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第3話 電気コケシ


 今朝は朝から社長の話を聞いているだけでした。ほとんどがテレビの

ニュースの解説です。ボクはいつものようにハイハイって聞いていて全

部話し終わると満足して自分の席に戻ってまたテレビを見ています。


 うーん今日は何をしようかなあ? って考えていたら玄関からお客さ

んが入ってきました。こんにちわあ~、ハハハッ、誰かと思ったら設計

の2人があっどうも! と言ったので知っている人だと思いました。


 大きなテーブルにその人が座ると奥から社長が出てきてケンくんまた

一緒にやろうよ! って言うと、いやあ1人でやるほうが気楽で良いで

すよ、ハハハッと笑うと社長はじゃ、よろしくねと言い自分の席に戻っ

て行きました。


 奥から設計の2人が来て大きなテーブルに座ると、ケンさんがケース

からジャンピングバッタを出してきて並べました。中のネジのしめかた

が強いと転んじゃうし、弱いと飛ばないから精度の良いネジ回し買っち

ゃった、それでうまくいったよ! って。


 電気の木森さんがアイシーの納期どうなのよ? って聞くとケンさん

は工場長と居酒屋で一杯やったら優先的に作ってくれる話になったから

大丈夫よ! と言いました。添山さんはじゃあとりあえず1000個作

ってよ、それで売れかたをみてから追加で注文するからさって。


 するとまかせなさい! ハハハッと笑ってるケンさんでした。じゃあ

って言うと帰って行ったのでケンさんって外注さんですか? って聞く

と、小声で元は社員で製造担当だったけど、社長とあわなくて一人で独

立したのよって教えてもらいました。


 そうか、作るのはケンさんにやってもらうのか。どこで作っているの

かやっとわかりました。ジャンピングバッタ売れると良いなあ・・・・

 席に戻ると設計の2人は次の電気コケシの開発を始めました。ボクは

どんな形になるのか想像をふくらまして考えたけど思いつきませんでし

た。いったいどんなすごいコケシなんだろうなあ、アイシーが入ってい

るのかなあ・・・・・


 そんな想像をしながら天井をじいーっと見ていたら、社長が小走りに

来て、大変だ、事件だ! って言いました、ボクは何ですか? って聞

くとパソコンの画面をボクに見せると、ライバルの競争相手の会社が倒

産したよ! ハハハーッ! と嬉しそうに言いました。


 話を聞くと、どうやら社長が一番きらいな人がやっていた会社らしく

、悪口をメチャクチャ言ってました。社長の天敵なんだ、それが倒れた

んだ。社長はあんなやりかたしているから抗議をしていたんだ、会社と

しての姿勢がなってない! って言いたい放題でした。よほど嬉しかっ

たのか、ずーっとボクに話していたらお昼になりました。


 お昼を家で食べてから会社に戻ると、社長はライバル会社倒産のネタ

であちこちに電話しまくっていて、一人で盛り上がっていました。社長

は人の不幸があるとすごく喜ぶ人のようです、今日の社長は良くしゃべ

るしテンションがずっと上がりっぱなしだなあ・・・・


 ボクは机の上のカタツムリライターとジャンピングバッタを並べてじ

っと観察しました。カタツムリさんとバッタさんが仲良く並んでいる、

ボクはクスクスッと笑ってしまいました。カタツムリさんは口から火が

出るし、バッタさんはピョンピョンとジャンプします、わあーすごいな

あー、はははっ・・・・・・


 見とれていると経理の三下さんがボクに電話ですよって言いました。

ボクに電話なんて誰だろうって思って出ると、先日カタツムリライター

を10個買ってくれたお客さんでした。ねえねえカタツムリライターな

んだけどあれまた欲しいんだけど用意できるかなあ? って電話でした


 ボクは何個ですか? って聞くと500個だよある? って言われて

ボクは急に興奮しました。10個の50倍です、いくらになるのか計算

出来ませんでした。ボクはちょっと上ずった声で、あっ、あああっ、何

個あるか調べてから後で電話します! って言うと電話を切りました。


 社長が倒産電話で盛り上がっている前を小走りに通りすぎて奥の倉庫

に入りました。そしてカタツムリライターのダンボール箱を引っ張りだ

すと自分の机まで持って行き、並べて数を数え初めました。えーっとこ

れで100個、200個・・・・ 645個あったあー、500個たり

たあー。


 すぐお客さんに電話すると、えっ、用意出来る? それ欲しいんだ。

デンマークの業者さんからの注文なのよ、この前10個買ってくれたお

客さんで面白いからって大量注文よ! すぐ送れるかな? って言うか

らボクは上ずった声で今日送ります! って返事をしました。


 うーん、あとは金額なんだけどおたくとは昔からの付き合いだし50

0円にならないかなあ? そう言われて思わずじゃ500円で! って

口から飛び出しそうになったけど、だめもとで真ん中の550円でどう

ですか? って言うと、んーじゃあしかたがないか、その金額で良いか

ら注文書メールを確認したらすぐ送って! って言われました。


 ボクは興奮で体が震えて来ました。500個で550円だとえーっと

・・・・ 携帯の電卓でかけると27まん5000えんと出ました! 

