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少年は玉座から世界を見守る  作者: ナットレア
序章 ある世界の終わりとはじまり
3/22

3 イストへ、二人に会いに


「一つずつ聞いていく。まずは、なぜ俺なんだ?いや、イストとやらへ行くことに不満はないが」


「あなたは私を見つけられる数少ない人間の一人ですから」


「?俺はここに来るまであんたを見たことはないぞ?」


「いえ、見つけてくださいましたよ。〈女神イストワールの誘い〉というゲームを御存じでは?」


「ああ、それなら知っているが・・・それがどうかしたのか?」


「私の名前はイストワールです」


「?・・・ああ!つまりはあのゲームを見つけたってことがあんたを見つけたってことになるんだな」



 思い当たる節が無きにしも非ずだ。あれを作った会社は他にゲームを作っていないしいつも人はいなかった。広告も見たことがなくリンクもなかった。・・・あれ?俺はどうやって見つけたんだろう?



「パソコンのアドレスにメールが届いたはずです。そこから飛んだのですよ」



 またナチュラルに人の考えを読んでからに・・・

 そういえばパソコンを買ったばかりの頃になんかあった気がする。



「それだけでなく、さらにあのゲームをクリアして私に出会いましたよ。姿は見せていませんが」


「ああ! 確かにクリアしたな。ネトゲってこんな簡単なのか?とか思ったよ」


「いえいえ、あれはあなたのような人種には簡単になるようにできているのですよ。それこそが眷属たり得る証であり、私と波長の合う人間である証でもあるのですよ」


「あんたと波長が合うとどうなるんだ?」


「神になれます」


「・・・は?」


「神になれます」



 いやいや、聞こえてるって! 神になれるんだろ?!



「ちょっと待て、じゃあ何か?俺は神にでもなるために眷属にされるのか?」


「いえ、順序が逆ですよ。神になったから眷属になるんです。新しく神になった新神にすぐ世界の管理を任せるのは無理がありますからね、先輩に教わり、やがては自分の世界を一人で管理し、新しく世界を創造し、それも管理し、同じように眷属を作り出すのですよ。それに言いました。ここは神界。神の名を冠する者しか入れない場所だと」


「つまり、ここにいる時点で神になっていると・・・?」


「ええ」


「・・・はぁ。特に不都合があるわけではなさそうだしいいか」


「潔しです」


「どうせもう人間には戻れないんだろう?それに眷属になってイストへ行けば藍と蒼葉に会えるかもしれないからな」


「その通りです」


「じゃあ次の質問だ。俺以外に眷属はイストにいるのか?」


「いいえ、イストにはあなただけです。他の世界にはそれぞれ眷属がいますが」


「分かった。あと二つ、俺がイストでやることは?」


「基本は好きに生きてください。ただし世界を壊さない方向で。気付いたことがあればレポートにまとめ、何かあればお渡しする電話で私に連絡してください。その他私が見た時に何か問題があれば同じように電話で連絡します。また二年に一度、眷属全員を集めて会議を行います。レポートはその時に提出を」


「藍や蒼葉がもし死んだりしたら壊すかもしれないんだが」


「その時はその時です。あなたを私が止めますのでご安心を」


「・・・すまない。次が最後だけど、どうして藍と蒼葉をイストへ送った?」


「あなたにはもともと目を付けていました。私の眷属にこれ以上相応しい人間はいないと。普通に生活していたあなたには分からないかもしれませんが。それ故に時たま覗いていました。まずは四年ほど前、あなた方の親が亡くなったときはすでに輪廻の輪へと魂が戻った後だったので何もできませんでした。あなたの悲しそうな姿に私まで悲しくなってしまうほど、私はあなたを気に入っているのですよ。そして一年半ほど前。三人で歩いている様子を見ていました。そしてあの事故が起きました。あなたの精神は壊れてしまう。そう思った私は二人の魂を輪廻の輪へ入る前に呼び寄せました。しかし元の世界に戻すわけにはいかず仕方なく私の管理する世界で一番安定し、なおかつ眷属のいないイストへ送りました。その後はあなたを支援しました。いろんな人間をあなたに近づけ精神を癒そうとしました。これ、干渉のし過ぎで厳罰ものなんですけどね。そのかいあってかあなたは半年前にほとんど回復、今日ようやく呼び出すことができたという訳です。ですから実はかなり前からあなた方を知っていて、お二人をイストへ送ったのは全て、あなたのためですよ」


「・・・そうか、ありがとう」



 なんだろう、とても恥ずかしいんだが。



「もういいですか?」


「ああ、聞きたいことは聞けた」


「そうですか。ではこれからあなたには眷属兼私の秘書としてイストへ降り、世界を管理していただくことになります。そこで一つ、お聞きします。あなたはイストの生活を楽しみたいですか、それとも事務的に管理するだけでいいですか?」



