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ザ☆旅行記Ⅱ 混沌の勢力  作者: 小宮登志子
第3章 義勇軍
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敵本拠地侵攻作戦

 これで何回目だか忘れたが、またまた作戦会議が開かれた。会議の冒頭、ポット大臣が志願兵の募集状況について、現在、数千人規模の応募を受けている旨を説明した。これは、現有の騎士団と傭兵を合わせた数よりも多い。それだけ、カニング氏が「皇帝の騎士」の肩書きに物を言わせて大衆をアジったということだろう。

 伯爵は説明を聴き、満足したように、何度もウンウンと頷いていた。ただし、素人の志願兵がどの程度使い物になるか、よく分からないけど。


 その説明の後、カニング氏が作戦を提案した。

「このたび、志願兵を募り、まとまった兵力を得ることができました。ここは、速攻で攻めるべきです。鉄は熱いうちに打つ、これが原則なのです。義勇軍の士気が高い今こそ……(云々)……」

 話は演説口調で延々と続いた。要点だけかいつまんでいうと、提案の趣旨は、この際、占領地の奪還だけではなく、敵の本拠地に乗り込んで敵を完全に殲滅してしまえというものだった。

 混沌の勢力の本拠地は、ミーの町から真っ直ぐ西の方角にあった。単純に西に進めば本拠地に行き着くことになるが、現実には、西にそびえる山地は標高が高く、山越えは不可能だった。したがって、まずは北西方面に進み、山間部を縫うように北側から迂回するか、いったん南西方面に向かい、不毛の荒地を横切って南方から回り込むか、進路は二つだった。

 カニング氏は、軍を義勇軍(カニング氏が指揮)と騎士団・傭兵部隊(ゴールドマン騎士団長が指揮)の二つに分け、義勇軍が北西方向に向かう北側の進路を、騎士団・傭兵部隊が南西方向に向かう南側の進路をとり、敵の本拠地で両軍が合流し、敵を戦略的に包囲殲滅するという作戦を提案した。

 なお、北西方向には、混沌の軍勢に占領された町や宝石採掘地帯があり、義勇軍には、その地に住んでいた住民の多くが参加していた。


 今回もやはり、ゴールドマン騎士団長はムスっとした顔で何も言わなかった。聞くところによると、騎士団長はカニング氏と廊下で会っても挨拶すらしないという。いついかなる場合でも、カニング氏と話をしないと決めているのだろう。

 伯爵もこの作戦にはあまり気乗りがしないようだ。伯爵は渋い顔をして、

「壮大なスケールだな。前回の戦いで敵もかなりの被害を被っているはずだが、やはり敵中深く飛び込むことになるわけだ。危険すぎはしないか」

「そんなことはありません。義勇軍は意気盛んです。今、この時期を逃せば、永遠に混沌の軍団を打ち破ることはできないでしょう。今こそ決断する時です」

 カニング氏は大げさに身振り手振りを交えて力説した。とにかく、「決戦あるのみ、今ここで戦わないのは臆病者だ」と。騎士団長が何も言わない(言えない)状況では、誰もカニング氏の迫力に抵抗することができなかった。

 結局、カニング氏の提案する侵攻作戦が了承されたのだった。

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