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少年は玉座から世界を見守る  作者: ナットレア
一章 イストへと降り立った神
4/22

1 プロローグ(1)


 今日の修行を終え、今は宿代わりの洞窟に戻る途中。私は晩御飯に使う木の実を採取しながら歩いていた。


 ドサッ!



「?」



 そんな時、洞窟の方から何かが落ちるような音がした。何だろうと思って駆けつける。落石の音ではないから入口が埋まったなんてことはないだろうと思っていたんだけど・・・



「人?」



 落ちていた、というより倒れていたのは人族だった。仰向けに倒れている。何をするにも近づかないとと思って近寄ってみると、すごいイケメンだった。目は閉じているけどおそらくこの世界で1位2位を争うレベルなのでは?



「ん、んぅ・・・」



 おっと鑑賞は後にしないと。一先ず息はあるみたいだし、熱はない様子だわ。う~んでもここは秘境と呼ばれていて通行にも使う必要がないからまったく人は入ってこないんだけど・・・ちょっと怪しいけどお父様に聞けばわかるでしょ。一先ずこの人を中に運びましょう。もし目覚めなかったらもうすぐ夜になって冷えるしね。



「すぅ・・・すぅ・・・」



 寝ているみたいだからこのまま運んじゃいましょう。もしかしたらこの人が私の運命の人かもしれないし、優しくしないと。


 私は懐から魔導書を取り出し、1枚のページを千切ってマジックを発動する。



「〈レビテーション〉」



 対象を浮かばせる魔法をこの人族にかけて洞窟の中に戻った。




――――――――――――――――――――




「ん・・・んぅ?ここは・・・」



 目が覚めると洞窟の中だった。蝋燭の火が照らすむき出しの岩肌、奥まで続く通路、背中に敷かれた藁束。誰かがここに運んできてくれたのかな?

 とりあえず起きようか。



「さて、話通りならここはイストだが・・・とりあえず、『ステータスオープン』」



 うん、問題なく開いた。そういえば無限収納にいろいろ入ってるってことだけど、ふむ、これをタッチすれば見えるのかな?と思いステータスのマジック欄にある『無限収納』をタッチする。すると、




無限収納

 魔刀『絶無(ぜつむ)

 小太刀『花見月(はなみづき)

 神糸のパーカー×10

 神糸のシャツ×10

 神糸のズボン×10

 神糸の靴下×10

 神糸の下着×10

 頑丈なブーツ

 頑丈な冒険靴

 白金貨10枚

 金貨10枚

 銀貨10枚

 銅貨10枚

 鉄貨10枚

 魔法瓶

 容量拡張バック

 鏡

 受話器

 レポート用紙×100000

 ボールペン×100




とおそらく入っているものの一覧が出てきた。衣食住の衣は保障されたな。硬貨はどれだけの価値があるか知らないがこれだけあればしばらくは暮らせるだろう。

 ここがどこかも分からない以上持ち物の把握は絶対だな。次はそれぞれの特徴を見てみよう。道具の詳しい説明も名前をタッチすることで見えるらしい。




魔刀『絶無』

 斬りつけた対象の魔力を奪い、刀身を修復する。

 所有者:シンク・カミヤ


小太刀『花見月』

 斬りつけた対象の血液を奪い、刀身を修復する。

 所有者:シンク・カミヤ


神糸の服類

 神界に存在する素材を使って作られた服。丈夫で長持ち。〈清潔〉〈防汚〉の効果が付いている。

 所有者:シンク・カミヤ


頑丈な靴

 ただひたすらに頑丈な靴。壊れることはない。

 所有者:シンク・カミヤ


魔法瓶

 魔力を流すことで任意の飲料を中に生み出す水筒。〈清潔〉〈防菌〉〈保温〉の効果が付いている。

 所有者:シンク・カミヤ


容量拡張バック

 無限ではないがかなりの容量を持つリュック。丈夫で長持ち。

 所有者:シンク・カミヤ


 全身が映るほどの鏡。ガラス製の物は貴重。

 所有者:シンク・カミヤ


受話器

 女神イストワールと眷属が会話をするための受話器。神器。

 所有者:シンク・カミヤ


レポート用紙、ボールペン

 レポートを書くための道具。書き終えると自動で神界へ送られる。神器。

 所有者:シンク・カミヤ




 とまぁこんな感じだった。防具がないのが心配だが武器があるだけでも十分か。魔法、マジックも使えるらしいしな。


「あら、起きたのね」


 確認を終えてさてどうしようかと思ったちょうどその時、後ろから声をかけられた。女、それも同い年くらいの少女のものだと思う。



「君が俺をここに運んだのか?」


「ええ、洞窟の前で倒れていたから」



 やはりここは洞窟の内部なのだろう。お礼を言うために後ろを振り向く。



「「・・・」」



 そこに美少女がいた。しかも狐の三角な耳がついてる。金の長い髪は後ろへ流し、色白の肌に強調された輝きを放っている。唇はぷっくらとしていて血色がよくみずみずしい。少しだけ釣り上がった茶色の瞳は何故か驚いたように開かれている。体型は服のせいでよく分からないが胸はデカい。巨乳一歩手前くらい。服は巫女服だ。白衣、緋袴、千早、足袋、下駄。日本で見た巫女服だよね、これ? そして尻尾。どこから出てるのかは知らないが後ろに生えているそれは髪と同じ金色で先のほうが少し茶味がかっている。

