13話一夜明け・・・(戦力説明編)
今回は説明のみなので、展開に進展は有りません。
翌朝、俺達は魔物に壊された住居の復旧とリンナに話していた用水路の工事をガラムにやらせ、俺、リンナ、美空、ミレイ、カリン、リンナの姉であるユリアは、国が始めかけている戦争の事について話し合っていた。(昨晩はもう遅かったので寝ずの番に美空の式神を配置して、起こり得る第2の襲撃に備えたが、結局は来なかったので一安心と言った所だ。行商は今朝早くにユリアさんが書いた抗議文を魔物使いの出身国であろう同盟国に送りつけて貰うため一足早く村を出た。)
村長夫妻は皆の手伝いで居ない。更に色々とガラムに教わることも多いので殆どの男衆は外でガラムの指導の下、村の開拓のノウハウを勉強中だ。(俺が教えても良いと思ったが、こういう職人の技が要る事はその手の専門家の出番であり、生半可な知識の奴が教えれば逆効果になるのででしゃばらない事にした。)
ガラムに任せておけば村を城塞にする事も、地下都市を建設する事も材料さえあれば長くても2,3年あれば出来る。まあ、この村の人口の規模で都市は無理だろうが。
因みに昨日はあの後、予定どうりにあのカス共を村の連中に渡し、カリンとリンナとその姉で色々と拷問をした後リンナの姉の提案で同盟国に抗議文を送ったそうだ。俺が撮影した拷問映像の写真付きで・・
その文章は見せて貰えなかったが、まあ、リンナの姉が貴族だったらしいのでその辺に手抜かりはないだろう。そして、何故同盟国の者と分かったかと言えば、あの時囀ってた奴が言ってた事を鵜呑みにした訳でなく、AIフォンのある機能を使って誘導尋問という名の催眠を掛けた。
まあ、その詳しいやり方はまたの機会に語る事もあるだろう。(主に戦争相手の10神衆とかいう者達に悪戯事をする時に)
もしそれで何かあっても俺達に関係はない事だし・・
それよりも、問題はカリンと俺たちの事だ。
昨夜の事はどうやら少々やり過ぎたようだ。(俺的には生温いと思っているのだが)
あの規模で襲われて、死者が護衛のAランク冒険者2人と言うのはどう考えても可笑しいらしい。
同盟国に抗議文を送っても、その防衛を如何したのかやら、魔物を退けたのは誰だやらの質問が後から来るのは明らかと言う。
俺自体は「そんな事俺達がその国に三人で行って、国ごと貰って来てやろうか?そうすれば納得するだろ?」と言ったのだが、相手にされなかった。
されなかったと言うより国際問題に成るからやめてくださいと懇願されたので仕方ないのだが。
そんで、結局同盟国に抗議文を送りつけた当人であるリンナの姉であるユリアと、当初から冒険者として色々と国を周りたい俺達(俺、ミレイ、美空、ガラムの内二人だが、俺は確実なので三人で交代)の二人とユリアの三人で王都まで行くことになった。
何でも、同じ貴族でも辺境の村に隠居していたリンナでは説得力に欠けるらしい。(この時漸くリンナの妙に知恵の回るところや知識の豊富な理由が分かった。)
そして、俺たちはその実力が確かなら、臨時の際に力を貸すことを条件に青の一族の所有する遺跡や迷宮限定だが、自由に入って良いと許可を貰った。(ただし、無事に王都にユリアを送り届けた場合のみ)
それから、王族に謁見をして戦争に参加するか冒険者として色々と見て回るかは俺達の自由にして良いという事だ。(流石に俺たちの実力を無闇にひけらかす行為を薦めたりはしないようだ。)
その際にも冒険者として色々と便宜を図ってくれるらしい。(例えば、イキナリ冒険者ランクCからでもOKという事だ。これがどういう位置づけかはまだ分からないが・・)
「という事で、ケイタさんと美空さんは私の護衛という事でお願いします。その依頼成功で冒険者ランクを上げる口実にしますから。そして、私の推薦状が有れば依頼も最初から配慮の利いたものを選べますし、仮の宿とかも協会にて段取をしてくれる筈ですから良い宿を探す手間も省けます。更に私の権力でステータスカードに私の魔力を注ぎ込めば私の治める青の一族の経営する店舗では色々と融通が利くようにもなりますから、気楽に利用してください」
「へー・・それは・・「啓太様、少しお待ちを」・・なに?」
