表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村から始まる異世界王国誕生物語  作者: arandora
異世界でのチートは少年ではなく召喚生命体でした
16/16

一夜明け(政治関連編)

今回はこの世界の貴族の簡単な説明と次の相手の簡単な影(実際には影ではないが)を散りばめてます。って事で物語にと言うか、話の進展は次回からです。

「って事で、今から話を纏めるが。美空?」


「はい、遥の事ですね?」


「ああ、場合に由っては争う事になるから、覚悟はしといてくれ」


 俺は今後の展開に由っては有りえる場合の想定を美空にさせる。


 争わない事が出来れば良いのだが、相手はこの国の王様に既に仕えている。


 どういう契約かは分からないが、俺達と同じ様な契約なら、場合に由っては殺し合いになる可能性もあるのだ。


 もし、殺し合いになれば、ミレイが一撃で仕留めるだろうが(遥がゲームの時と同じような実力ならミレイの氷の戦星魔法で風ごと凍らせれば、後は相手にならない。)、その際美空が姉としての温情で反旗を翻せば、此方としても相当な痛手になる。


 駄目なら駄目で美空には村で待機していて貰い、ミレイとガラムと俺の三人でこの国を制圧後、遥の処遇を決めてから美空を呼び寄せる段取りになる。


 ハッキリ言って手間な事この上ないが、背に腹は代えられない。


「それに関しては私はとうに覚悟を決めていますから、心配は要りません。それに嫌っているのは向こうだけでなく、私も同様ですから。あの子が啓太様に刃向うと言うなら全力で叩き潰すのみです。啓太様に私が逆らう事は万に一つも有りません。それよりも問題なのは・・・」


 ああ、向こうの戦力か・・・


「向こうが本当に遥を唯、氷から出して助けただけで遥が従ったのなら良いのですが、あの子の気性を考えると、如何にも納得できません。もしかしたら遥以上の、少なくても目覚めたばかりの遥を屈服させる事の出来る者が居ると考えて居た方が無難です。ユリアさんの話が本当なら、国王の家族及び信頼に足る側近のみで立ち向かったと考えれば、王子や王女がそこそこに腕が立つと考えられますが・・」


 これも実際に会って戦闘を見るまで分からない事だな。


「そして、魔道兵器はそれ程脅威ではないとしても、それに匹敵する相手国の10神衆なる者たちはどの程度か、予め確認をしておく必要が有ります。・・・なのでガラム?」


「ああ、地下の施設に良さそうな物が無けりゃ-、俺が開発するしかないな。手始めに自分の事を裏切らないドッペルゲンガー製造機が一番初めだな」


 美空の話の振りにガラムは分かっているとばかりに頷いた。


 しかし、この村と迷宮の材料だけで果たしてあの超一級の魔道具が作れるだろうか?


「ガラム、もしもこの村と迷宮の材料で出来ない場合は、村の発展を村の人達に任せられるようになれば一旦材料を確認する意味でも俺達に合流して貰うぞ?・・って言うか呼び出すぞ?」


「ああ、その時は仕方ないだろう。俺としても、俺の技術をそのまんま使える分身は早い段階で欲しいからな。多少の無理はやむを得ないだろ」


「ええ、それに私達と同じ事が出来る女の子が居ればその子たちに色々と任せて、私らは啓太と諸国漫遊の旅にでも出て行けるし。他の国が戦争をしようってんなら、力で捻じ伏せてやればいいしね。」


 ガラムの意見にミレイも自分の欲望を乗せる形で賛同した。


「後は・・この国の貴族の現状だな。ユリアさんの態度が貴族全体の態度なら、安心はできるが陰謀とかには弱そうだ。領地経営の事は俺も分からんから、この村とカリンの処遇は後でユリアさんに聞かんといかんが、他の貴族がどう出るかで色々と変わってくる。場合に由っては俺達で新たな貴族になってこの村を貰っても良いが、結局は領地の経営が分かってない俺達では村に迷惑が掛かるだけになるからな。その辺も詳しく聞くか・・・。その位かな?」


