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村から始まる異世界王国誕生物語  作者: arandora
異世界でのチートは少年ではなく召喚生命体でした
8/16

7話ミレイ登場!

 最後の穴の入り口に来た俺達を待っていたのは何処から見ても戦場の様な光景だった。


 しかし、この光景からこれまでの光景と照らし合わせ、この場所で<マジカルアーツクロニクル>の星1つのカードであるミレイが封印されている可能性が一際高くなった。


 更に目前の奥の方に棺の様な形の祭壇?もある事から、ほぼ間違いないであろう。


 問題は目の前の門番だが・・・


「なあ、コイツ・・どう思う?」


 と俺が三人に目前の光景に対する意見を求める。


「死神・・でしょうか?まだ入ってないから分からないのか、はたまた目が無いのかは分かりませんが、此方に向いているのに気付いている様子が無いですね。」と美空。


 そう、目の前には先ほどの電気ウナギの化け物と同じような大きさの髑髏顔に黒マントの見るからに死神と言った魔物が居る。


 更に、周囲には戦士の死骸やら髑髏やらで、明らかにこの死神が操る前提の特殊なフィールドだ。


 宗教か何かは分からんが土に十字架を刺していたり張り付けにしていたり、中には白銀っぽい甲冑に身を包んだ美しい戦乙女の様な女性の、胸を槍で貫かれた張り付け死体が有ったり、魔女狩りの様な全裸の女性の張り付けにされた物まで有る。


「しかし、これはかなりエゲツナイ光景ですね。しかも割合で女性の死体が多いのはどういう意図的なのか・・・。相手が男性という前提でしょうか?」


 美空がそんな風に顔を顰めながらその光景を見ていると


「それに、この先の空気とここの空気が明らかに別物だ。これは何かしらの結界の様なフィールドに成ってると考えた方が良さそうだな。・・・ここから全体を焼いてみようか?」


 とガラムが割と卑怯な案を提示してきた。


「・・如何かな・・。もし結界に成ってるとしたら精霊魔法が跳ね返ってくる可能性が有るから、やめといた方が良いかもしれない。それから手だけを入れて魔法を使うのもアウトだ。」


 と俺はその案を渋る。


「・・・確かに、手を入れてしまったが為に即行動って言う魔物もゲームの世界では当たり前ですからね。・・ここがゲームの世界と同じというガラムの意見を信じるって言うのが前提ですが。」


 と美空が俺の意見に乗ってくるが、俺はその言い方を注意する。


 俺はこういう些細な事で仲違いするのが嫌いだ。


「その言い方は俺に対しての見る目が無いと言う言い方だぞ、美空?俺はガラムの道具作りに関しての知識と感覚は信用してるし、信頼してる。それは美空の式神での情報収集の正確さを信頼し、信用するのと変わらない。・・・こういう仲間内の話し合いだからこそ、そう言う言い方はしないのが俺流だ。ガラムに謝れ、美空。」


「・・!!・・ごめんなさいガラム。私では分からなかった違いを見つけている貴方に対する言葉ではありませんでした。許してください。」


 俺に叱られた美空がガラムに向き、綺麗に腰を折って謝罪する。


 その様子に苦笑しながらガラムは俺に向いて


「そう苛めるなよ、旦那。美空も本気で言ってる訳じゃ無いのは旦那も分かってんだろ?」


「それはそうだけどね?けど、少しの擦れ違いで仲間が別れるって言う話はよくある事だ。俺は自分の仲間にした者達の事は、外見もそうだが、中身も気に入って仲間にした。ガラムも俺が顔だけで選んでないってのは知ってるだろ?」


 俺の質問に苦笑しながらガラムも頷く。


「まあな。しかし、旦那が可愛いのにどうしても受けいれられないって言ったアイツは恐らく殆どのプレイヤーからの嫌われキャラだぞ?しかもその性格上、矢鱈強いし粘るしな?あんな奴を味方の召喚体にする奴は物好きも良いトコだぞ?」


