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魔王の娘ですがマイペースに暮らしてます  作者: キイチシハ
第三章 獣人の国とウェンサ帝国編
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102話 ローラー作戦

「というわけで、早速私は情報収集をしてきます。レオンさんはここで休んでいてください」

「そうはいかぬ。我も行くぞ」

「いえ、本当にここにいてください! 多分、行く先々でトラブルになる予感しかしないので……」

 そうなると永遠に話が進まない。


「……つまり、そなたに余分な迷惑を掛けるのか」

 へにょんと耳を垂れさせるレオンさん。

 ソラと同じ仕草……! 獣耳を持つ種族の共通仕様なのだろうか?

 ぜひともじっくり検証したいじゃなく行かねば。


「残念だったな」

「すみませんソラもここにいてください」

「リリ……!?」

「あ、いや私の部屋にいなくてもいいけど」

 ソラの自室はこの部屋の隣にある。

 人型になれるようになってから設けてもらったのだ。

 でも何故かソラは寝る時以外のほとんどを、私の部屋で過ごす。

 小さい頃に冷遇されていたトラウマ故か、人の気配を求めるのではと思っている。スキンシップが多いのも、うちの家族の影響だけでなくその反動じゃないかとも。


「こいつと同じ扱いなんて酷い」

 ソラまでレオンさんと同じ様にしょんぼりする。ぅぐっ。

「ごめんね。なるべく早く戻るから」

 頭を撫でて説得すれば、ソラは気持ち良さそうに目を細めた。

「じゃあその前にもっと撫でて?」


 萌 え 死 ぬ。


 ゴロゴロと転げ回りたい衝動を理性でなんとか押さえつけ、ソラのもふっとした耳も触りながら撫でる。この毛に埋まりたい……。

「――そ、そろそろ行ってくるね」

 永遠に触っていられるモフみを断腸の思いで振り切り立ち上がる。

 するとレオンさんまでソファーから立ち、こちらに近付いて来た。

「リリシア。この借りは必ず返す」

「? まだ何もしてませんよ?」

「……そなたは実に謙虚であるな。そして優しく聡明だ」

 誰ですかそれ。


「レオンさん。精神安定の効果がある魔花を持ってきてもらうので、飲んでください。相当やばい状況ですよ! きっと気が抜けたからだと思いますが!」

「我は正気であるぞ……」

「自覚がない! 重症だ!」

 メルローに再登場願おうとしたところ、本気で止められた。




 そんな一悶着の後、やって来た鍛錬上最上階。

 ユイルドさんに会う為である。

 放浪歴があるユイルドさんなら、もしや獣人の国にも行ったことがあるのではないかと思ったのだ。

 とりあえず、お城の人たちには同じ質問をして回ろうと思っている。


「お前それでも鬼人か! この程度も耐えられんとは軟弱すぎるぞ!」

「が……ッ!!」

 人体の急所を一切の躊躇なく思いっ切り硬い拳で抉る鬼と、それを受けて血反吐を吐く鬼。

 あれ、ここって地獄だっけ?


 鬼将軍が鬼息子を容赦なく殴り続けるという、警察沙汰のような訓練現場に出くわした。

 ……ぼ、防戦一方にすらなっていない。もはやリンチの域だ。

 バルレイ将軍、私の稽古の時はめちゃくちゃ加減してくれてるんだね……。

 分かってはいたけど、こうじゃなくてよかったと心の底から思う。

 私なら確実に死ぬ。心身ともに死ぬ。


 訓練の邪魔をしないよう陰からハラハラ見守っている内、とうとうユイルドさんは倒れたまま起き上がらなくなってしまった。

「とんだ期待外れだな。一から鍛え直せ」

 格闘ゲームのK.Oみたいな画になったので、すかさず割り込む。

「バルレイ将軍、さすがにそれは厳しすぎでは……?」

「あ? なんだリリシアか」

「お邪魔してます」

「うぅ……」

 屈んでユイルドさんを覗き込めば、苦しそうに何事かを呻いた。

 意識があってよかったものの、不遜な美顔は見る影もない。うわぁ……。


「【完全治癒】」

 これでは話どころじゃないし、見ているこっちが痛すぎる。

 ユイルドさんに治癒魔法をかけると、バルレイ将軍が凛々しい眉を寄せた。

「おいリリシア。魔法で治しちゃ修行にならねぇだろうが」

「万全な体調で明日から励んだ方が効率的っていうか、痛いの嫌ですよ!」

「痛ぇのが嫌なら強くなりゃいいんだ」

「強者の極論!」


「…………、余計なことすんじゃねぇよ」

 回復したユイルドさんが幽鬼のごとくユラリと起き上がり、私を睨んでくる。

「はい余計なことをしました。すみません。それで質問があるのですが」

「お前、相変わらずだな……」

「礼ぐらい言えねぇのか。このバカ息子が!」

 呆れた顔で私を見るユイルドさんの頭を、バルレイ将軍がガツンと殴りつけた。


「将軍!? 言ってることがさっきと矛盾してますよ!?」

「修行にはならねぇが、治してもらったことに変わりはねぇだろうが」

「う、うーん……。まあいいか。で、質問してもいいですか?」

「……さっさと言え。んで、今度こそクソ親父を殺す!」

「殺人事件だけは勘弁してください。お二人は獣人の国に行ったことはありませんか?」

 私の質問に二人揃って変な顔をする。そっくりだ。


「いや、ねぇな」

「オレもねーよ」

「そうですか……」

 ユイルドさんならもしかして、と思ったんだけど。


「お前。また何か変なことに足突っ込んでんのか」

「足どころか全身突っ込んでます!」

「威張るんじゃねーよ」

「あだっ」

 今度は私がユイルドさんにバシッと頭を叩かれた。


 雑なツッコミまで将軍に似なくていいと思う。


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