「・・そうですね。まだ迷宮も途中ですし、いま考えられる事はこれ位でしょうか?」


 俺が確認の意味で聞いた言葉に美空が反応して応えてくれる。


「では、他の貴族の事は兎も角、この村の立ち位置とカリンさんの処遇。あと領地の問題を聞くことにしましょうか?」


「そうね」


 という事で、話し合い第二ラウンドへと移行する事になった。



 ☆



「それじゃあ、聞きたい事は纏まりましたか?」


「ああ、基本は俺達が来た事によるこの村の立ち位置とカリンの処遇、後は国全体の領地運営の詳細だ。特に同盟国がどう出るか分からない現状で俺達が変に手を出せばこの村は直ぐに国の直轄に成るのか、それともユリア達青の一族が国とは独立した形で俺達を迎えて同盟国に喧嘩を売るのか・・。その辺を先ず聞きたい。」


 俺が気になる問題は勿論カリンの事もあるが、カリンは謂わば同盟国が昨日の様に急に攻めてきた時の用心として存在するのが今は常套だと思うので、それ程思いつめて考えたりはしない。


 それにミレイに少しでも鍛えて貰えば、更に村の人達の安心感は増すだろう。


 だが、逆に俺達の実力を知ればカリンと村の処遇を対価に同盟国に喧嘩を吹っ掛ける可能性も〇ではない。

 俺が心配するのはそこだ。


 しかし、ユリアは俺の考えを笑って否定する答えを出してきた。


「ふふふ・・、ケイタさん?私達貴族の考え方は確かに非情な部分もありますが、それもその状況によりけりですよ?例に出して上げるとすれば、もし貴方がこの村の管理者として任されたのなら、カリンさんが居ない状況だとして村の維持を如何しますか?勿論、貴方は一人の上に他に沢山の村も管理していて、この村はその中の一つに過ぎない場合と仮定します」


 む・・・いきなり難しい議題だな・・


「・・そりゃー・・あの洞窟が有る以上、それなりに腕の立つ者を雇わないといけない。それなら、話に聞く冒険者を雇うか、いっそのことあの洞窟の湧き出る魔物の材料を目当てにした迷宮都市として売り出すかもな・・・っていうか、それしか思いつかん」

「ええ、私もそれが最善の方法の一つとして捉えます」

「一つ?って事は他にもやり方が有るのか?」

「ええ、それが先ほど非情だと言った部分で、村自体を残すと言うのが目的であれば、リンナに聞いたと思いますが冒険者派遣協会で管理させて、他の村人は別の土地に移住して貰うと言うやり方が有ります。その際に、そのやり方が気に入らない人にはこの土地に残って派遣された冒険者の方を色々と世話をする仕事に付いて貰わないといけません。若しくは自分たちで村を護るために立ち上がって殉職するか・・、ですね?どちらにしても、今まで通りの生活は望めないでしょう。それは、先ほど言った最善の方法でも同じ事です。結局は冒険者をこの土地に招き入れると言うのには変わりありませんから。言うなれば、今の状態が一番村にとっては理想の形なんです」


 なるほどな・・、カリンが頑張っていたお蔭で村がもっていたと言うのもあるが、どの道戦闘行為が出来る者が居なければこの村はそう長くは無いって事か。


 まあ、その問題は俺達がこの話し合いを終えた後に再び迷宮に潜って攻略を進めればいいが、他の問題は他の貴族の考え方だな。


「じゃあ、ユリアの一族の考え方は分かったが、他の貴族もそう言う考え方なのか?」


「・・基本的には同じ…と言いたい所ですが、各貴族で色々ですね。この国は双位等立制といって、光と闇の一族を双頭に置き、他の4貴族で領地を分配統制してますから、光と闇の一族は所謂宗教団体の表面が有り、その信仰がそのまま国の人気に成っている背景もあります。…まあ、それ程強い勢力ではないですがね。」


 俺の質問に少し躊躇いがちにだが、そう話すユリア


「ほ~?例えば?」


「それはご自分の目や耳で確認した方が良いでしょう。先入観が有っては物事をキチンと捉えられなくなりますから。一つ言えるのは、ある事件がきっかけで本来ならどの時代の王も互角の戦いで光か闇の一族の者が成るのに、今では殆ど光の一族からしか王が出なくなったと言う事くらいですね。後は実際の陛下や、側近、他の貴族を見てから決めてください。……私の一族を毛嫌いしている貴族も中には居るですから。それがどういう意味かも考えて欲しいですし。」