 そう、俺が仲間にしたのは全て可愛い者と言う訳ではない。


 勿論可愛い、綺麗なのは条件の最上位だが、それ以上に一緒に行動して楽しい者だけを厳選しているのだ。

 まあ、それでなければカードの枚数も優に500枚を超えただろうが・・


「まあな。ってわけで美空?これで罰ゲームをもう一つ追加だ。まあ、これはガラムに対して美空への罰だからガラムに何かをしてやれば俺に文句は無い。お前ら同士で乳繰り合うのも自由だ。まあ、お前らの相性からしてそれは無いと思うがな?」


「「当たり前だ(です)」」


 俺のからかいのネタをムキに成って返すこいつ等は、本当に一緒にいて楽しい奴らだ。


 まあ、その点では子供っぽいカリンも面白いが、未だ会って殆ど経ってないのでそこまでは信用してない。


 実力に関してのみ多少信頼している位だ。


 リンナに至っては契約をしている所で論外だし、あからさまに何か違和感がある。


 これからの村での生活で違和感をハッキリさせてガラムに伝えれば場合に由っては二人には迷宮下の施設での暮らしも考えさせないとイカン。


「それじゃあ、これからは真面目な話。ホントにどうする?旦那。俺的には結界が張ってあるのを前提として俺と美空が突っ込んで、完全に殲滅した所で旦那に入ってきて貰うってのが理想だが?」


 俺の方を見ながらガラムが意見を述べる。


 更に美空も


「そうですね。まあ無いとは思いますが私たち二人が倒れてしまった時にも啓太様さえ無事なら私たちは復活が出来ますし、丁度私たちの個別の祭壇もある事ですし、復活後に直ぐ再挑戦も可能ですしね?」


 むぅ~、そうなるか・・


 出来れば二人にも安全策を提示したいが・・


 俺の考えられるアイデアの引き出しはそれ程広くない。


「・・・仕方ない。それで行くか。今の状況ではガラムに良い装備を作って貰う程の材料も、設備も無いし。一旦村に戻っても状況は変わらんだろうし。・・よし、二人には悪いが頼む。」


「「了解です!」」


「それじゃー、念のために作戦を聞かせてくれる?声は届くだろうけど、万一の場合は俺も参戦するか、予定通り戻るかの判断をしたいから。」


「分かりました。・・ガラムは何か作戦ある?」


「いや、特にないな。取りあえずあの戦場の感じと死神のセットから考えられるパターンが死霊使い系の物と大規模アンデット召喚系の魔物だから、俺が火の精霊魔法で媒体を溶かしてゾンビの復活を阻止、次いで美空が俺の火を材料に死神に爆炎魔法をお見舞いって所か?」