はあああ、27まんえんだあー・・・・・ ボクは社長の所に行きカタ

ツムリライター500個売れました! 27まんえんです! って言う

と、あ、そう、それより倒産した会社、あちこちに借金があるらしいよ

、知り合いが200万円かぶったって泣いてたよ、ハハハーッ!


 社長の頭の中はライバル会社の倒産のことでいっぱいのようでした。

ボクは営業の岩口さんのパソコンのスイッチを入れてメールを開くと、

いっぱいのお客さんからの問い合わせが来ているのを発見しました。一

つ開いてみるとカニ切りの見積もり依頼でした。カニ切りってなんだろ

う・・・・


 別のメールを開くと、ホッチギリスという商品の問い合わせでした。

ホッチギリスってなんだろう・・・・ わかりませんがお客さんからの

問い合わせメールがいっぱい来てますが、どれも未開封でした。送信フ

ォルダを見ると返事をした様子も無かったです。


 メールを読んでいたら、カタツムリライターのお客さんからメール着

信来ました! PDFの注文書を確認すると急いでダンボール箱につめ

て宅配便の人を呼んで発送しました。そしてお客さんに電話して今送り

ました! 問い合わせ番号です! って言うと、素早いねありがとう!

 って言ってくれました。


 営業の岩口さんじゃ1ヶ月かかるよ、助かったあ! って言うのでボ

クは嬉しくなってジャンピングバッタも、もうすぐ発売です! って言

うと何じゃそれは? って聞いてきたので説明をするとそれ良いかも!