 …何か今サラッと変な制度を言われたな。


「な、なあ?この国では国王はどうやって決まるんだ?」


「ああ、それは国王が崩御する前に次代の王を指名する方法が一つ。強い者が居る一族でないといけないと言う事で、光と闇の一族の国王候補者が決闘をするやり方が一つ。後、数日間による国民の血液による投票の三つですね。現国王は前国王の三男でしたが、強さと人気で他の候補者を圧倒しての3勝で今の国王に納まりました。長男と次男が当時の国王に嫌われていた事もあり、噛ませ犬的な立場にあったのが幸いしたと、今の国王の事情を知っている国民は納得してます。実際国民の命を大切に考えてるのは今の国王が一番候補者の中ではダントツでしたから。私も当時の演説はよく覚えてますよ。少々大を活かすのに小を切り捨てる・・的な事を嫌う部分もありましたから甘いとは思いましたが…」


 ふ~ん?それなら民にとっては良い国王なのかもしれんな。


 その国王がどんな奴かは有ってみての楽しみだが、腐りきった国でない事は確実の様だ。


 けど、上手い事運ばないと何時までも国王が決まらないんじゃないか?


「なあ、決着が付かない場合はどうなるんだ?」


「その場合は勝負の方法とその結果で総合的に見た順位ですね。例えば、幾ら強くても人気が無いと国にとってはマイナスに成りますし、人気が有っても強くないとそのまま国が攻め滅ぼされ兼ねません。まあ、個人の強さがそのまま国の強さでもないので、一概には言えませんがね?それに前国王に指名されていても、民に人気が無く、病弱とか明らかに他より弱いと同じように攻め滅ぼされ兼ねませんから、使命されただけでも駄目です。アドバンテージの一つには成りますがね?その3つの方法で総合的に見た結果で国王が決まります。」


 …どこぞの国より余程考えられた王の決め方じゃないか?


 戦争が有る大陸だから、自然とそう言う法になったのか?


 実に興味深い、面白い決め方だ。


 第一、国王に指名されていても、安心できないってのも、向上心に繋がって良い制度だと思う。


 俺は偶々この国のこの村に迷い込んだが、これは運が良かったという事か?


 こんな法がある国なら、居ついてみたいと思えてくるかもしれない。


「そう言った事も含めて、領地は各々貴族の代表が順番に入れ替わりで一人王都に常駐して領地ごとの取り決めを全体の会合で話し合います。まあ、大体は貴族の身内の成人した者が入れ替わりですが。だから、恐らくカリンさんの処遇に関しては今のままで変わらないでしょう。国が関わってきますのでケイタさんの出方次第で同盟国との戦争に発展すると言った感じでしょうか?ケイタさんの全面的な協力が得られる確かな保証が無い今の段階では間違ってもこちらから仕掛ける事は有りませんよ。抗議文を送りつける事はしてもね?」


 なるほど?


 まだ、ユリアさんの見解しか聞いて無いから分からんが、それほど心配する事も無いって事か。


「あと、領地の運営に関しては色々です。その土地柄に対しての特産品を各都市に行商を通じて卸していくか、馬車などで近くの町に行って直接売るかですね。そして、出た利益と各村の利益を考慮に入れて税率を決めます。税の種類は色々ですが、主にはその土地で採れる割合の多い物を税として納めて貰い、逆にその土地で殆ど採れない物を行商を通じて治める貴族に報告して貰えば税の代わりに、主に食べていける、生活して行ける物を送ります。この土地で言えばリンナの魔法薬と少量の魔物の肉ですね。逆に送る物は魔物を倒したり他国が攻めてきた時の為の金属鉱物を他の金属を多く輩出している鉱山の近くの村の税で賄ってます。」