 秘書ってなんだとも思ったが今更些細なことだと割り切る。それにそんな質問、藍と蒼葉がいる限り決まっている。



「愚問だ。楽しむに決まっているだろう」


「ふふふ、あなたならそう仰ると思ってました。では降ろす際にいろいろとつけておきますね」


「? ああ、そういえば聞いてなかったけど、イストってどんなとこだ?」


「地球のように球状の星です。一日は24時間、10日で1週間、3週間で1カ月、12カ月で1年。月に当たる衛星が青色の物と黄色の物の2つ、太陽に当たる惑星は1つ、名称はそれぞれブルームーン、イエロームーン、サン。人の手の入っていない土地が多く未踏の地も多々あります。そして地球と最も違うのは、魔獣や魔物と言ったモンスターの存在と魔法、マジックの存在です。簡単にまとめると、剣と魔法のファンタジーな世界というやつです」


「じゃあ、あの〈女神イストワールの誘い〉みたいな世界ってことか?」



 それならまたいろいろと質問があるんだが。



「そう考えて頂いて構いません。あのゲームと同じようにステータス、レベルが存在します。ただ、ステータスとは名前、年齢、種族、職、スキル一覧を言います。人間にはレベルは見えません」


「ステータスを確認するにはどうすればいい?」


「ステータスオープンと言えば自分のモノが見えます。目の前に半透明の液晶画面が現れるのでそこに映されます。もちろん他人には見えません」


「そうか。じゃあ、『ステータスオープン』」




シンク・カミヤ 18 神族

(レベル 1)

ジョブ

 神の使徒

ユニークスキル

 能力強奪

 神眼

マジック

 天賦の才(魔法)

 超回復

 無限収納

アーツ

 天賦の才(武術)

アビリティ

 隠蔽

 言語理解

 強運

称号

 (神の眷属)




「それが今のあなたのステータスです。各スキル、称号の効果はスキル名、称号名をタッチすれば見えますよ」



 完全にゲームだな・・・なんか強そうなスキル構成だし。こういうのをチートっていうんだろう。



「確認は向こうに行ってからするよ。スキルの習得条件は?」


「何度も反復することでスキルを習得できます。それにかかる時間や回数はレベルやスキルの種類によって変わります」


「レベルアップ条件は?」


「何かしらの経験を積むことです。戦闘、訓練、読書、家事、商売など何でも構いません。ただやはり上がり方というものがあり、戦闘のほうが早くレベルが上がります。逆に家事などの日常的に行う行為はかなり遅いです。何を経験したかでどの能力値が上がるかもおおよそ決まっています。例えば読書をすれば賢さ、魔力量が上がります」


「つまり、レベルを手っ取り早く上げるだけなら実戦を中心にしていったほうがいいってことだな」


「レベルは経験を積んでいけば自然と上がるのであまり考えなくていいかと。もちろんレベルが上がるにつれて必要な経験量も増えていきますが。

 あ、あとレベルが100に達した場合、種族が進化します。あなたは進化しないですよ?しようがないですから」



 進化要素もありとか・・・恐ろしいな。



「その点は安心していただいて構いません。現在イストで確認される最高レベルの人間は86。それももう動けないようなお年寄りの方ですから」



 つまりは進化はまだしてないから安心しろということかな?ならゲームの中に存在していたハイエルフとかもいないのかな。



「まだいないですね。寿命の関係で種族によってもレベルアップに必要な経験量が変わりますから」



 確かに寿命が短い種族と長い種族がレベルアップに必要な経験量が同じだったら長い種族が世界を支配しているだろうな。



「もうよろしいですか?」



 俺は答えの代わりにもう一度じっと女神イストワールの顔を見る。この神がこれからは俺の上司だ。


 ちなみに話している間はずっとこの神に抱きしめられていた。


 だから感じたんだ、それ(・・)を。話している間ずっと。


 俺をあの世界から連れてきたのは確かにこの神だ。少し怒りもあった。だが今ではそれも霧散してしまっていた。



「ではあなたをイストへ送ります。あちらで必要そうなものはあなたのスキル『無限収納』の中に入っていますので」


「ありがとう。じゃあ、そろそろ行くよ。最初のキス未遂は何も言わないでおこう」



 なぜなら、あの世界で俺を物心ついた時からずっと守っていてくれたから。それに関して聞きたいことはたくさんあったけどこれからはいつでも会える。それならば、また会えることを感謝し、今回はこの言葉をこの()に贈ろうと思った。



「またな、母さん(・・・)。いってきます」



 その言葉にその神、もとい母さんは一瞬驚いたがすぐに満面の笑みになって、



「ばれてしまいましたか。いろいろ話したいですが、私もこう言っておきましょう。行ってらっしゃい、真紅」



 俺を送り出してくれた。

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