最終話 透明人間とボッチ少女
どこかの世界のどこかの時間。
二人の年老いた男女が公園の椅子に座ってのんびりしている。
にこにこしながら老人が言う。
「百合亜婆さんや、色々なことがあったのう」
それを聞く老婆もにっこりと笑う。
「ええ。ありましたね。あたしは何億回言っても足りないから言いますけど、あなたと一緒になるなんて思いませんでしたよ。そんなこと当時のあたしが知ったらショック死してましたよ」
「はっはっは、そうかもしれんのう。この世界で義賊やる前のわしはすけべなことばっかりで……」
「ええ。でもね、こっちの世界に来て虐げられてる人や苦しんでる人を助ける貴方を見て、こう、ほだされたというか……」
「はっはっは、色んなことがあったのぅ」
「ええ、あたしが壊滅させた超能力集団の策略により異世界に流されてから色んなことがありましたね。義賊やったり、孤児院を開いたり、商売をやったり、国を作ったり」
「幸せじゃったよ婆さん。あんたみたいなべっぴんさんとここまで来れて……」
「ええ。ええ……。あらお爺さん?お爺さん!!誰か!」
こうして異世界に流れ着いた透明人間は幸せに死んだのだった。
◆◆◆◆◆◆
「ありがとーお姉ちゃんー!」
「ええ。気を付けて帰ってね」
これはどうしたことか。気づくと若い頃の百合亜が幼女を見送って手を振ってる。
「ここは……日本……?」
「そりゃ日本よ。あんた全裸やり過ぎて頭おかしくなったの?」
ああ懐かしい。百合亜は昔はこういう虫を見るような目でわしを見ておった。
たまらんのう。この視線にすっかり調教されてしまったんじゃ。
おっといかん。そんなことよりこの現状の把握じゃ。
「ば、婆さん!わしらは何故日本にいるんじゃ!?それに何故わしらがこんなに若く?」
「ば、婆さん!?あたしはまだぴちぴちの女子高生よ!?」
もう八十も超え、子供を八人も産んだ婆さんが女子高生とか痛いことを平然と言うので呆然としてしまう。
「はあ……。誘拐犯達を華麗にあんたがぼこぼこにしたから少しは見直してたのに……。なんであんたいきなり腰を曲げたり変な話し方してんのよ。老人ごっこ?疲れたからまた明日ね」
百合亜には記憶が……ない?
わ、わしは逆行してきたというのか!?
あるいは今までのは泡沫の夢だったのか。
「はあ、今日は疲れたわ。さっさと帰りましょう」
ふっ、ならせいぜい楽しませてもらうぜこの新しい百合亜との日々をよ……!!
「ああ、帰ろうか百合亜」
「あ、あんた私の名前を……」
「いいだろ?もう友達なんだから」
「と、友達……?」
「二人であんな大立回りしたんだ。もう親友と言っていいくらいだ」
「親友!?」
「ああ、明日から宜しくな親友」
「……うん。よろしくね。啓介……」
わしはもう一度登り詰めるのじゃ!この百合亜坂をのう!!
読んでくれた方々、ありがとうございました。
久しぶりにノリノリで書いたので本当に楽しかったです。
本当にありがとうございました。
また会うことがあれば宜しくお願いします。