 ……本当に考えられたシステムだな。


 こんなの殆ど他国の事情なんかお構いなしに、この国で全て出来る様な物じゃ無いか。


 しかし、俺のその顔で何を考えて居るのか分かったのか、苦笑しながらも俺の考えをやんわりと否定した。


「一見考えて居る様にも思えますが、だからこそ他国に狙われる可能性もあるのです。しかも鉱山とて無限ではないですから、何時かはこの国で採れる山も無く成る筈ですから。その為、未だにどの国も醜い戦争と言う物を繰り返しているんです。誰しも土地は広くて資源が沢山ある方が心にゆとりが出来ますから。強欲に塗れた男共が女性を犯すために戦争を仕掛けるのもまた、快楽によって一時期の心の安寧を求めての事です。」


「…?俺が言うのも何だが、この国にはって言うか大陸にはそう言う男の欲を満たす場所はない…い、いや、俺がそう言う事をしたいと言うんじゃなくてだな?一々他国に戦争を仕掛けてまで女を手に入れるなんてしなくても、例えば生活出来ない様な貧困で困っている者にそういう行為の代償に住む所や食事を提供する施設は無いのか?ユリアの話だと、敗戦国の奴隷は居るんだろ?国でそう言う人材を管理してその中に暮らして行けない様な者も混ぜればそうそう戦争をしなくても済むんじゃないか?」


「……」


 俺の質問にユリアや他女性陣は額を押さえながら沈黙。


 数秒後、ユリアが疑問に答える。


「ケイタさんの意見はあくまで女性関係の事のみです。逆に国を治める者の考え方は女性関係の問題はついでの考え方でしかないんです。敗戦国の奴隷にしても一部の国やこの国でも一部のアホな貴族が女性を手に入れたいが為に戦争を好む者もいますが、単純な戦力アップの方法として敗戦国の優秀な将軍を手に入れ、自分の国の軍事の重要なポストに置いて居る者もいます。少し話はズレますが、戦争準備中の連合軍のユーカリの王と、ナノアの軍師がそれにあたるようです。」


「?どういうこと?」


「先ず、ユーカリの王はあまり女性に興味が無いのか、戦力になるなら醜くても賢い者、強い者、忠誠心の篤い者を好んで自分の傍に置くようです。現に噂の10神衆の半分は確かに見目麗しい女性ですが、残り半分は見目麗しいといえるのは一人もいないようです。男だけと言うのもありますが、容姿に関しては普通の者だったり老人だったり等様々です。まあ、容姿は兎も角5人とも実力は飛び抜けているのは確かのようですがね?そして、勘違いしてはいけないのが、10神衆と言っても、半分はナノア国の者で、この国は反対に女性が王をしているので、自然と側近が女性になります。只一人の男性が王の護衛であり、優秀な軍師なのだそうで、その軍師こそが取り立てて特徴の無かった国を僅か数年で軍事国家となさしめ、それまでは敗戦国の奴隷も男女とも美しい者のみの雇用だったらしいのが、何かに秀でていれば誰でも登用する政策に変えた者だそうです。しかも、国に有益な事をすれば国の復興も考えてやるなどと言ったとか。先に話したユーカリの王の政策も、謂わばこの軍師の真似だろうと言う噂です。そして、その軍師の提案で今回の戦争の準備となったようです。」


 な~んか、その軍師ってのがキナ臭いな。


 謂わばハーレムのような状況で尚、戦争を望むのはどういう意図だ?


 側近連中に煙たがられてんのか?


 それなら分かるが・・・


「その軍師ってのはどういう性格なんだ?」


「さあ?そこまでは…。それに、偉そうに説明して置いてなんですが、これは他国に行けば嫌でも耳にする位の常識なんです。どういう訳か一定の情報を小出しにして、他の重要な情報が一切漏れない様な状態にしてるのだとか。私の一族の密偵が一人内部に入り込もうとしたようですがどうやっても潜り込めないと諦めて帰ってきました。そして、帰って来たその密偵の服の中に、いつの間にか手紙が入っていて『この程度の奴を送ってくるくらいなら、もう少し鍛練を積ませて楽しませろ。今度は死体にして送り返すぞ?』という文が行商の積み荷に混ざってました。おかしな内容でしたが、相手の方は恐らく相手にする国が有る程度強くないと楽しめない者なのだと納得してます。」


 ?それだと何か変だぞ?