俺とユリアさんの会話に急に美空が割り込んだ。
ユリアさんも怪訝な表情だ。
「それは単に『貴方方の行動は常に監視させて貰いますよ』という意思表示でしょうか?それなら私共は確実に貴女の一族の店舗は利用しませんよ?」
(まあ、流石にそこまでは命を助けて貰っといてしないだろうがな)
俺は苦笑しながらその美空の質問と取れる意見にどうこたえるかユリアさんの意見を待った。
「ふふふ・・、安心してください。そんな利用する様な事はしませんよ。なんならリンネール・・リンナに施した契約とやらを施して戴いても構いませんよ?条件は私の口や筆談から出た事実で貴方方に致命的な被害が出た場合、貴方方の物に成ると言う辺りで。・・如何です?」
ニッコリとそう言ったユリアさんの表情に嘘はない。
それは美空も思ったらしく、明らかな疑いの眼差しから柔らかい天使の様な微笑に変わった。
「それなら構いません。まあ、もし万が一啓太様に被害が及ぶ事態になれば私達はこの国はおろか、この大陸を敵に回してもその原因となった者を根絶やしにすることは厭いませんが?」
「そうねー。ハッキリ言って三人で無くあたし一人でも十分余裕な感じだしね?昨日の魔物の群れを相手に手こずってたのがAランクって言ってた時点でこの大陸の戦闘員の力の底が伺えたわ。・・・カリンさん?だったわね」
「はい!」
ミレイが急にカリンを振り向き、話しかける。
カリンも、それまで話の難しさにボケーとして聞いていたが、急なミレイの話題の振りに背筋を伸ばして応える。
カリンが返事をして注意がミレイに向いたところで、徐に・・
「貴女には私達が攻略した後のあの迷宮で鍛練をして貰うわ。勿論、啓太や美空は居ないし、鍛練の間はガラムに村を守って貰うから村の心配はしなくて大丈夫。そして、常に私と一緒に迷宮で行動を共にして貰う。それが一番の成長の早道よ。第一、聞いた限りの貴女のその寿命でその実力は有りえないわ。今までしょぼい敵としか戦ってなかった証拠よ?ほかにも・・・」
それからも愚痴の様な説教は続き、カリンが寝ているのに気付いたミレイが
「寝るな!」
ゴン!とカリンの頭をド突くまで続いた。
「痛いです~」
涙目で抗議するカリンだが、ミレイはそれを無視して続ける。
「・・まあいいわ。その痛みが痛みじゃ無くなる位のレベルに仕上げて上げるわ。それが私らがこの村に出した被害の僅かばかりの罪滅ぼしに成るでしょうから。私らが去った状態で、アナタが寝ていても村を護れるくらいに成らないと安心できないしね」
「へ~、お前にしては良い考えじゃねえか?なら、俺は安全を考えた城塞作りでもしますかね?何とか旦那が冒険者を辞める時までには」
いきなり外から入って来たガラムがそう言って来た。
「そんなに掛かるのか?ガラム」
俺は戻ったガラムに「工事は済んだのか?」と聞いてから「ああ、後は村の奴らに俺の指示どおり出来るか簡単にテストしてる所だ。放って置いても問題ない」という事で、先程のガラムの長すぎる見積もりに驚いて、詳しく聞く事にした。
ガラムなら幾ら材料が乏しくても一年あればこの村位の規模なら城塞位は簡単に作れそうなのだが・・、すると。
「いや?半年、材料さえあれば一月掛からないとはとは思うが、俺が気にしてんのは旦那の飽き性の問題だ。旦那って自分の夢中になる事は結構な期間続くが、先が見えてしまった物は余程好きで続きが最後まで見たいって奴でないと途中放棄するだろ?まあ、今回の目的が目的なだけにそれの心配はあまり考えてないが。」
とガラムが俺の疑問を自分の考えで否定する。
「けどこれからの事を考えれば、最底でもあと10人は仲間たちが必要ですね」
そして、美空はこれからの俺の予定を考えて仲間の召集の重要性を指摘した。
「まあね~。僕も最低3年は冒険者をやる覚悟だよ。その位迷宮や遺跡を巡ってれば目的は果たせそうだしね」
「あの~、ケイタさんの目的ってなんですか?」
「それを知れば恐らくカリンは俺の奴隷決定だな。俺がカリンに施した契約も、恐らく咄嗟の大声とかには効果も薄いだろうし。それとももう一段階きついのをするか?命を掛ける奴を」
俺がそう言ったら、カリンだけでなくリンナもユリアも押し黙った。