 ふむ、藍がいなかったら一目惚れしたかも。結構タイプだ。ところでなんで目を見開いているんだろう? 頬も少し赤いし。



「おーい、大丈夫か?」


「だ、大丈夫よ!」



 なんか怒鳴られた。よく分からん。



「すまないが聞きたいことがあるんだ」


「え、ええ。分かったわ。でもちょっと待って。先にご飯を食べましょう。お父様が待っているわ」


「おーけー。確かに腹減ったしな」



 起きたばかりだというのに確かに空腹を感じている。倒れそうなほどではないが食事があると言うなら頂くことにしよう。




 狐耳少女の後についていくと広めの空洞へ出た。そこはかなり生活感漂う空間になっている。地面にはカーペットが敷かれ、壁となる岩肌にはランプがいくつか掛かっている。食器棚らしきものや本棚もある。そしてそれらと真ん中にあるテーブルはおそらくかなり高級品だと思う。なんとなくだけど。

 そのテーブルの席についている一人の男性。狐耳があることから彼がこの少女の父親だろう。



「ようこそ、こんな場所で済まないが歓迎しよう」



 温和そうな顔で彼は言った。



「こちらこそ、助けて頂いたようで。ありがとうございます」



 礼には礼を。



「ではイズモ、さっそく飯にしよう。持ってきてくれ」


「はい、お父様」



 ほう、この少女はイズモっていうのか。日本っぽいな。その格好といい、名前といい。



 席につき待たせてもらうこと5分ほど。イズモは俺たちが来た道とは違う道に入っていったが料理を持って戻ってきた。どうやらあっちがキッチンみたいだ。



「では、頂くとしよう」


「「「いただきます」」」



 こっちにもいただきますの文化はあるんだな。まだ起きて数分だから何とも言えないが日本と共通点が多い。レポートに書いておこう。



「食べながらで悪いがいろいろ話そうか」


「ええ、こちらとしてもそのほうがありがたいですね」



 母さんからいろいろ聞いてきたけど現地人でしか知らないような細かいこともあるだろうしな。



「一先ず自己紹介からだな。わしはクルト。金狐族の長をしている。そちらは娘のイズモ。今は巫女見習いだ」


「イズモです。よろしく」


「そういえば名乗らずに申し訳ない。俺の名前は神谷真紅。こっちではシンク・カミヤだ」



 そこから互いに質問タイムに突入した。



「金狐族とは?」「幻獣族の一種族だ。幻獣族は全部で10種族いる」


「こっちではと言っていたがどこから来たんだ?」「あー、かなり遠いところからとしか言えないですね」


「許嫁や婚約者はいるの?」「う~ん、彼女ならいるけど。俺の目的はその彼女と妹を探すことなんだ」


「洞窟の前で倒れていたのもそれが理由かい?」「まぁそうですね」


「ここはどこなんですか?」「ここはラミエール王国の東に位置する広大な森、通称通わずの森。現れる魔獣らが強すぎて誰も通らないことと、それ以前にここはどこへ行くにしても通る必要のない森だからという意味らしい」


「何も持っていないようだが?」「あ~、う~ん、まぁいろいろありまして」


「通貨単位を教えてほしいのですが」「そんなことも知らないの? 通貨には7種類あって、価値の低いものから鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、紅貨、黒貨。だいたいリンゴ1個が鉄貨1枚くらいね。で、10枚ごとに価値が上がっていくようになっているわ」


「(リンゴがあるんだ・・・)二人はどうしてここに?」「イズモの修行だよ。我々幻獣種は神に最も近い者と言われていてね、神の代弁者たる巫女になるのが族長の娘の基本なのさ」


「その修行は何をしているんですか?」「主に舞いね。舞いを奉納することが多いから」


「わしはその付き添いでね。今は毎日暇を持て余しているよ」「それでは一つお願いがあるのですが――」



 そんな感じで終始話していた。テーブルに所狭しと並んだ料理はどれも美味しく、話をしながらでもパクパクと食べてしまった。

 俺の素性はまだ明かさないことにした。神に最も近い者と言われているならおそらくこの二人は気付いているんだとも思うが、何があるか分からない以上まだ言えない。

 そして俺はクルトさんに色々と稽古をつけてもらうことにした。本人も暇をしていると言っていたし、俺はスキルはあるが実際には剣も握ったこともない。ならばと頼んでみたんだがあっさりオッケーを貰った。自分で言うのもなんだが俺ってかなり怪しいと思うんだが?それを二人に尋ねたら、



「わしたちにはまだ言えないんだろう?なら話してくれるまで待つとするさ。時間はいくらでもあるからな」


「これからは一緒に暮らすんだからいずれ話してくれると思っているわ」



 と言ってくれた。ここまで親切にしてくれるのならば、俺もできうる限り早く話せるように、助けてくれた恩を返すために頑張ろうと思う。



 さっそく明日から稽古を始めることにしてもらって洞窟内を少しだけ案内してもらった。自分の部屋(?)としてさっきまで寝ていたところを使っていいらしい。

 ここがイストなのは間違いないだろう。でも月が二つある光景ってのを見てみたいなと思い一度外へ出る。

 目の前に広がる森と洞窟のある崖のわずかな隙間から星空を眺めることができた。そこには聞いていた通り、二つの月が浮かんでいる。イエロームーンとブルームーン、なぜ英語なんだろう。



 それよりも、もうすぐだ。本当は今すぐにでも探しに行きたいがここでは自殺行為。まずは俺自身のレベルアップから始めよう。そうしなければ、守れるものも守れないから。

 今、二人が何をしているかは知らないが必ず、必ず見つけ出してやる。



「待っていてくれよ、藍、蒼葉。もうすぐ会えるからな・・・」



 決意を新たに、俺はこの地で生きていくことを誓った。

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