 簡単に密偵を割り出せたりするのに、そいつを拷問に掛けないとか、変だし、戦争の準備中と言った情報を流すなんてあまりにもおかしい。


 俺なら国の状態が維持できない位の痛手を与えてから始めたら終わりの状況に持って行くけどな。


 それ位の手練れが手札にあるなら…だが。


「なあ、その話は少しおかしくないか?」


「ええ、私もそれは思いますが、私の相談役の様な人に話したら、見え透いた挑発だと笑って言ってました。恐らく少しでも恐れる様に嗜好を凝らせたのだろうと。」


 確かに、それなら少しは納得が行くな。


 しかし、10神衆の半数が化け物みたいな奴で、しかも女性の方はもしかしたら男嫌いと言う可能性もあるって事か。


 ああ、俺の人間女性のハーレムの夢が崩れていく・・・


 俺は女を洗脳はしてみたいが、無理矢理は好かんのだ。


 しかも、洗脳自体が己の意志の強い者に対しては効果はあまりない物だから、惨たらしい拷問を掛ける分、脅すなら男だな。


 悪戯は出来るが所詮悪戯であって本格的な洗脳は相手の意志の強さも関わってくるからな。


 女の子はゆっくりと警戒を解きながら洗脳するのが一番だ。


 まあ、半数は男の様だから、そいつらを洗脳してからゆっくりと時間を掛ければいいのかもしれんが…。


「話がそれすぎたので戻しますが、この国には男共の欲を満たす場所は有りますが、ハッキリ言って高級宿に泊まる様な物です。同じ女としては薦められませんし、薦めたくも有りません。お金の無駄遣いです。そんなところに行くならばさっさと恋人を作ってその相手にお相手をして貰えと言いたいくらいです。」

「…言いたいことは分かるけど、そう言う場所があるって事は、需要もあるって事か?」


「…ええ、元が敗戦国のお姫様や女性の将軍など、女性を商人が衣食住の代わりに体で各国の一店舗で働かせて居る宿です。勿論皆見目麗しい女性ですが、行くのは強欲な商人と、一部のアホな貴族くらいですね。」


「アホアホ言ってるが、何か有るのか?」


 俺はあまりにユリアさんが毛嫌いしているので、理由が知りたくて聞いてみた。


 すると…


「ケイタさんがもし、女性なら・・では分かりませんか。・・ああ!相手が同性を好む男性の場合、自分の愛した国を滅ぼした難い相手に幾ら仕方ないとしても簡単に体を預けようとしますか?」


「…いや、逆に殺してしまう可能性が有るな。後でどうなるか想像できても、ムカつきすぎて」


 俺の答えを聞いて、一つ頷いたユリアさんはニッコリと笑顔でそんな酷い女性の裏側を語った。


「ええ、実際に行為を強要された女性の多くが自刃したり相手をケイタさんが言ったように殺してしまう事が相次いだ時が有ったようです。…まあ、それは私も資料で見ただけなので詳しい内容は知りませんが。というか、気分が悪くなって見るのを止めたと言うのが正しいですね」


 おお…怖いな!


 やっぱり女性は悪戯で留めるか、心を開いた者に限るな。


 俺はもう、美空達で十分だよ。


 けど、奴隷にそこまでされる程の権力を態々残しておくのか?


 俺なら契約で縛るが?


「なあ、奴隷とはいうが、戒めは無いのか?」


「…成るほど、万能に過ぎるケイタさんだからこその思い込みですね」


 そう前置きしてからユリアさんが説明する。


「これはリンナかカリンさんが言ったかもしれませんが、魔術を自在に扱える者はそれ程数は居ないのです。この村でも、100人そこそこの人数でリンナを含めて3人もいるのは規模からすれば多い程です。王都ですら、数万単位の人がいますが、その中で魔術師となるだけの冒険者は一握りであり、魔術を使えると言うだけでそこそこ仕事も融通してくれます。まあ、その分危険が増しますが?話は戻って、敗戦国の者を奴隷とするにも、魔道具を作る専門の魔術師が何人も集まって、【隷属の指輪】なる、相手にいう事を聞かせる道具を作って、それこそ普通の人では10回くらい人生をやり直さないと得られない大金を積まないと手に入らない物をどうしても欲しい貴族や王族に売ると言った感じです。他は先ほども言いましたが、衣食住の保証をする代わりと言うだけなので、場合に由れば裏切られますし、簡単に死んだりします。【隷属の指輪】にしても、そこそこ制限は有るらしいです。…詳しい事はムカついたので調べてませんが…」