「ねえ、因みに命を賭ける奴ってのはどういうの?」
リンナがどうしても気になったのか、恐る恐る聞いてきた。
「ああ、これは大声とか咄嗟の状況にも無意識に反応して声を抑制する代わり、自分で進んで情報提供しようとしたら、その前に印が反応して心臓を破壊、そのまま死ぬって奴だ。その位しないと俺の秘密は知られたらヤバい事の目白押しなんでな?」
「・・・それは嫌ですね・・聞かない方が良さそうです・・」
カリンが自分でも分かっているのか、諦めた様に肩を落とした
俺はその様子に苦笑しながら
「ああ、カリンだとその方が良いと思う。俺もそんな事でカリンを失いたくないからな。折角面白い奴に知り合えたんだ、長く付き合いたいからな」
と言って説得すると・・
「お?それは告白かな?私はどう?もう恐らくケイタ君の怪しむような隠し事は無い筈だよ?」
リンナがニヤッとしながら言って来た。更にユリアさんも話に入るが、どうやらこちらは最初から諦めた様な感じだ。
「リンナは兎も角、私はダメですね。国の柱の一角である以上、迂闊に命を賭ける訳にはいきません。喋る心算は有りませんが、そんな口約束を信じる様な人でもないでしょう?」
「まあね?」
ユリアの苦笑気味な笑顔に、俺も苦笑で返す。
見た感じは良さそうな、国の重鎮とは思えない様な柔らかい感じの人だが、人を見かけで判断してはならないのは何処の世界でも同じだ。
特に貴族なんて言うのは国の為、領民の為なら多少の汚い政策は目を瞑る事も厭わないと言った事はよく聞く事だ。
目の前の人がそうだとは言わないが、警戒はするに越したことはない。
「まあ、アンタらがどうであれ。俺は例えカリンでも、リンナでも、勿論ユリアさんでも同じだけど、自分の秘密を話すのは俺の大事なこいつ等しか有りえない。こいつ等と俺は言ってみれば一蓮托生だからな。行動の重みが他の大勢とは全然違うんだ。・・・って事で、悪いな?」
「いやいや、村どころか姉様の命まで助けて貰っているんだ!感謝こそすれ、悪く思ったりなんかしないよ。それに、恩人の秘密を聞かないのも普通の事だ。迂闊に聞けば、それこそ恩を仇で返すことになる。しかも、下手したらそれでこの国が滅ぶ可能性迄あると成ったら、聞くに聞けないよ。」
俺が申し訳なく言うと、リンナが手を横に振りながら笑ってそう言った。
やはり賢い子だ。
この歳で既に自分の発言で出た話題の重要性の事を考えて居る。
こいつには魔道具の事をガラムと一緒になって販売ルートを構築して貰うのに役に立って貰ったら便利そうだ。
無闇に広げず、俺の行くところに少しずつ不利に成らない程度に流して行けば、技術の極端な発展も抑えられ、知識や技術が上がるに合わせて卸して行けるようになるだろう。
俺はあまり気にしてなかったが、リンナは姉が救われたことに対してやけに恩に感じているようだから、それを利用しない手はない。
更に戦争の準備中という国に対しても、上手く行けばやり方次第でこちらに取りこむ事も出来そうだし。
この世界が俺のいた世界のゲームの様に国と国の人の繋がりが金や地位、名誉で動かせるなら、召喚体だけでなく、普通の人間の女の子を俺の忠実な部下にする事も可能な筈だ。
実際にユリアさんの話では戦利品として敗戦国の将軍や姫を自由に出来る様な事を言っていたし。
可能性は十分にあるだろう。・・・が、問題はその強さだ。
ミレイは楽勝の様に言っているが、どうやらユリアさんの家の情報網でさえ、相手の国の動向や大まかな事は分かるが、相手の主な戦力である10神衆とかいう者達の戦力は殆ど分かっていないそうなので、言う程気楽には構えられない。
今の所はこの村の防衛でガラムは緊急時しか出せないし、ミレイはカリンの鍛練に付き合う形になるから、急な戦力には数えられない。
だから、都合のいい考え方に成るが、向こうが様子見で一人ずつ戦力を投入してくれれば、ゲームの大名が俸禄を与えて手駒にする様に、俺が催眠で徐々に俺の配下にする方法がとれる。
万が一、全戦力を一気に投じてきたら、その際はこちらが様子見をして、この国の戦力を利用して戦力分析を行い、一人ずつ罠に掛けながら手に入れる算段も必要になるだろう。
そう言えば、この国の戦力ってどうなんだ?
