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旅立ちの後の現実的な問題

 公務員だったわたしは、ふらりと旅に出て、どういう原理か分からないけど異世界に流されてしまった。今となっては、どうでもいいことだが。

 異世界に流されてから、奴隷として売られ、メイドから後宮候補生、ご隠居様の側仕えへと順調に出世(?)していったわけだが、御曹司がご隠居様のお城を攻撃されたことで、お城での平穏な生活を失い、その代わりと言ってはなんだが、タナボタ的にエルブンボウと隻眼の黒龍を手に入れることになった。最後は、ご隠居様の敵討ちのノリで、御曹司の軍隊を潰走せしめたのだが……


「もうそろそろ、ウェルシー伯領の都、ミーだよ」

「そう。なら、この辺りから歩きましょう。降りて」

「分かった」

 隻眼の黒龍は、ゆったりと地上に降りた。付近には、というか、四方を見渡す限り誰もいないし、動くものの気配もない。背の低い草に覆われた平原が広がっているだけだ。黒龍は、魔法の力でもって、ほんの数秒のうちに、体を象くらいの大きさから子犬程度に縮めた。小さいほうが目立たなくていいし、金銭上の切実な問題もある。なお、体のバランスも、頭は大きめで四頭身、翼は申し訳程度と、さながらドラゴンの幼生のようになった。

「その都まで、どのくらいかかるの?」

「半日もかからないだろう」

 わたしたちは歩き出した。純白シルクのメイド服はボロボロになったので、今は安物、漆黒のメイド服だ。エルブンボウを布袋に入れて持ち、背中には、矢筒と、食料等を入れたバックパックを背負っている。結構重い。


 わたしたちが新たなる旅立ちを始めたのはいいが、金も職もない。お金がなければ何もできないという資本主義の原理はどこも同じ。メイドの経験はあるがドジっ子では勤まりそうにない。そうなると、得意の弓術を活かすべく、傭兵の口を探す以外にシノギはなかった。隻眼の黒龍をけしかければ強盗くらいはいつでもできるけど、アウトローのリスクを考えると、やっぱりちょっとまずい。

 まず、手近にあった山賊のアジトを襲い、当面の食料と資金を確保し、次に、町で、衣服その他の装備を整え、冒険者ギルドの一般用求人広告を見て仕事を探した。ギルドで聞いた話では、西方辺境地帯のウェルシー伯が傭兵を募集(経験、前歴、兵科は問わず、しかも高給で)しているとのことなので、ウェルシー伯領の都、ミーまで、遠路はるばる赴くことにしたのだった。

 もう一つ、大きな問題としては、隻眼の黒龍のエサ代があった。象のように大きな体だから、本来は、維持費がものすごく(ロールスロイスなみに)かかるはずなのだ。ただ、幸いなことに、省エネモードすれば、すなわち、体の大きさを子犬くらいに小さくすれば、エサも子犬くらいで済むということなので、黒龍には普段は省エネモードでいてもらうことにした。

 なお、漆黒のメイド服は、ご隠居様の喪に服するという意味。しばらくはメイド服で過ごすことにしよう。

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