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運だけ勇者  作者:


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3/5

木工の町 ローデン

魔王の在り処など知らない勇者カイルは、とりあえず魔物が比較的多い北へ向かって進み出した。

馴染みの街は南の道だったので、今回は反対方向の北へ向かったのである。


勇者はタラタラと歩き出した。

二股に分かれた道に出た。

勇者カイルは剣を棒のように立て、倒れた方の道へと歩いた。

次第に木立の道に差しかかった。

カイルは鼻歌を歌いながら歩いている。

〜勇者になったらモテモテだ。ボンキュッボンのお姉さん待っててね〜

勇者カイルはまだまだ元気である。


いきなりスライムが現れた。

╔════════════════╗

║     戦いますか?     ║

║     はい/いいえ     ║

╚════════════════╝


『「はい」コマンドは選択できません。自動再開されました。』


勇者カイルは気付いていない。

スライムが飛び掛かった。

「ラッキー! 銅貨落ちてた。」

カイルが屈んだため、スライムの攻撃は勇者の頭上を空振りした。

そのまま勢いよく木にぶつかり、木の下にあった尖った石に刺さって、そのまま死亡した。


『勇者が勝利しました。

スライムは高級薬草を持っていました。』


キョロキョロと誰もいないのを確認して、勇者カイルはそのお金を懐に仕舞った。

そして、ふと石の下に高級薬草が落ちているのを見つけ、それもちゃっかり懐に仕舞ったのである。


『勇者は薬草を手に入れました。』


勇者は臨時収入に浮かれつつ、歩き続けた。

日が落ちかけた頃、次の町に到着した。


この町は、木工の町ローデン。

あちこちに工房が並ぶ。大きくはないが、労働者が多いのか酒場がとにかく目立つ。

勇者はいそいそと冒険者ギルドに向かった。


カランカラン。

寂れたドアがギィっと開く。

「いらっしゃい。」

50年前ならきっと美人だっただろう老婆が、チラリとこちらに目をやった。

「何しに来たんだい?」

「この薬草を換金したくてな。」

さっと懐から薬草を取り出す。

「どれどれ。これは……凄いじゃないかい。」

「幻の薬草じゃないかい。失った手足さえ再び生やしちまう高級ポーションの材料だよ。お前さん、これどこで見つけたんだい?」

「偶然ひろ……いや、こちらの企業秘密さ。それより、いくらになるかい?」

「大金貨一枚だね。」

「いいね。なら金貨100枚で渡してくれるかい?」

「いいさ。金庫から金を持ってくるから、ちょっと待ってな。」

俺は、今晩の酒とおネェちゃん達を想像した。

ドス。

金貨の袋が目の前に置かれた。


「ちなみに、魔王が復活したって話は聞かないかい?」

「お前さん、何言ってるんだ。魔王がいなくなって魔物も少なくなって、冒険者ギルドもこの有様さ。冒険者を目指す人間なんて僅かだよ。」

50年前ならきっと美人だった窓口の老婆に、鼻で笑われてしまう始末。


「ありがとよ。ちなみに、美人がいる酒場は知らんかい?」

「それなら、ちょうど私の姪がいる酒場があるよ。出てすぐ右の、エールと豚が描かれた看板の店さ。焼き豚が名物だよ。」


俺はそそくさと酒場に向かう。

「あの婆さんの姪なら期待できるぞ。いひひ……久々のおネェちゃんタイムだ。腕が鳴るぜ。」

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