「なあ、ユリアさん。このアーシア国?の戦力はどの位?昨日の魔物一匹がどの位かと、それを一対一で倒せるレベルがどれくらい居るかってのをお願い」
俺の質問に顎に手を充てながら考える事1分弱・・
「昨日の魔物が操られていた事を加味して、大凡Aランクの戦闘特化の冒険者の人が1対1で何とか互角位ですね。昨日護衛で来ていたモルト達は私がお忍びで冒険者をやっている時に度々一緒に行動する人達でしたが、彼らは騎獣に乗って戦う職業を取っていましたから、その分ではありますが、あの戦力差でも持ちこたえてくれた方です。」
?なんか気になる言い方だな?
「職業って、登録するのに特別な理由でもあるの?」
「え?・・カリンちゃんから聞いて無い?」
俺の質問にリンナが不思議そうに聞いてきた。
「ん?俺は登録は簡単に出来るって事と、ワザと弱い職業になって危険を回避できるって事が有るって事は聞いたけど?」
「他に何かあったっけ?リンナちゃん?」
「カリンちゃん(さん)・・・」
何か知らんがリンナ達姉妹がジト目でカリンを見ている。
これは重要な事を話して無いような感じだな。
「まあ、王都に行っても協会の受付で聞けば解かる事だから良いけど・・。その前に少しだけ言っとくよ・・って、私が居た時と何か違いが有るといけないからお姉さまが話してくれませんか?私が知っている物との差異が有ればその都度聞きますから」
「ええ、分かったわ」
リンナのパスにユリアさんは頷いて話し始める。
「先ずは職業の種類ですが、カリンさんに聞いたと思いますが多種多様で一概にこれが凄いと言う物は有りません。しかし、どの職業にも僅かなボーナスが有ります。それが職業別スキルと、熟練度ボーナスです。」
「・・・はい・・?」
なんだ?その単語は。
もう完璧にゲームの世界じゃないか。
更にユリアさんの説明は続く。
「職業別スキルは、勿論その職業に成れない人には得る事は出来ませんが、自分が鍛練を続けて行く内に成る事が出来る職業が増えれば、場合に由っては今までどんなに鍛練しても使えなかった技術が仕える様になります。例えばリンナの魔道具製作の様なスキルも、職業別のスキルの組み合わせで使える様になる事も有ります。」
なんか、寿命が長い種族が果てしなく便利に成りそうな気がするのは気の所為か?
