突然の闖入者
いきなり武装した混沌の勢力に完全に包囲されたのだが、まったく恐怖はなかった。なんといっても、こちらには隻眼の黒龍がいる。わたしは子犬サイズの黒龍に言った。
「適当にあの連中をやっつけてくれる?」
「焼き殺すのは簡単だけど、まずは話し合いでいこうよ」
黒龍はそう言うと、けたたましい叫び声を発した。すると、ゴブリンやオークの群れもすぐに応え、しばらく、キャッキャッという意味不明なやり取りが続いた。さすがは黒龍、混沌の勢力の言葉も解するらしい。わたしにとっては騒音に過ぎないのだが。やがて、黒龍は、わたしの方を向き、
「交渉の結果だけ言うね。『こちらの持っている食料をすべて渡せば、ミーの町までの通行を妨害しない』と、彼らは言ってる。どうする?」
「手持ちは保存食が10食くらいだけど、それで通してくれるの?」
「うん。最初は金貨を要求されたんだけど、値切ったんだ。ただ、これ以上は負けられないんだって」
「その程度で通してくれるなら、いいでしょ。交渉成立と伝えて」
「うん、分かった。」
強盗相手に値切るのも変な話だが、町に着けば食べるところくらいあるだろう。出会う敵をすべて倒さなければならないわけでもない。
ところが、その時、突然、地面からいくつもの火柱が上がった。そのうちいくつかは、ゴブリンやオークを直撃し、火だるまにした。さらに、数個の放電する光の球が追い討ちをかけた。敵が光の球に触れると、あっという間に真っ黒焦げになってしまった。
「あなたの魔法なの? これでは騙し討ちよ。個人的には嫌いじゃないけど」
「ちょっとまってよ。ぼくじゃないよ」
黒龍は否定した。わたしは魔法を使えないし、一体誰の仕業だろう。すると、
「大丈夫ですか、我々が来たからには!」
後方から、若い戦士と背の低いずんぐりとしたオヤジが駆け込んできた。そして、ゴブリンとオークの群れに向かって、武器を手に斬り込んでいった。最初は10名程度いた混沌の尖兵どもは、あっという間に皆殺しにされてしまった。
正義の押し売りみたいなことをされても迷惑なだけだが、何も言わないわけにはいかないので、
「ありがとう。おかげで助かりました」
「いえ、礼には及びません」
若い戦士は額の汗をぬぐって言った。堂々として自信に満ち溢れているように見えた。その戦士の傍らには、背の低いひげもじゃのオヤジが立っている。よく見れば、ドワーフだ。
やがて、後方から4人、この戦士の仲間が手を振りながら駆け寄ってきた。金髪の女性のエルフ、やつれた顔の、多分、魔法使い、白っぽい衣服を着たプリースト、人相の悪い何だかよく分からない人。合計6人、どこかで見たような、古典的なメンバー構成だ。