 ふ~ん、万能に見えて、それ程万能でもないって事か。


 ある意味安心だな。


 俺の仲間がもし、問答無用でその魔道具を付けられても、場合に由れば解放は出来るっポイからな。


 しかし、ある意味苦労して手に入れた奴隷も、場合に由れば自分の寝首をかく凶器に成るって事か。


 どう考えてもリスキーすぎるんだが?


 そして、俺の考えは顔に出易いのか、またしても考えてることが分かったらしく、ユリアさんが笑って言ってくれた。


 物凄く納得できる一言を……


「余りにも報酬に見合わないと思ってるのでしょうが、それでも見目麗しい女性を手に入れる事が出来た時の達成感で男共の大半は目の色を変えて戦争に身を投じる愚かな生き物が多いという事です。それでない普通の男性でも、そう言う部下を持つ者は多少のリスクを覚悟で色々と策を弄する者もいますがね?何故か知りませんが、ケダモノの多くは野性と言うのが凄いらしく、戦闘力の高い者が多いのが現状ですから。……嘆かわしい事ですが…」


「……」


 もう、何を言っても男の弁護が出来る自信がねえよ、俺には…


「…で、聞きたいことはこれ位ですか?」


「いや、最後に一つ」


「?なんでしょう?」


「この国の調理技術や、魔道具の技術はどうなってんだ?そこのガラムに開発させるとしても、あまりに発展させ過ぎたらここが他国に集中され過ぎて、旅どころじゃ無くなるからな。そこは聞いとかねえと。」

「ああ、それは心配ないと思いますよ?先ほど言ったナノアの軍師がこの4・5年の間で物凄い知識で調理技術を広めてしまって、それまではここの村と同じような調理法だったのが、広めた後は大きな都市にはどの店舗でも中まで万遍なく火の通った肉や、ビロー(蜂)の蜜を使った甘味など、凄い量のレシピと言う物を開発してくれまして、今ではココみたいな小さな村では無理ですが多少の大きさの町では簡単に美味しい料理が食べられます。」


「え?!ちょっちょっとお姉さま?そんなこと、今まで言ってくれなかったじゃない?なんで?」


 ユリアの話を聞いたリンナが魂の叫びを放った。


 まあ、そりゃー当然だわな。


 好きで不味い料理を食べる奴なんていない。


 誰でも美味い物は食いたいと思うのが常だ。


 リンナのそんな叫びを涼しい顔で受け流したユリアは…酷い事を言ってのけた


「だって…偶然手に入れた知識でも、その知識を簡単に譲るなんて悔しいでしょ?少しは自分たちの生活位自分らで改善する様に考えて貰わないと…。それに、行商が広めて無かった所を見るに、行商も同じような考え方の様だしね?誰でも多少の優越感でも浸りたい時がある物よ。各村での生活は長くても一日ずつ位しかないから、それ程苦痛でも無かったって所でしょうね?」


「そんな……」


 ガーン!!と背景が出てくるような沈み方のリンナ。


 その横であまり理解してない様子のカリンがまあまあ、元気出してよ、リンナちゃんなどと慰めている。


「まあ、食糧事情は分かったが、魔道具はどうなんだ?例えば、転移用の魔道具とかは?」


「…は?…今なんて言いました?」


 俺の言葉にリンナとユリアが固まっている。


 この反応からすれば、転移用の魔道具は無い様だ。


「いや、だから転移用の魔道具は無いかって?」


「…まあ、詳しい事は聞きませんがどういう考えでそんな発想が出るのか見当もつきませんね。大昔は確かにそんな道具も有ったと、記録が残ってますが、皆そんな物は有る訳ないと笑い飛ばす非常識な道具ですよ。考えても見てください。仮に転移が可能だとしましょう。その場所の選定と体をその場所に移し替える技術なんて未だ発見されていないんです。ハッキリ言って不可能です」