 なーんだ、流石ガラム。適当でいてもしっかり考えは有る様だ。


「それも良いですが、先ずは貴方と私の合成魔法で一気に目の前の死神を倒したらその後の考えられうる脅威も排除できるのでは無いですか?」


「・・う~ん、其れもそうか。なら、一先ずそれで行ってもし、全体を何とかしないと駄目な魔物なら最初の俺の案で行くって事でいいか?」


 美空の意見にガラムが賛同し、漸く戦闘準備開始となった。


「では、私が貴方の分の風の障壁も構築してから突撃しましょうか。」


「ああ、頼む。」


 そういって、美空が瞳を一瞬閉じて集中し、二人の周囲に薄皮一枚分の風の層が生まれる。


「よし、俺は精霊に火の温度調節と風の向きの調整を頼んどくよ。・・・・・、っし、これでいいぜ。」


 ガラムも準備OKの様だ。


「では、くれぐれも気を付けてな?」


「ああ(はい)!」


 そうして、二人が入口へ入った直後・・・


「----!!」


 声は出てないが、明らかに死神が右手を横に振り、何かを誰かに指示した。


 その直後に地面が隆起し、何かが這い出る様子だ。


 しかし、これも想定内で、美空とガラムはそれぞれ準備していた魔法で死神の行動を阻止するべく攻撃を放つ。


 そして、美空の風魔法を受けたガラムの火の精霊魔法が爆炎を生み、その大きさ3メートル強の大火球が死神に迫る。


 この攻撃に対して、死神は地面から這い出る何かを無理矢理引っこ抜いて前面に展開させる。


 それはなんと形が残っている少女たちのゾンビの物だった。


 しかも、ゾンビとは言っても腐乱死体ではなく、見た目死後数日の綺麗な体であり、その外見も美しい全裸の死体が無防備な状態で巨大火球の犠牲になった。


 そして、爆炎が収まり先ほどの少女たちの死体を見ると・・・


「うっ!・・なんと酷い事を・・。」


「ああ、俺達がやって置いてなんだが・・死体を盾にするとは惨いことしやがる」


 二人とも、綺麗な少女たちの足や手が捥がれた状態の惨状を見て口に手を当てて呻いている。


「しかし、これでハッキリしたわね。」


 突然美空がそんな事を言って来たので訝しむガラム。


「何がだ?」


 美空の核心に迫った表情を見て、更にガラムが訝しげに聞く。・・すると。


「この死神自体には先ほどの火球を防ぐ術は無いという事よ。その為の盾の役割をするのがこの戦場の死体達という事でしょう。それでなくては、態々盾にする必要が無く、仮に死体を利用した大規模アンデット召喚でも今のタイミングなら発動は出来ないという事。・・これは正攻法で攻めた方が痛手は無さそうね。」


「正攻法ってーと、俺が火の精霊魔法で死体を使い物に成らなくして、お前さんが死神に扇魔刀で一刀両断って奴か?」


「ええ、それが一番簡単で早く、痛手も無いでしょう?」


「・・・」


 美空の分析を聞いた上での作戦にガラムは悩みながらも、それ以上に良さそうな案も無い為、それに従う事にした。


「よし、その作戦で行こう。・・で?先ずは俺から死体の整理をするか?」


「そうね、そうしてくれる?私が倒した後でも良いんだろうけど、また邪魔されたら面倒だし。」


「了解。」


「では、ぐずぐずしてるとまた死体を操作されるから、ちゃっちゃとやりましょう。」


 そう言うなり美空が扇を畳み、自分の扇魔刀を作り出す。


 更にガラムも精霊魔法の中でも最上位のこの世界で言えば特一級に指定される威力の広範囲精霊火炎魔法<フレイムノヴァ>を発動する。(大精霊はまだガラムには呼べない。呼べるのはシーワールドの中でも星3つの者達からだ。この世界の成長過程では直ぐにも呼べるようになるかもしれないが・・)


 その間に死神は新たな死体候補としてを張り付けの戦乙女に向ける。


 そうして、死神が手から何かのエネルギー体を死体に填め込むと、直後に死体の胸の槍が消え、戦乙女の目に光が宿り、その狙いを美空へと向ける。


 その後、ガラムのフレイムノヴァで戦場一帯が焼野原の様相を呈したが、何時の間にか戦乙女は消えていた。


 それから美空が防御を失った死神へと扇魔刀を一閃する刹那・・


「ごめんなさいね?これも操られた所為だから、恨まないで?」


 イキナリ現れた戦乙女にそう言われ、何の警戒もしていなかった美空は死神を葬ったと思った瞬間にその事に驚き、違和感から自分の体を見ると・・


 ブシャーーー!!


 扇魔刀に集中させていた為に保護が薄れていた巫女服の風の障壁がいともたやすく断ち切られ、薄皮一枚のみではある物の、肉を断たれ、死体と共に落ちた巫女服の代わりに己の血で衣装を作る結果となっていた。


