02
ガラス張りのビルの中に入り、私達は薄暗い階段を何度も上がらされて、客室みたいなところに入らされた途端、白い煙が視界を遮るようになっていき、意識が朦朧として……
その後、気づくとコンクリートで囲まれている部屋にいた。ハルトとキョウスケもいる。隣で寝ている。
しかし、気がついたのは私一人だけ。二人は起きる気配がしない。
仕方なく、二人が起きるまで部屋を散策しようと決めた。
灰色のコンクリートで囲まれていて第一印象が殺風景なこの部屋は、開かないドアが一つと上に5インチくらいの何かのモニターが一つ。それと、某林檎社のi○ad的な薄型で黒いタブレットが一つ。それ以外は何もない。
部屋の調査が終わっても一緒に行動していた二人は起きない。起きる気配もまだしない。
暇になるのが嫌になって、二人が起きるまでというのを諦めて起こす。それしか今の私にできることがないと考えた。しかし、それでも起きない。踏み潰しても、耳元で大声を出しても。
「ようこそ、我が社へ」
女の人の声が聞こえてきた。イ○ン(ジャ○コ)の迷子放送などの呼び出しをする人のような声だ。
「メイザー・ジグソー……?」
「我が社の中の組織でございます。そして、あなたは今メイザー・ジグソーの本拠地にいます」
淡々とした声が部屋のコンクリートに響く。
メイザー・ジグソーの本拠地と聞いて、出口はあると分かった。出口はあるが、出方が分からない。
「で、どうしたいんですか?子どもを誘拐して……ロリコン・ショタコンでもこれはやりすぎですよ、れっきとした犯罪ですよ」
「脱出出来たらあなたの家にお帰りになられても結構です……脱出出来なかったら、違う場所へ帰って頂きます……ちなみに、そこの二人は違う場所へお帰りになられました」
ハルトとキョウスケが……?!
女の人は、いたって冷静だった。まるで、日常茶飯事のことだというように。
当然のことだと言うように。
二人の命は、私が起きる前にこの世から消え去ったらしい。そして、私には二人の分まで頑張らなくてはいけないという極度のプレッシャーがのしかかっている。
「私を殺して、何の意味があるんですか?私は、運良く世界に行って、一つも成績を残さずに戻ってきたんですよ、殺すのは二人だけでも十分じゃないですか」
「この部屋からの脱出方法はパズルを解くこと、そこにあるタブレットに入っているパズルソフトのパズルよりこの部屋の鍵を見つけてください」
女の人は、質問に答えなかった。マニュアル、もしくは台本を読んでいるかのような言葉だった。
仕方なくタブレットを手に取る。そして、ロックを解除する。一応電池はあるということを確認し、パズルのソフトを探す。
しかし、パズルに鍵があるというのはどういう意味なのだろう。解きおわってたら開くのか、パズルに出てきた文字が鍵となるのか、パズルの答えの図形が鍵となるのか……
やっと見つけたソフトを開き、パズルを始める。
始まってから、「制限時間10分」と例の女の人が言った。しかし、制限時間を超えた場合にどうなるかは言わなかった。
子どもを殺すなんて、大人がやっていいのか。少子化の世の中でもっと子どもを減らすのか。全く、世間知らずだと思ってしまう。
タブレットに表示されたのは、ジグソーパズルだった。一番有名なのにもかかわらず、一番苦手なパズルだ。
でも、これは少し簡単だった。
解き終わったら、またパズルが出てきた。今度は迷路……!?
まさか、あのドアはボイスキーというのか?!
ドアに向かって、ちょっと発音良く言ってみる。
「メイザー・ジグソー」
案の定、ドアは開いた。
ドアの外は、ビルの廊下。どうやら、さっき入ったビルの違う部屋だったらしい。そして、ドアの横には黒いスーツを着てサングラスをかけマスクをした不審者以上に怪しい男の人が何人かいた。
「どうしたんですか?」
その人達に言ってみるが、聞こえてくるのは息の音だけ。何の反応もない。ロボットのように見える。
私が本当にロボットなのか確かめるために外に出ると、その人達は中に入り、ハルトとキョウスケを連れてどっかに行った。
必死になって追いかけたが、男の人達は人気テレビ番組「逃○中」のハンターのように逃げていき、追いつくことは出来なかった。
気づくと、自分は迷子になっていた。
周りには、誰もいない。出口はどこか分からない。自分がどこにいるのかも、さっぱり分からない。
探検をする。
さまよって行き着いたのは、「社長室」というプレートがついた部屋の前。ここに入れば、ハルトとキョウスケがどこに行ったのかが分かる気がした。