「例えば?」
「・・・そうですね・・・、私が知る限りでは、一定のレベルの魔術師になれる実力が有れば、後は鍛冶系統の職業に登録出来れば、鍛練次第ではありますが、魔道具製作が出来るようになります。・・・まあ、その場合は同じ魔道具でも武器専門の魔道具に成りますがね?」
なるほど、関連した物を鍛練しないと思ったスキルは使えないという事か。
「職業を登録するのはどの職業でも出来るのか?」
「・・カリンさん?これも話してないんですか?」
「ん?属性の事なら話したよ?」
「じゃあ、実際に感応石で説明した?」
「・・したと思うよ?」
二人でカリンを詰問するが、今度はどうも俺の方が理解して無いらしい。
「なあ、如何いう事だ?」
「ああ、カリンちゃんは説明したって言ってるから、多分ケイタ君が馴染めないという事で理解できてないんだと思うから、私が説明するよ」
「おう、頼む」
「感応石で属性は調べたよね?確かケイタ君は全属性を使える、極めて稀な虹色の反応を示して、得意な物が、鉛色だったって言ったっけ?」
「ああ、確かそうだった」
改めて聞くと、粗方の予想は出来るな。
「鉛色は私も記憶にないから、それは本当に協会の方で調べて貰うとして、虹色が全ての属性に適応してるって事は、極めて行けばケイタ君は全ての職業を選び放題って事だ。・・・まあ、鍛練を重ねないと、増える事は無いけどね?・・それはそうと、そっちの護衛の人達は自分の属性は分かってるの?」
リンナが美空達の方を向いて聞いて来た。
まあ、分かってるのもあるがこいつ等が調べ出したらそれこそ大事だろう。
興味は有るからこれも時間が有る時に感応石で調べさせようか。
「私らは良いわよ。大体の属性は分かってるし、ヘタしたその石が砕けるかも知れないしね?魔力の反応過多で。」
「ですね」
「恐らくな」
どうやら三人とも俺と同じ考えの様だ。
「じゃあ、続きをいうと、基本は自分の属性に関わってる職業しか登録は出来ないの。そして、得意な属性はそのバーナスが少し加味される。ホンの少し、分からない位だけどね?だけど、確実に能力は上がるから、本当に命懸けでやる依頼や、調査の時は自分の本領を発揮できる職業に就く事を勧めるよ。生存確率を上げるためにもね?」
「ふ~ん?・・で、職業に就いたとして、得られるスキルはどうやって解かるんだ?」
「それは実際にやってみないと分からない。魔法が使えない人は発動しないのと同じで、出来ない技術はどんなに足掻いても出来ないし、もし、出来る筈の職に就いているのなら、少しずつでも確実に技術は上がる筈だ。だから、ケイタ君の場合、どんな事にでも興味を持った物は取りあえずやってみると良い。もし、少しでも出来て、それに興味を持てばその職業から経験を積んでいくのも手だ。」
なるほど、それで危ない依頼を受けないといけない時は予め弱い職業で登録しておけば無闇にその人を指名しないって訳か。理には適ってるな。
そして、今まで聞いたことを加味すれば、ランクが高い者はそれだけ色々な便利職業に就いて居たって事だ。
後はランク別の基本レベルだな。
基本のレベルが低ければ、フリーで自分を鍛える方が色々と速そうだ。
「じゃあ、後はランク分けの基本を頼む」
「ええ、冒険者の基本は見習いのEから始まって初心者のD、一人前のC、熟練者のB、戦闘特化と言えるA、国王や、貴族が戦争時に自分の国を防衛して貰う時に雇う位の、傭兵と言えるほどの戦闘狂がSですね。それと、その上にも居るには居ますが、あれを人と呼ぶのは憚られるので、今は無視しましょう。まあ、Sランクはこの国で5人いますけど、その5人はハッキリ言ってAランクとは桁が違うから、もし知り合えたら実力を見る意味で仲良くしたらいいかもしえませんね?戦争の相手国の10神衆も私の密偵の話だとSランクの化け物揃いって話ですから」
成るほど、確かにあの程度の実力者がトップレベルなら、今頃この大陸は魔物で埋め尽くされているだろうから、納得の出来る話だ。
だが、一段階クラスが上がっただけでそこまで強くなるだろうか?
しかも、人とは呼べない様な奴らまで居るとは・・見てみたい気がするな。
しかも、相手国の精鋭と思しき奴らが、この国の倍の数居るのに悠長に準備をしてから仕掛けるっていうのも気にかかる。
俺ならやる気になれば、戦力を一点集中でぶつけて、戦勝国の特権を使って全てを自分の物にするが・・・そう言う考えは無いのだろうか?
