第一章
欲望は果てしない。それはもはや言うまでもないことだが、人類のそれは遥かに行き過ぎてしまったらしい。
コロニックボム。
西暦2576年に完成してしまった、人類史上最強最悪の大量破壊兵器はそう名付けられた。
核融合により膨大なエネルギーを放出するそれは、たった一発で地球のおよそ半分の体積を、跡形もなく吹き飛ばしてしまうとゆう計測結果がでている。
そしてかろうじて残った大地も膨大な放射能に汚染され人はおろか生物がまともに生きていける環境ではなくなってしまう。
もっとも半分になった地球は重力や軌道などの問題から、そのまま残るとは考えられないが。
ともあれ、あまりにも強力な兵器の誕生は逆に人々から争いを奪う結果となった。
戦えば、敵も味方も第三者も等しく破滅。
それでもなお戦おうとする程には、人類は狂っていなかったのである。
ただ、だからといって世界中から争いをなくしてしまえるほど、人類は賢くもなかった。
人の歴史は闘争の歴史とイコールである。
文明の発達の裏にも、文化の発展の陰にも、常に醜い争いは付きまとった。
本能的に人が持っている闘争本能を抑えることは不可能だった。
そこで人々、とくに各国のお偉いさん方は過去に学ぶことにしたらしい。
―――すなわちローマの悪名高き「コロッセオ」に―――
太平洋に浮かぶ巨大な人工島。周囲を高くそびえる壁に覆われたその内側に、各国100人ずつの兵士を投入し、殺し合いをさせることにしたのだ。
さらに科学の方針の変化がその「戦場」にさらなる悲劇をもたらした。
コロニックボムの開発で化学や物理学を突き進めることに恐怖した人類は、その代替としての役割を「生物学」に求めた。
人の使う道具を発展させることよりも、「人という存在そのもの」を進歩させようとしたのである。
そこで人間が目を付けたのが、遺伝子である。
21世紀以後も相変わらず、たったの3%しか解析されていなかった遺伝子の残り97%に進化の手掛かりがあると考えたのである。そしてそれは結果的に正しかった。人の体に秘められていた遺伝子を解放していく中で、特異な力を持つものが現れた。まぎれもなく物理法則に反していながらも、生体科学的には存在しうる力。人々はそれを「GL」と呼んだ。
たとえばここに「任意の場所に、力場を発生させる」というGLを持つ者がいたとしよう。
自在に力場を形成するなど明らかにありとあらゆる物理法則に反している。
しかし、その体を調べてみると普通の人間には存在しない、「力場を生成するための器官」が確認されるのだ。つまり「力場を作り出す器官をもつ」とゆう遺伝子が人間の細胞の中に埋もれていたのである。
そして遺伝子をいじった上でGLが発生する最低年齢の、6歳以上の少年少女が、人類の闘争本能を満たすための生贄となっているのである。