再会
「何か御用? あら、あなたたちは……」
振り向くと、先ほど絡んできた肩幅の広いリーダーとその仲間たちが立っていた。リーダーは、チッと舌打ちして天を仰ぎ、
「またか! 今日はついてない日だ」
暗くなってきたので、わたしだと分からなかったのだろう。ともあれ、人に遇えたのは運がよかった。
「あなたたち、丁度よかったわ。お願いがあるんだけどきいてくれる?」
「お願いだって?」
「迷子になってしまったみたいなのよ。適当なところまで送ってほしいんだけど」
「迷子?」
リーダーと仲間たちは、おそらく予想外の展開なのだろう、一瞬、呆然とした。しかし次の瞬間には一部から失笑が漏れ、最後にはリーダーも口を押さえ、笑いをこらえようと必死になっていた。何だか不愉快だ。わたしはちょっぴり腹を立てて、
「何がおかしいのよ」
「すまない。さっきの悪人ぶりと今のギャップに、つい…… でも、おかしい…… ハハハ!」
賊たちに大笑いされたものの、結論的には、リーダーが途中まで送ってくれることになった。男の名はアーサー・ドーン、この町で暴力的非合法活動を行っているそうだ。昔風にいえば愚連隊みたいなイメージだろう。わたしも「タダのカトリーナ」として自己紹介した。傭兵志望でこの町に来たという話をすると、ドーン氏は、
「傭兵か、それは残念だな。俺たちの組織に入ってくれれば助かったんだが……」
と、本気で残念がっている様子。さっきは敵同士だったのに、頭の切り替えが早いのか、それとも、根が単純なのか。
「混沌の軍勢がこの町に迫っているようだけど、そんな悠長なこと言ってていいの?」
「攻めてきたら、その時はその時のことさ。歴史上、この町が混沌の勢力の手に落ちたことはないし、町の人たちも見た目ほど悲観的じゃない。皇帝が英雄を派遣したといううわさもあるし、何とかなるんじゃないか」
英雄とは、あのカニング氏一行のことだろう。正直、あまり頼りになりそうにないけど。こんな世間話をしながらしばらく歩いていくと、ようやく、見覚えのある区画まで戻ることができた。
「ありがとう。今日は助かったわ」
「いやいや、大したことじゃない。それよりも、気が向いたら組織に来てほしい。歓迎するよ」
「ええ、そのうち寄らせてもらうわ」
辺りはすっかり暗くなっていた。早く戻らないと、晩御飯に間に合わなくなってしまう。わたしはドーン氏と別れると、プチドラを抱き、早足で歩いた。程なくして伯爵の館に着いた。
しかし、会議はまだ終わっていなかった。




