義勇軍壊滅
そしてとうとう破滅の時がやってきた。カニング氏率いる義勇軍が敵の本拠地の目前まで迫った時だった。それまで混沌の軍勢は抵抗らしい抵抗もせず、退却を繰り返すばかりだった。しかし、この時は違っていた。おそらく敵も全兵力を集中したのであろう、大軍で手ぐすねを引いて待ち構えていた。しかも地の利は敵側にある。カニング氏と義勇軍は敵の本拠地の目前で、完全に包囲されてしまった。
同じ頃、ゴールドマン騎士団長は、カニング氏の窮状など知らず、敵の本拠地からはるか南東の地点に軍を留め、進撃の許可を求める書状を伯爵に送っていた。
伯爵は早馬の報告を聞いて愕然とした。今まで楽勝で勝ち続けていたのに、一転して大ピンチに陥ったのだから。
「一体どうして、こんなことになったのだ」
伯爵は頭をかきむしってうめいた。わたしが途中で口を出さなけれれば、義勇軍と騎士団・傭兵部隊が敵の本拠地を南北から挟撃するという当初の予定に近い形で進んでいた可能性はあるが、最終的な責任者は伯爵なのだ。わたしの良心が痛むわけではない。
わたしは(意図的に)少々憤慨しているように感情を込め、
「カニングさんが突進しすぎたからですよ。もう少し慎重に行動すべきでしたが、伯爵の命令さえ無視して独断で軍を進め、結局、包囲されているのです。自業自得です」
「そうだ。確かにその通りだ」
誰の責任かを議論していても仕方がないが、この際だから、カニング氏とその仲間にすべての責任を引き受けてもらおう。カニング氏に責任を押し付けたいのは伯爵やゴールドマン騎士団長も同じだろうから、カニング氏を吊し上げれば誰もが納得するはずだ。
結局、カニング氏は敵の領内で大敗した。義勇軍は執拗な追撃を受け、ミーの町に生きて帰れたのは、カニング氏とその仲間以外、誰もなかった。
敵がウェルシー伯の軍団を包囲殲滅するために、最初のうちにわざと負けたフリをして退却を繰り返したのか、あるいは撤退を続けている間にたまたま敵の戦力が整ったのかは分からない。ロシアにおけるクツーゾフか、ソ連におけるスターリンか、あるいはそんな立派なものではないか、ともあれ、カニング氏が突出しすぎて墓穴を掘ったことに違いはない。
カニング氏の義勇軍が敵の本拠地を目の前にして壊滅してしまったため、作戦の続行は不可能になった。敵の反撃が始まり、せっかく奪い返した宝石産出地帯やその付近の町や村も再び敵に占領されてしまった。ミーの町の防備が手薄になったため、ゴールドマン騎士団長の騎士団・傭兵部隊が呼び戻されることになった。
伯爵は見ていて痛々しいほどに落ち込んでいた。ポット大臣は、何をしているのか知らないが、寝る間も惜しんで忙しそうに働いていた。ただ、客観的に見ると、再逆転の可能性は限りなくゼロに近い。