 オーノー…


 どうやら迂闊に転移の魔道具は使えなくなってしまったようだ。


 便利なんだが…


「じゃあ、今ある移動手段の魔道具はどんな物が有るんだ?」


「移動手段で言うなら馬車に簡単な風の魔法陣を刻んだ魔道馬車が、これも先ほどの話の軍師が世に広めた物ですが、有りますね。…と言うか、こう考えればナノアの軍師とは何者なのでしょうか?ナノア国自体が最近、この4.5年で急激に力付けた新興国家ですし…。」


 確かにな…


 俺も段々そいつに興味が出てきた。


 もしかしたら、俺みたいな迷い込んできた元の世界の奴が居るのか?


 それなら、会ってみたいが…


 そういや、魔道具は魔法陣を刻んだ物であれば簡単な物であれば作れるのかな?


「ガラム?魔道具って、魔法陣を刻みさえすれば効果は出るのか?」


「場合に由りけりだな。知っての通り、刻んだ物は物によって劣化が異なる。布とかに刺繍として編み込むのなら効果も持続するが、馬車の様に常に動いたり風に曝されるような物は何時効果が切れてもおかしくねえ。もしも、旦那が魔法陣を開発するなら、AIフォンで直接人に契約する時みたいに、内部の方に命令が伝わるようにしないと効果は薄いだろうな。しかも、迷宮で見た物がそうだったが、少しでも線がズレてたらたちまち効果が無くなる様な繊細な物が多いから、移動手段に成る様な物に刻むんなら、旦那がやるより、俺がやった方が確実だ。その為の俺らだしな?」


 確かにな


 何事も専門家の意見は重要だってことだな


「後、リンナに聞くが、リンナの魔法薬は如何いった原理なんだ?」


「ああ、私のは完全に特殊な奴だよ。回復魔法と特殊魔法を合わせて、独自に色々とやってたら、いつの間にか魔力を篭めたら魔法陣が出て来て言葉だけなら通じる物やが出て来たんだ。他の回復薬なんかは、そこいらの薬草を手に取って、同じように魔法を篭めればそのまんま薬の出来上がりだね。回復薬の場合は薬草が要るけど、通訳丸の方は何も要らずに出来たのはその為だよ。」


 へ~、偶然とは恐ろしいもんだ。


 俺も何かできんかな?


「…さて、話はこの位でしょうか?」


「だな…。後は直接現場で見たり、聞いたりしないと分からん事ばかりだ。…ありがとな?ユリアさん。ここが何処かも分からんかった手前、迂闊に動けんから、正直情報は助かるわ。まあ、これからも世話になる可能性は高いけどな。」


「ええ、その時は何なりと聞いてください。村と私達姉妹の恩人の頼みなら、出来る限りの協力はしますよ。」


 俺の言葉に、ユリアさんがニッコリと笑って言ってくれた。


 ホント、俺の中にある貴族像とはかけ離れた人だ。


 まあ、これが表の顔で裏では密売人と言う顔が有っても不思議ではないが…。


 そう考えながら、俺は美空達と再び迷宮へと入る準備をする為、声を掛ける。


「よし、それじゃあ小休止の後迷宮攻略に行って、目ぼしい物を物色したら、ユリアさんを王都まで送る準備に掛かるとしようか。」


「はい、あの迷宮も気になりますが、同時にナノア国の軍師と言う者も気になります。速めに出立をした方が良いでしょう。」


 俺の意見に美空が肯定の意を示す。


 まあ、美空が俺の意見を否定する事は滅多にないんだが…


 そうして、俺達はAIフォンのエネルギーパックの交換品を今度は纏めてミレイの闇の中に入れて、ユリアさん達には転移用の魔道具の簡易な説明を一言してから迷宮に入った。


 まあ、その説明の際の皆の反応が物凄い呆れた表情だったのは言うまでも無いので詳細は割愛する。


 

 




 






 


 

長い…、説明とはこうも長い物なのか?あまりネタバレをしたら嫌だから、大まかにしたのに1万字そこそこに成るとは思わなかった。ってことで、次回から恐らく2話分ほど迷宮です。お楽しみに…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