諫言か讒言か
ゴールドマン騎士団長はポット大臣を相手に、カニング氏に対する日頃の恨みつらみをぶちまけていたが、伯爵が近づくとさっと居住まいを正し、
「伯爵、先ほどは、大人げなく取り乱してしまい、申し訳なく……」
「いいよ。先ほどの件は、別に、どうということはない。戦場できっちりと役割を果たしてくれればいい」
伯爵は、どこか、なげやりな物言いだ。カニング氏が嫌いなのは伯爵も同じ、早く混沌の軍団をこの国から追い出し、カニング氏にも宰相のところにおひきとり願いたいということだろう。
その時、またしても、カニング氏が問題を引き起こした。彼は調子に乗って飲みまくり、大いに気分をよくして、近くにいた高級官僚に肩をぶつけて喧嘩を始めたのだった。
「あいつは疫病神か!」
伯爵は吐き捨てるように言い、ポット大臣を連れ、仲裁に向かった。そして、わたしとゴールドマン騎士団長が残された。
「カトリーナ殿、こうして差し向かいで話すのは初めてですな」
騎士団長は盃のワインを一気に飲み干して言った。わたしは騎士団長の盃にワインを注ぎながら、
「そうですね。なかなか機会がありませんでした。騎士団長は、今回は一方の軍の司令官だとか……」
「馬鹿馬鹿しいことです。こんな戦いは早く終わらせてしまいたいですな。あの小僧より先に、我が軍だけで敵の本拠地を突き、鼻を明かしてやろうかと考えておりますわい」
「作戦では、義勇軍と騎士団・傭兵部隊が合流して総攻撃となっていますが……」
「なあに、勝てば誰も文句は言わんよ」
今回も騎士団長はカニング氏を出し抜く予定らしい。勝てればいいが、負ければ誰も生きて帰れないだろう。のみならず、騎士団や傭兵部隊を打ち負かした混沌の軍勢は、勢いに乗り、一気にミーの町に攻め寄せるだろう。そうなれば、ミーの町では、阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられることになる。
騎士団長が敵地でくたばるのは勝手だが、彼の冒険主義に付き合わされてはかなわない。わたしは一計を案じ、
「騎士団長、騎士団・傭兵部隊だけで敵の本拠地を攻略したとしても、それが手柄になるかどうか……」
「それはどういう意味かね?」
「カニングさん立案の作戦に則って行動したことに違いはありませんから、『多少の手違いはあっても基本的には作戦通りに進んだ』ということで、カニングさんが手柄の独り占めを主張することもあり得ます」
「うーん、そういうことも考えられるのう。では、どうしたものかな」
「それに、カニングさんを本当に信用できるのでしょうか。もともと彼は成り上がり者です。今回は義勇軍という自分の兵隊を手に入れましたから、本当に何をしでかすか分かりませんよ」
「なに!?」
騎士団長は盃をテーブルに置き、目を大きく見開いてわたしを見た。チャンス(わたしの内心の声)。