「危なかったと言うべきですかね?・・さて、これでこのフィールドもクリアできたという事でしょうか?」


 美空が何の恥じらいも無くその血染めの美しい裸体を晒しながら地上に降り立つ。


 その序にガラムも地に降ろす。


 すると、前回と同じようなメッセージが上から届く。


「『これでこの祭壇の封印は解除された、この祭壇スロットに入れられるのはマジカルアーツクロニクルの星1つのカード。他の者は別の祭壇を使用せよ。』」


 そして、このメッセージは俺の頭にも直接入ってきていて


「よし、思った通りだな。もう危険は無さそうだから入るな?」


 そう言いながら入った俺が見た美空は、見て良いのか悪いのかよく解らない格好になっていた。


 全身の血は恐らく美空自身の物だが、それが民族特有の入れ墨の様になっていて、そう言う目で見なければ美しいの一言だ。


 しかし、俺は所詮女好きの男な訳で・・


「ねえ、美空?」


「はい?何ですか、啓太様?」


「傷は直ぐに消えると思うから心配はしてないけど、その恰好は綺麗すぎて目のやり場に困るから、血糊を落として、服を着てくれない?・・・そうだ、ちょっと待ってよ?」


 俺はAIフォンに水の魔法を展開させさせる。


 すると、AIフォンから2メートルほどの巨大な水の塊が排出された。


「・・っし、この中で血を洗い流して?その間にガラムは巫女服の修正。その位は材料が無くても魔力で繋ぎあわせるだけだろうから、簡単にできるだろ?」


 美空に指示した後、ガラムに巫女服の修復を頼む。


「「はい。(ああ。)」」


 そう言って二人返事したのだが・・


 いざ、美空が水の中へ入ると、俺はある事に気が付いた・・


 それは見方によっては完璧に好みの女性の入浴シーンを変質者の顔で覗いている変態。


 まあ、美空自体が何の躊躇もなく裸身を曝しながら水の中へ入っているので傍目にはカップルの順番待ちといった感じであるのだが・・


 この時に啓太の顔を正面から見たら、見られていて、尚且つ見せている美空以外は顔を顰めている位の緩緩になった顔をしていた。


 肝心の美空はその裸身を見られているにも関わらず淡々と言われた通り体の隅々まで華奢な指で血糊を落としていく。


 先ずは胸をプルンと揺らし、腹部に移して股間を撫でる。


 更に太ももの血糊を落とし、後は全体に見て行き、汚れが無いのを確認して水の塊から出る。


 まあ、その頃には血で濁って啓太からは少ししか裸身も見えないのだが、そこは変態フィルターを通して視ていたので変わらないのだろう。


 その証拠に未だ顔が緩緩だ。


 そうして、出てきた美空はそのままでガラムに巫女服を貰いに行く。


「お、何か服を着てないだけで随分と色っぽいな。そこまでの色気なら町で毒牙に掛かる男は多そうだな。」


 ガラムはあからさまに俺の方を向きながら美空に言った。


「何を馬鹿な事を。私が裸体を曝すのは戦闘時のどうしようも無い場合か仲間内、後はプライベートで啓太様のお相手をするとき位です。他の有象無象の輩に見せる程安い物ではありません。」


 その言葉に反応した美空の意見にガラムはニヤッと唇を歪ませ・・


「だってよ、旦那?これはもうやってOKって意味だぞ?ココでやっちまうか?」


 ニヤニヤしながら言ってくるガラムのその言葉を聞いて、俺は苦笑しながら首を振った。・・勿論横に・だが。


「その提案も魅力的だけど、今は服を頼む。どうせ今後幾らでも見る機会は有るからね。慌てたりはしないよ。後、ミレイも加わるし、忙しくなりそうだしね?」


「そういや、そうだな。マジカルアーツの星1つで旦那のお気に入りのユニットはミレイだったな。って言うか、なんで旦那は殆どのゲームのユニットを星の数でそれぞれ一つに絞ってんだ?」


 ガラムの意見に俺は苦笑したが、訂正はしておく。


「それは勘違いだよ。確かに星の数がそれぞれで一つずつに成ってるのは多いけど、必ずしもそうではないよ。中には星が同じでも2体契約してるゲームもあるし。単なる偶然だね。」


「そうなのかー?。。っと、ほい美空。その姿も色っぽいが、旦那の集中力が続かないから大人しく着てくれ。」


「まあ、仕方ないわね。・・それと・・ん・しょっと。・・ん。流石にガラムね。繋いだ感じが全然ないわ。」


「そりゃーどうも。お姫様に褒めて貰えて光栄だね。」


「そんなの、良い仕事をしたら褒めるのは当然の事でしょ?」


「違いねえな。」


 そう言いながら二人はしばし笑い合う。


 この二人も仲がいいのか悪いのか、判断に苦しむ相性だ。


「それと、啓太様?」


「ん?なに?」


「私は森の外をまだ見てませんが、もし外が戦場ならミレイはしばらくここに待機させておいた方が良いのでは?」


「その心配はないよ。幾らミレイでも、ただの村人に戦闘を挑むなんて無茶はしないよ。やるとしても二人相手に2体1でやりたいっていう位だろ。それ例外なら村の為に色々と魔法を使ってくれるはずだよ。根は良い子だし。」


