06
日差しはアスファルトにより反射されて、現在の気温は29度。太陽が真上にあるから日陰は少ない。だから、とにかく暑い。
「メイザーさんまだかな」
ソウタはそう言って、待ちきれないのか東京タワーの脚の周りを走りはじめた。
(落ち着きのない人だとつくづく思うよ、いつになったら落ち着くということを学ぶんだろう……そもそも、学ぶことができるのかっていう問題か)
「午後零時二十秒前」
トウヤは、電波時計を見て言った。どうやら、トウヤも待つことに飽きてきたようだ。
「もう、あっついよぉ」
みんな制服で来ているが、日焼けを気にしたスズはそれに加えてキャメル色のブレザーも着てきた。「気温よりも日焼けを気にするとは、頭狂ってる」と男子組の誰もが思った(だろう)。
そして、12時ぴったりに黒い大型車が歩道に寄せて止まった。
そして、中からは灰色の制服を着た、ショートヘアの女の人が出てきた。
「はじめまして、私はファクター……メイザー・ジグソーのメンバーっていう区分かな」
少し引きつった笑顔のその人は、行方不明の報道で出てきた伝説の先輩である瀧川彩香先輩の写真の表情に少し似ていた。
(もしこの人がアヤカ先輩なら、助けてあげないと……でも、ソウタ、トウヤ、スズを危険にさらす訳にもいかない……どうしよう)
カイチは正義感が強すぎるために、余計な心配をしている。
「えっと、まずはこの車に乗って」
そう言ってアヤカに似たファクターという人は黒い大型車に4人を誘導した。
(ファクターって、因数分解の英語版だったっけ、数学的なことやるのかなぁ……どんなことになっても、がんばるしかないか!)
数学が苦手で英語は得意なカイチは、そんな考え事をしていた。
◇
橙色の鉄の柱の周りを走る、幼なじみでありクラスメートである彼は、笑っていた。
(これは、幼なじみのソウタとスズ以外は知らない話……
ソウタは、小さい頃からたまに未来が見える……それでパズルを解くことも前はあった
でも、一年前から未来の光景を見た後は、過去の思い出したくない記憶を見てしまうようになった
それで、未来を見ないようにしていたが、無意識に見てしまうことがあった
そういう時は、つらいことをわざと笑ってごまかしている……今もきっとそうだ)
ファクターに呼ばれて車に乗る時に、ソウタの目元には微かに涙の跡があった。
(ソウタ、これから何があっても今の状態で耐えられるの?今のメンタル弱い状態で大丈夫なの?)
黒い車はいつのまにか高速に乗って墨田区に向かっていた。
ソウタの目の中に映ったのは……