事務局らしい事務局
カニング氏を責任者として、志願兵の募集が始まった。ただし、実務を担っていたのは、薄い頭と三白眼のジョン・ポット大臣だった。「皇帝の騎士」カニング氏は実務家ではなく、事務処理能力はほとんどゼロだったから。あるいはゼロどころか、マイナスだったかもしれない。
わたしは伯爵にお願いし、ポット大臣の手伝いをすることにした。手伝いをする義務も義理もないが、何もせずにぶらぶらしているのは気が引けるし、なんだかキモいポット大臣でも、一緒に仕事をしていれば、どこかにいいところが見つかるかもしれない。
肩書きは、カニング氏が志願兵募集事務局長、ポット大臣が事務局次長、わたしが事務局次長代理で、事務局には適当な数の事務局員が置かれた。
志願兵募集事務局は事務局らしく、いかにも事務局という雰囲気だった。熱狂的にやる気があるのはカニング氏だけで、事務局次長のポット大臣は事務的に淡々と仕事を進めていた。事務局員の能力は劣悪で、字や計算を間違えたり、報告を取り違えたり、のみならず無断欠勤など。もちろんわたしも適当に手を抜いていた。
「違うじゃないか、どうしてこんなことになるんだ!」
事務局内では、毎日、カニング氏の怒鳴り声が響いた。
「これはこういうわけで、ここはこうなっています。ですから、これがああして、こうなって云々……」
カニング氏が怒り出すたびに、ポット大臣が資料を提示し、懇切丁寧に説明した。しかし結論は、「ダメです、無理です、できません」に決まっていた。カニング氏はポット大臣から理詰めの説得を受けると、返す言葉がなかった。剣ではなく言葉のやりとりでは、カニング氏はポット大臣の敵ではなかった。
わたしはそんなやりとりを横目に、内心ゲラゲラ笑いながら、
「ねっ、プチドラ、わたしが提案しなくてよかったでしょ」
「そうだね。言い出しっぺで責任者にされてたら、大変なことになってたかもね」
それでも、カニング氏が毎日のように町中を遊説して回り、懸命に義勇軍への参加を訴えたおかげで、志願兵は少しずつ増え始めていた。遊説の際には、いつもわたしが随行だった。カニング氏とポット大臣は、お互いにあまり顔を合わせたくないのだろう。
「皆さん、今こそ起つ時です。前の戦いで、混沌の勢力は、かなりの損害を被りました。ヤツらを、混沌の勢力を、この地から叩き出すのは、今をおいてないのです。ヤツらを殲滅し、この地上の遥かかなたに追い払い、二度と戻ってこられないようにすることが天の意志であり、皇帝陛下もそれを望んでおられるのです。そのためにも皆さんの力が必要です。我々とともに、この『皇帝の騎士』バーン・カニングとともに、混沌の勢力のいない、平和な世界を取り戻そうではありませんか!」
カニング氏が吼えると、聴衆はその意味を理解できているのかいないのか知らないが、熱狂的な拍手を送った。