「まあ、良い子なのは知ってますから、反対はしませんが。」


「それに、もしもの場合に備えて村にガラムと一緒に残って貰う予定だって言っただろ?適材適所でその方がいいと思うしね。」


「それは俺も初耳だぞ?まあ、俺は自分の魔道具製作が出来るなら、別に文句は無いがな?しかし、村の技術力はどうなんだ?俺がどうこう言って構わないレベルなのか?材料は旦那に頼むとしても、やっちゃいけない研究をやるのは気が進まんぞ?」


 まあ、ガラムの意見ももっともだ。


 けど、俺も実際の魔道具作りの様子を見てないから答えようがない。


「実は俺も見たことが無いからなんとも言えんが、この世界の技術力は兎も角、村の技術力は有って無いような物だと睨んでる。・・まあ、詳しくはミレイの復活をしてからだ。」


「そうですね。2度手間は流石にうっとおしいですから。少しの違いで逆に時間を取られたら私も嫌です。早速やってください。」


「うん。」


 俺は美空の提案に頷くと、焼かれて平坦になった道をゆっくりと棺に向かう。


 そして、一度気になって棺を開けて覗くと・・


「うわ・・裸のミレイが寝てる。」


 そう、身長は美空と変わらない位の大きさだが、起伏に乏しいスレンダーで華奢な金髪の美少女が寝ていた。


 しかも先ほど呟いた様に全裸で。


 しかも驚く位に色白でなまめかしいつややかな肢体。


 思わず口を覆ってしまったが、他のメンバーには聞こえていないようで安心した。


 しかし、何故裸なのだろうか?


 まあ、それは後で確かめるか・・と、半ば開き直って棺の蓋を閉め、棺のサイドに有るスロットにカードを入れる。


 この時も前2回と同様に想定していたので、魔力を全て持って行かれた後に替えのエネルギーパックに交換するのも忘れない。


 そして、他の時と同様に棺の中から光が零れだし、次第にエリア全体が光に覆われ、やがて消える。


「よし、一応大丈夫だとは思うけど、二人とも準備はしててね?」


「「了解!」」


「よし。・・じゃあ・・開く・・あれ?」


 俺が棺を開く前に「キィー」という音を立てながら棺が開いて行き、中から裸のではなく、戦星魔法士の正装である星法衣を着たミレイが姿を見せる。


 立ち姿は凛々しく優雅で気品に満ちており、先ほどの裸体からは想像が出来ない艶妖さが滲み出ていた。


 しかも改めて見ると、美空とは別の意味で清楚な大和撫子を思わせる容姿と、金髪の碧眼で目は勝気に溢れ、見る物を魅了し、全てを虜にする存在感は二人と何ら変わらない。


 更に髪も以前は美空と同じく肩の辺りで揃ていたのが膝裏まで伸びている。


 これはもしかすると美空が長い間と言った訳がこの髪の長さに関係しているのかも知れない。


 そして、俺の近くまで来たミレイは俺の隣に腰を降ろし、膝立ちの姿勢で俺の反応を待つ。


「・・っと、悪いな。さあ、忠誠の儀式だ。」


 そう言って俺は美空にした様に右手をミレイの顔に近づける。


 それを合図にミレイも俺の手の甲に口づけをする。


 これで忠誠の儀式は完了だ。


 すると、目覚めたばかりのミレイが美空に向かって微笑み、大胆発言をした。


「そこにいるのは美空ね?私が目覚めたからには貴女の好きにはさせないわよ?啓太だって私の虜にして上げる。貴女は精々頑張って捨てられない様に腕を磨きなさい?」


 それから俺に向き直り


「って事で、啓太?私が貴方の願いを全て叶えて上げる。だから、私を特別に見なさい。別に他の女を見るなとは言わないわ。貴方が女好きなのはゲームの頃から知ってるから、貴方から女好きを取ったら何も残らない。だから、なるべく見るって事妥協して上げるの。どう?嬉しい?」