 サンプル欲しいなあって言われたので何個か送ります! と言って電

話を切りました。


 ボクはその夜、お父さんとお母さんにお客さんから感謝されちゃった

! 金額の交渉もしちゃった! 27万円だよ! って夢中で話をする

と、お父さんが、そんな新人に営業までさせるのか? ってちょっと心

配そうでした、お母さんも大丈夫なの? そんな勝手に値段決めちゃっ

て営業の人から怒られないの? って心配してました。


 その夜、ボクは500個だ、27まんえんだ、500円のはずが駆け

引きをして550円で売れた。昼間のことを何度も思い出してはベッド

の中で顔がにやけてしまい、興奮状態でなかなか眠ることが出来ません

でした・・・・


 次の日ですが、設計の2人がボクのことを呼んだので行ってみると、

机の上には紙とプラスチック板で出来た電気コケシの姿がありました。

電気の木森さんがアイシーと時計の組み合わせが悪くてまだ話せないん

だって言いました。そしてコケシの前に手を出すと手の動きに合わせて

頭が動きました。


 はあああ、うごいたあああああ! 思わず口走ってしまいました。ち

ょっと左右に動いてって言われたのでボクはコケシさんの前で右に左に

反復運動をしたら、初めのうちはボクを見ながら動いてましたが、突然

右回転して止まらなくなりました。


 すると機械の添山さんが、まただ、ギアが外れた! って言いました

。壊れる前まではボクを見ているようでした! って感想を言うと、そ

うなんだよ、人が首を曲げるようにスムーズに動くようにカムが入って

いるんだ! って教えてくれました。すごいなーカム・・・・ カムっ

てなんだろう・・・・・


 見た目は紙とプラスチックの板ですが、だいたいのイメージがわかっ

て来ました。それに開発中の秘密の商品をボクに見せてくれて参加もで

きたのがうれしくって、ボクは社員の一員になれたんだと思うと興奮し

て来ちゃいました。自分の机にもどり天井を見ながら電気コケシさんの

完成した形を妄想していると社長がやって来ました。


 ねえねえ車運転出来るよね、これからちょっと出かけようよ! って

言われました。ボクはハイ! って返事をすると立ち上がり社長からキ

ーを受け取りました。始めての外出です、それも社長と2人で・・・・

 会社の裏にとめてあるミニバンの運転席に座ると社長は後ろの席に乗

りました。


 どこですか? って聞くと、○○駅の近くの会社だよ、道わかるかな

あ? って聞くのでボクは地元だし、バイクであのへんは良く走ってい

たのでわかりますって言うと、やってくれたまえ! って言うのでボク

は行きます! って言い運転を始めました。


 どうやらライバル会社の倒産で社長と同じで嫌っていた会社の社長さ

んに電話してたら来ない? って誘われたらしく、それで行く気になっ

たらしいです、途中で車を止めておみやげのケーキを10個買ってきて

くれと言われたのでボクは車を降りて買いました、そしてお金を払って

後ろの席にケーキを置くと、社長がレシートを経理の三下さんに渡せば

お金返してくれるからって言いました。


 それから10分後、会社に到着すると応接室に案内されました。ボク

は社長のカバンとケーキを持って立っていると、これ皆さんで食べてく

ださいっておばさん社員に言うと、いつもありがとうございますって笑

顔でした。そして待つこと3分、社長さんが部屋に入って来ると、あー

○ちゃんさっきはどうもおー! って嬉しそうでした。


 ボクと社長とこの会社の社長さんの3人で買ってきたケーキとコーヒ

ーを口に入れながら、ライバル会社の倒産の話で盛り上がってしまいま

した。話は良くわかりませんでしたがボクは一緒にはははーっ! って

笑うとさらに話が盛り上がってしまいました。


 悪者が倒れたからこれからはボクたちの時代だね! って話で最後は

終わると社長2人はニコニコで大満足の様子でした。帰り道もあの社長

との話をしっぱなしでボクは運転しながらハイハイって返事をくり返し

ました。そうかライバルがいなくなってこれからボクたちの時代なんだ

・・・・ 話を聞いてるうちにボクも何だか心強くなって来ました。


 会社に戻ると、社長はまたライバル会社倒産の電話をしまくってまし

た。今日は一日電話しっぱなしだからボクの所には来ないなって思うと

少しホッとしつつも、退屈だなあって思ってバッタさんとカタツムリさ

んをいじって遊んでいたら設計の添山さんに呼ばれました。


 ちょっとまた動いて! って。ぼくは電気コケシさんの前で左右に動

くとコケシさんがスムーズにボクのほうを見てくれました。はあああス

ムーズだああああ・・・・・ そう言うと、うまい方法を思いついたん

だよ、カムにスポンジをかませて振動をおさえたんだ・・・・ ボクは

うれしくなって添山さん頭良いですねえ! って言うと、いやあ~それ

ほどでも、ハハハーッ! って笑ってました。


 ボクはコケシさんの前で右に左に動きました、時々フェイントをかま

すと一瞬どうして良いのか悩むんですよ、その動きがおかしくってボク

は、はははーっ! と笑いながらコケシさんの前を右に左に動き続けま

した。うんいい! もういいよありがとう、そう感謝されました。


 その日の夜、夕食を食べながらお父さんにライバル会社の倒産の話と

、社長と外出して倒産話に盛り上がった話をしたら、お父さんはそれっ

てカバン持ちだよって言いました。社長の子分役だよ、それに運転まで

させられたのか? っておもしろくない顔でした。


 でもボクは電気コケシの開発も手伝っているんだ、今日なんかスムー

ズに動いたんだよ! って夢中で話をすると、お母さんが泣きそうな声

で、そんないかがわしいオモチャなんか作ってえーって動揺し始めたん

です、お父さんはお前の会社はいったい何やってるんだ? ふざけた物

ばかり作ってって文句を言うから、ボクは違うやい! って言うと席を

立って自分の部屋にこもりました。


 お父さんもお母さんもボクががんばっているのが気に入らないんだ・

・・・、その日はそんなことばかり考えてなかなか夜眠ることが出来ま

せんでした。


 次の日ですが、昨日よりテンションは低かったですが相変わらず社長

は電話をしまくって終わるとボクの所に来て、倒産ネタをしゃべるので

ボクはハイハイって話を聞きました。それ昨日も聞いた記憶があるんだ

けど、でも話し終わると満足して自分の机に戻って行きました。


 お昼過ぎると3日間来なかった営業の岩口さんがウエッ! と言いな

がら会社にやって来ました。席に座ってパソコンのスイッチを入れると

、おにぎりを食べながらフリーセルを始めました。ボクは近くに行くと

岩口さんに、カタツムリライター500個売れました! って言うと、

あっそう、じゃ請求書作って送っといてって言われました。


 ボクはメールの問い合わせがいっぱい来てるんですけどって言うと、

そうだっけ? って言うのですいません、ちょっと良いですか? って

マウスをうばってメールを開くと、ほらこんなにって見せました。する

とあー本当だ、来てるね・・・・って。 ボクは欲しいってメールも来

てるから返事したほうが良いんじゃないですか? って聞き返すと、じ

ゃ返事しといて! って言うとまたフリーセルを始めました。


 ボクは席に戻ると夕方に岩口さんが帰るのを待ちました。じゃ私は今

日はこれでって言うから、ボクはパソコン借ります、メールしときます

って言うと、ウエッ! と言い帰って行きました。


 急いでパソコンのスイッチを入れるとメールを開いて読みました。そ

して返信をしました。何十通とあって良くわからない商品の物もありま

した、社長に聞いてもそんなのあったっけ? なんて言われました。ボ

クは商品のことが何もわからないんだ、調べないといけないなあと思い

ました。


 その日は始めて残業を2時間しちゃいました。あーなんか忙しいって

いいなあー、もっとやろうと思ったけど設計の2人が帰ると言うのでそ

の日は帰りました。明日から棚の売れ残り商品の名前と金額と数を数え

ないといけないなって思いました。


 そして明日からの仕事のことを考えたら興奮して夜眠れなくなってし

まいました。



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