お金や宝石にまつわる話
資料室での調べものの結果、ウェルシー伯が領内に宝石採掘地帯を保有していることが分かった。採掘地帯は、ミーの町からみて北西方面に位置する西部山岳地帯、混沌の勢力との境界付近にある。もともと、ミーの町の近くで宝石が採れ、そこに人々が集まったのが町の起源だった。町には宝石加工技術者も集まり、町の財政も豊かになった。いつしか、この地域は「ウェルシー」と呼ばれるようになった。
現在、ミーの町では既に宝石を採りつくし、人々は宝石を求めて北西方面へ生活圏を拡大している。ウェルシー伯と混沌の勢力との歴史的な戦いは、宝石を巡っての争いでもあった。領土の西半分を失っている今、宝石採掘地帯は混沌の勢力の手に落ちている。伯爵としては、なんとしても宝石採掘地帯を奪還したいところだろう。
「ねえ、プチドラ、伯爵の領地で宝石が採れるって、知ってた?」
「一般常識程度はね。それに、ミーの町のブランドも有名だよ。皇帝や諸侯の装飾品の半分はこの町で作ってるらしいよ」
「ふ~ん、そうなの……」
宝石や貴金属が採れるところでは、政情の不安定化、ゲリラの出没、あるいは大国の介入等々、穏やかにいかないことが多い。今回、「皇帝の騎士」が派遣されてきたのも、何かの陰謀だろうか。
わたしはポット大臣に頼まれた仕事を終え、大臣のところに戻った。大臣は何やらモゴモゴと口を動かしながら帳簿とにらめっこをしていた。
「大臣、頼まれた仕事は終わりました」
反応はない。大臣は、何か考え事をしているようだ。
「大臣、あの……」
やはり返事はなかった。一体何を考えているのだろう。わたしは大臣の正面に回り、思い切り顔を近づけた。
「起きてますかぁ~?」
大臣は、少し時間を置き、
「えっ? な、なに? ……ギャッ!」
と、びっくりして飛び上がり、後ろにひっくり返った。なんだか反応が過剰のような気もするが、
「あら、申し訳ありません、大臣。さっきからお呼びしていたのに、お返事がないもので……」
「ああ、おどろいた。心臓に悪いですよ」
大臣は衣服の乱れを直しながら、よろよろと立ち上がった。
「大臣は先ほどから、一体何をお考えで?」
「微妙な問題なので、私の口からは言うわけにはいかんのです」
大臣は口を閉ざした。結構危ない話かもしれない。ただし、帳簿とにらめっこをしながら考えていたということは、やはりお金が絡んだ話だろう。宝石採掘地帯を確保していない今、多少は非合法な手段を使っても戦費を捻出する方法を考えているのかもしれない。あるいは、借金で完全に首が回らなくなってたりして……