 口に指を添え、艶めかしい声で訴えてくるミレイ。


 その様子に呆れるも、俺の目的を知ってる二人は些か苦笑気味だ。


 流石に俺も計画が有るのでミレイには悪いがもう少し妥協して貰おう。


「それは嬉しいが、俺は有る計画が有ってな?その計画にお前らのそれぞれの実力が必要なんだ。」


 そこで俺はミレイに計画を話して聞かせる。


 序に二人に話してない村の様子を話して聞かせた。


 そして、数分後・・・


「・・・むぅ~、それならいたし方ありませんね。私がコトナ様より万能性に乏しいのは否定できませんから。それに美空の式神の汎用性の高さと風の有用性は十分に理解してますし・・。しかし!」


「な、なんだ!?」


 急にミレイが大声で叫んだ。


 何だ?


「私の戦星魔法はこと戦闘に関してはコトナ様以外に劣っている心算は有りません。あの人は別格ですが、その他の人よりは確実に戦闘面では貴方のお役に立てます。情報収集に於いて美空一歩譲ったとしても、全体の戦闘行動で負ける心算は無いわ。それをこれからの村での防衛で証明してみせる。・・っと、熱くなってしまったけど。啓太が戦闘で困ったときは遠慮なく言いなさい。必ず私が全ての厄災を払ってあげるわ。」


 ミレイがそう捲し立てて意見を言ったのだが、それを聞いた美空はごく普通に


「言いたいことは分かったけど、ミレイの考えは私たち皆の考えでもあるわよ?そこは分かってるでしょ?」


 と言ってミレイを宥め


「ええ。」


 とミレイも納得する


 二人とも落ち着いた様だ。この二人はなんだかんだで考え方は一緒だからな。


 考えが似ているから衝突もするが、共同で何かをやる時の効率は数倍に成る。


 まあ、これで後は幻想姫のフレイアが加われば、並の国家では太刀打ちできない戦力が揃うだろう。


 しかも、アイツは星が2つの癖にミレイとは違った意味で万能だからな。


 今の俺たちのパーティーが勇者(俺)、戦士ガラム賢者ミレイ、魔法剣士(美空)としたら、フレイアはさしずめ魔物使いだ。しかも攻撃回復両方が使えるタイプの。


 そうなったら、村は一先ず安心だ。(今のミレイとガラムでも十分安心なんだが)


 さて、メンツは揃った事だし、一気にこの迷宮を攻略しますか。


「さあ、後はこの迷宮を片っ端から調べて、俺達に有用な施設なら住みやすく改良しようじゃないか。ガラムにならその位は魔物の材料で幾らでも可能だろ?」


「まあな、さっき旦那が説明してる時に美空に聞いたが、この迷宮の地下2階からは結構美味しい材料を持った魔物が多く生息してるらしいから、最下層の研究施設っぽいとこの状態次第でここを俺らの居城に出来るかもしれん。・・まあ、全ては見てからだな。」


「そう言う事。・・っと、そうだ。美空とガラムには言ったけど、俺はしばらくしたらこの世界の他の祭壇を探すために冒険者として美空と行動を共にする心算だから。ミレイもガラムと一緒にこの村の防衛はさせるんだけど、途中で呼び出したり交代させたりもあるから、この迷宮で戦闘訓練はしといてね?」


「ええ、それは勿論よ。そうでないと何の為に再召喚されたか分からないし。」


「当然だな。」


 うん、二人ともいい顔だ。これなら安心だな。


 特にミレイの場合は魔法が魔法だけに一国を相手でも防衛は可能だろう。


 ハッキリ言ってマジカルアーツの面々は戦闘力特化型が多すぎるからな。


 その中でも使い勝手がかなり良いのがミレイだし、こんな場所で会えるのは幸運だろう。


「んじゃあ、早速広間に戻って下の階に行く螺旋階段まで進もうか。」


「「「はい!(ああ)」」」


 って事で俺たちはいよいよ迷宮攻略に乗り出した。



ミレイのイメージはレンタルマギカのアディリシアのカールなしバージョンです。

丁寧口調のキャラばかりでは面白くないので、ため口のヒロインをという考えでのイメージです。

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