされ、秀麗な顔が近付いてくる。

 え? と思った瞬間、部屋の扉が吹っ飛ぶ勢いで思いっ切り開いた。

 半裸のソラの仕業だ。わお、素敵なシックスパック。


「嫌な予感がして見に来て正解だった」

「そ、ソラ! シャワーの途中で出て来たの!?」

 バスタオル一枚を腰に巻き、ポタポタと身体から水を滴らせているソラ。

 いないと思ったら自室で入浴中だったらしい。

 目のやり場に困る……! 獣の姿なら大歓迎だけど!


「だってオレ一人しかいないから同時には出来ないし」

「リリシア。見るでない」

 背後からレオンさんに抱きすくめられるように目隠しをされ、突然視界が暗黒に染まる。

 ビックリしすぎて転移魔法で逃げそうになった。


 …………ん?

 ちょっと待って、今なんか……。


「リリに触るな!」

「喚くな駄犬。まず服を着ろ」

 同時には無理、転移魔法、その二つが頭の中でカチリと組み合さる。


「ああー!! そうだった!」

 最初から一緒に行かなきゃいけないと思い込んでいた!


「リリシア……?」

「リリ?」

 突然叫び出した私の奇行で緩んだ腕の拘束から抜け、睨み合っていた二人に向き直る。

「ソラありがとう。いいヒントになったよ!」

「う、うん?」


「レオンさん。隷属しなくてもいい方法を思い付きました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