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ザ☆旅行記Ⅱ 混沌の勢力  作者: 小宮登志子
第5章 侵攻作戦
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野良犬か猟犬か

 隻眼の黒龍はニュートン力学を無視しつつ、わたしの頭のすぐ上を超低空でホバリング。その左目はドーンとその子分たちをにらんでいた。ドーンたちは戦意を完全に失っているようだ。

 わたしはゆっくりとドーンの目の前に移動し、

「わたしは旅の魔女、カトリーナ・エマ・エリザベス・ブラッドウッド」

「ひっ!?」

 ドーンは言葉にならない叫び声を上げた。わたしはドーンの襟首をつかまえ、

「名乗ったからには、あなたたちにはわたしの犬になってもらうわ」

「なっ、なにっ?」

「いつまでもこんな町で野良犬を続ける気? それよりも猟犬の方が、ご馳走にありつけるわ。この場でドラゴンの炎で焼き殺されたいなら、それもいいけどね」


 結局、ドーンたちは無条件降伏、わたしに奴隷的服従を誓うことになった。

「この前はなかなか言うことをきかなかったのに、今日はあっさりと降参したのね」

「その時は、仲間を殺せと言われたからですよ。アウトローにも信義はあるので。でも、全員まとめて犬になれということなら話は別です。カトリーナ様は魔法のほかにも様々な計略に通じドラゴンをも従えるという、我らの首領にふさわしい、つまり、食いっぱぐれはあるまいと……、いや、これは、失礼つかまつりまして……」

「そういうことなのね」

「それで、一点だけ確認したいことがありまして、要は俺たちの掟との整合性で、貴族との関係を……」

「ああ、そのことね。今はまだ動けないけど、この国を自分のものにするため、役人として伯爵の館に潜りこんでるのよ。わたしが貴族なわけ、ないでしょ」

「おおっ、それはすごい!」

 ドーンと子分たちから歓声が上がった。

 わたしはその場にいた全員と握手し、その後、ドーンたちを伴い事務所に立ち寄った。事務所では主だった幹部が集められ、幹部もわたしに忠誠を誓った。こうして、わたしは暴力的非合法活動団体を手に入れ、そのリーダーに納まることになった。


「あんな大見得切って大丈夫? それとも、本気で伯爵領を横領するつもり?」

 伯爵の館への帰り道、子犬サイズに戻ったプチドラが言った。

「大丈夫とは思えないけど、あのくらい言っておかないと、しょうがないでしょ。でも、なんとか、なるようになるわ、多分……」

 ドーンたちには、つい勢いで、いい加減なことを言ってしまった。事務所でも調子に乗って、「あなたたちには時が来れば存分に働いてもらいます。その時まで、けっして修行を怠らないように」などと、自分でもわけの分からない長広舌をぶってたりして……

 正直なところ、なんとかなると思えないけど、なんとかしなければならない。困ったものだ。

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