それとも、ユリアさんが言う程Sランクと言う者達も凄い奴らじゃないのか・・まあ、これは後で聞けば解かるか。
丁度ユリアさんがまた話し始めそうだし、聞いてから疑問をぶつけよう。
「あと、戦力関連として魔道兵器と言う物が我が国には有りますが、これは予め魔力を装填していれば誰にでも撃てる、謂わば虎の子の兵器です。そして、魔力が満タンの場合は属性に由っても異なりますが、火ならこれから行く王都が一撃で火の海を通り越して焦土となる位の威力です。そして、それには劣りますが、国王が城の地下施設から見つけ出したハルカと言う、眩いばかりの威圧感を持った少女が我が国の切り札的戦力ですね」
な!ハルカだと!!?
ま、まさかとは思うが・・・
俺は嫌な予感がしたので、ユリアさんに遥の詳しい容姿を聞くことにした。
「なあ、ユリアさん。そのハルカって子の姿、能力、他色々を出来るだけ詳しく教えてくれ。」
「??良いですよ?先ず、背丈はそこの美空さんを少し小さくした程度で・・そう言えば、良く見れば美空さんとハルカと言う少女は似てますね。着ている服が、あっちはドレスの様な服を着ていた事が違いでしょうか?あと、能力は前面に風の障壁を張ることが出来ます。・・・そう言えば美空さんの能力も同じような物でしたね。それに式神を多数作れる能力も同じですし・・・」
どうやら、説明している途中で気が付いた様だ。
多分ユリアさんの考えで合っている。
俺の持ってるカードの召喚体は、ゴールドカードのみだが、他にもプラチナカードと、シルバーカードが有る。
因みに実力的に強いのは、ゴールド、シルバー、プラチナの順だ。
そして、話題の遥は美空と同じパラレルアースの召喚体で、シルバーカードの奴だ。
因みに美空の妹という設定で、仲が物凄く悪い。
美空とほぼ同じ容姿なので、少々力は弱いが育てればいいか?と思って付いて来るか聞いた所・・・
「お姉が居るならイヤ!私を連れて行きたかったらお姉を外して!」
と言ったので、仕方ないから諦めた奴だ。
まあ、美空よりは弱いし、プレイヤーが育てなければ実力が上がらない彼女たちと同じ位の実力なら、他の10神衆も大したことが無いのかもしれない。
実際に会ってみないと如何とも言えないから、今は置いておこう。
チラッと美空を見たけど、何も言って来ない所を見ると、半分諦めているのかもしれない。
まあ、それなら俺が気を遣う必要もないが・・
けど、俺達には脅威でなくても、この世界の者達には結構な脅威だと思う。
なにせ、美空の実力の半分位だとしても、この世界の者にとっては脅威だろうから・・・
「まあ、その情報のお蔭でこの国の切り札扱いになっている者の実力の大体は把握した。後は実際に見てから考える。・・・けど、戦闘とか無かったのか?見つけてから、それだけ?」
「・・はい・・。確かに氷漬けに成っていた所を、周りから溶かして助け出したらしいですが、これといって争う事は無かったらしいです」
「らしいってのは?」
「私たちもつい先日陛下にその少女を見せて貰って、それぞれの私兵と模擬戦をさせられたんです。そして、我々4貴族側の騎士団が何をやっても倒せなかった少女が、陛下にのみ膝を折って傅いていたので、その少女が陛下の切り札なのだと実感させられました。」
ほ~、遥がそこまで強いのは意外だな?
それとも、その騎士団が余程弱いのか?
出来れば前者でないと、この国がヤバイが・・
「何はともあれ、戦力についてはこの位か?」
「・・そうですね・・王子と王女も強い事は強いですが、ハルカさんと比べればかなり下に成りますから、これ以上の戦力は無いと言えば、これで終わりですね。Sランクの冒険者も、所詮はハルカさんと同等ではありますが、強さだけなら同じくらいですから。・・・総合的にはハルカさんが圧倒的に上ですが・・」
まあ、式神で戦力を増やせるからな。
かなりの戦力アップには成るから、相手する奴は苦労しそうだし。
「・・では、他にないなら少々話疲れたので、小休止にしますか?」
「ああ、少し、休憩したら他に聞く事考えとくよ。」
「ええ、何なりと聞いてくださいね?」
そう言う事で、話を纏めるために俺達は4人でしばし作戦タイムをすることにした。
長くなるので、分割します