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ザ☆旅行記Ⅱ 混沌の勢力  作者: 小宮登志子
第5章 侵攻作戦
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毎度の迷子の話

 今回の戦いは順調に進んでいた。義勇軍は敵の抵抗を排除しながら少しずつ占領地を奪還し、騎士団・傭兵部隊は慌てず騒がず程よい速度で進軍していた。伯爵はもちろん、薄い頭と三白眼のポット大臣も、帳簿を見ながら、いつになく機嫌がよかった。

「大臣、いつもは不健康な薄笑いを浮かべているのに、今日はニコニコですか」

「ええ、まあね。このまま宝石採掘地帯を奪還したところで戦いを終わらせてくれれば、財政的に苦しいなりにもなんとかなりそうなのでね」

「なるほど、それはよかったですね」

 失地回復をもってとりあえず戦争終結という話は、大臣にも伝わっているようだ。このまま思惑通りに進んでくれれば、混沌の勢力との抗争も、近いうちに決着がつくだろう。


 わたしはプチドラを抱いて町に出た。町の人々にも勝利の報が伝わっているようで、通りは祝勝モードだった。にわか仕立ての吟遊詩人が義勇軍の武勇を讃える歌を歌い、酔っ払いが「敵を何十匹も斬り殺した」などというホラ話をしていた。わたしは閉口気味に、

「これはちょっと、うかれすぎではないかしら」

「大衆は熱しやすく冷めやすいものだからね。今が一番HOTな時期だよ」

 確かに、仮に敗北の知らせが届いたなら、一気に意気消沈するだろう。そんな知らせが続けば、激昂した群衆が伯爵の館まで「戦死した夫や息子を返せ」と押しかけてくることも……


「でも、何度来ても、よく分からない道ね」

 毎度のことながら、またまた道に迷ったわたしだった。それほど狭い道ではないが、裏道に迷い込んだのか、犯罪多発地帯なのか、とにかく人通りはほとんどない。

「いつものことだけど、今回も、この前のチンピラが送ってくれるんじゃないかな」

 プチドラも慣れたものだ。

 しばらく歩いていると、

「ちょっと待て」

 わたしは背後から声をかけられた。振り向くと、そこにはプチドラの予想通り、暴力的非合法活動団体のリーダー、アーサー・ドーンが数人の子分を連れて立っていた。

「あら、ドーンさん、ごぶさたしてます」

 ドーン氏は義勇軍には参加しなかったようだ。参加しても何もメリットがない以上、当然だろう。

「挨拶はいい。ちょっと、ききたいことがあるんだが……」

 なんだかドーン氏の様子がいつもと違う。ドーン氏が右手を上げると、子分たちは武器を構え、わたしとプチドラを取り囲んだ。一体、なんなんだ。

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