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《陽だまり横丁猫かわら版》

三毛猫の手記

作者: 藍蜜 紗成

 8月1日 嫌になるくらいの晴れ

 暑い、暑い、暑い。死ねる。

 死にそうになっていたら真木が(たらい)に氷を入れて扇風機の前に置いてくれた。

 極楽。極楽。涼んでいたら2匹の子猫シマと白雪が来た。


「なにこれ!!なにこれ!!」氷に大はしゃぎだ。

 中に入って「冷たい!冷たい!」とはしゃいでいる。

 床は飛び散った氷でびちゃびちゃだ。真木に怒られるだろうが。

 汚すなと叱ったら今度は氷をはぐはぐ食べ始めた。そんなに一気に食べたら恐らくアレになるぞ。

「みぎゃ―――!!!!!」「なんだこれ、キーンてする!!」一気に食べるからだ。これに懲りたかと思えばソレが楽しかったらしい。


 はぐはぐはぐはぐキーン!!!!頭を押さえてにゃあにゃあ言っている。見る分には可愛い、していることはアホだがな。





 *    **     ***       ****       *****       ******




 8月2日 嫌みなくらいの晴れ

 暑い。暑い、暑い、暑い。死ねる。今日も逝ける。

 例によって死にそうになっていたら真木がまた(たらい)に氷を入れてシートを敷き、扇風機の前に置いてくれた。昨日後片付け大変だったからな。俺は見ていただけだが。

 そして涼んでいたらやっぱり2匹の子猫が来た。

 例によって例の遊びである。

 はぐはぐはぐはぐキーン!!!!頭を押さえてにゃあにゃあ。はぐはぐはぐはぐキーン!!!!頭を押さえてにゃあにゃあ。 和む。

 と、客が入ってきた。皆チビ達に夢中だ。 俺も客も和む。真木は汗だくで焼き鳥を焼いている。真木以外は和んだ。




 *    **     ***       ****       *****       ******




 8月3日  喧嘩をふっかけてる様な晴れ

 暑い、焼ける、毛を脱ぎたい。太陽を殴りたい。

 今日も真木は盥に氷をくれた。扇風機をまわしてすぐ、2匹の子猫、シマと白雪が来た。そして始まる例の遊び。はぐはぐはぐきーん!!頭を抱えてにぁにぁ。何度見ても和む。

 クロが来た。涼むのか思えば何故かはぐはぐきーんに混じっていた。子猫だから可愛い事を知った。

 猫又としての自覚は薄いらしい。まぁいいがな。



 *    **     ***       8月4日 裏へ ****       *****       ******




 8月5日  うっとうしい雨シバくぞ雨

 雨でも暑い。ジメジメして苛つく。怪我をしたクロを見舞いに来た客が、小玉のスイカを持って来た。暑い日には甘いスイカに限る。さて食おうとしたら、客の1人がスイカに猫の顔を描いた。


『白雪、スイちゃんだよ~』

『にぁあぅ♪』


 気に入ったらしく全然そばを離れない。正蔵じいさんが来て、スイカ事白雪を持って帰った。厄介な事になりそうだ。勘弁してくれ。




 *    **     ***       ****       *****       ******



 8月6日 雨だ!雨だ!!雨だ!!!やんのかこの野郎


 面倒なことになった。昼に来た白雪は相変わらずスイカに夢中だ。


「スイちゃんはしんゆうなのにゃ!!」


 白雪よ、それは猫ではない。スイカだ。食わせろ。しかし(むし)りとるわけにもいくまい。悩む。

 どうするか考えていたら、あのアホクロが白雪からスイカを奪おうと飛びかかり、シマがそれを止めようと続き、白雪が親友の前に躍り出たが、勢いそのままに押され、猫3匹の体当たりをくらったスイカはパッカリと美味しそうに割れた。


「み、みぎゃぁぁぁぁぁ!!!!! にぃちゃ、スイちゃ、怪我したぁぁ 白雪、の、スイちゃ、死んじゃったぁ、しや、っ、ゆき、しゅいちゃ、ごめなさっ、みゃああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 あ~あ、どうすんだよコレ。って何だお前ら、こっちを見るんじゃない。全く都合が悪くなるとすぐ丸投げしてくる。俺は保父になった覚えはないんだがな。仕方ない。


「白雪、落ち着け。スイちゃんはスイカだからな、赤くてもこれは血じゃないから安心しなさい」


「う?うにゃっ? す、すいちゃ、痛く、ない?」


「あぁ。スイカだからな。白雪はスイカって知ってるか?果物で甘くてみずみずしい食べ物だ」


「たべもの?……すいちゃん美味しいの?」


「あぁ、でもこのスイカはこのままじゃ傷んでしまうな」


「にゃ!!すいちゃん痛いの?!」


 ……傷み違いな気がするがまぁいい。


「あぁ、白雪が食べないと傷むままだろうな」


「にゃ?食べたら痛くないの?」


「あぁ。スイちゃんはな、本当は白雪に早く食べて欲しかったんだよ。白雪が大好きだからな。美味しいうちに食べて欲しかったんだろう。だからこうして食べやすいように割れてくれたんだよ」


「そーあの?」


 白雪が確認をするように聞いたシマとアホクロが「そうそう」と言いながらぶんぶん頷く。もげるぞ。

 二匹の同意を得て、白雪は恐る恐る割れたスイカの赤い部分を舐めた


「にゅうぅぅ~~~~~!!!!!!!」


 目がキラキラしている。親友は甘かったらしい。その後みんなでスイカを食べた。

 欲張って多く食べたクロが腹を冷やしていた。情けない。傷口を踏んどいた。




 8月7日 曇り

 そろそろシマ等に色々教えなくてはなと思ったが、暑いので止めにした。クロの正体を知ったら飛び上がりそうだ。

 手記も暑いから今日でやめにした。

 一週間書いたからな、三日ともたないどこぞの坊主よりかはマシだろう。上出来だ。

 今日も焼き鳥は旨かった。 





 以上だ。 



 作中《裏》は内容が童話では無い為、文学のカテゴリーにて投稿致します 

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― 新着の感想 ―
[良い点]  以前にも白雪の可愛らしさにきゅんきゅんしたのですが、今回はさらに上をいってもうメロメロです。ちょっと涙我出てくるほどかわいかったです。  登場人(猫)物たちがみんないいですが、ピュアな白…
[一言] はじめまして。よんと申します。 え、何コレ? すごく面白いんですけど! >暑い、暑い、暑い。死ねる。 ここでいきなりハマッちゃいました。他作品も読ませて頂きますね。
2015/09/13 19:31 退会済み
管理
[良い点] 今回は、ミケさん視点のお話でしたね! アツアツの太陽のもと、ひねくれた日記を書き続ける、ミケさん。でも実はじっと仔猫たちを見続ける、優しいお兄さん。 ミケさんのひねくれっぷりと仔猫たちのキ…
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