木工の町 ローデン
魔王の在り処など知らない勇者カイルは、とりあえず魔物が比較的多い北へ向かって進み出した。
馴染みの街は南の道だったので、今回は反対方向の北へ向かったのである。
勇者はタラタラと歩き出した。
二股に分かれた道に出た。
勇者カイルは剣を棒のように立て、倒れた方の道へと歩いた。
次第に木立の道に差しかかった。
カイルは鼻歌を歌いながら歩いている。
〜勇者になったらモテモテだ。ボンキュッボンのお姉さん待っててね〜
勇者カイルはまだまだ元気である。
いきなりスライムが現れた。
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║ 戦いますか? ║
║ はい/いいえ ║
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『「はい」コマンドは選択できません。自動再開されました。』
勇者カイルは気付いていない。
スライムが飛び掛かった。
「ラッキー! 銅貨落ちてた。」
カイルが屈んだため、スライムの攻撃は勇者の頭上を空振りした。
そのまま勢いよく木にぶつかり、木の下にあった尖った石に刺さって、そのまま死亡した。
『勇者が勝利しました。
スライムは高級薬草を持っていました。』
キョロキョロと誰もいないのを確認して、勇者カイルはそのお金を懐に仕舞った。
そして、ふと石の下に高級薬草が落ちているのを見つけ、それもちゃっかり懐に仕舞ったのである。
『勇者は薬草を手に入れました。』
勇者は臨時収入に浮かれつつ、歩き続けた。
日が落ちかけた頃、次の町に到着した。
この町は、木工の町ローデン。
あちこちに工房が並ぶ。大きくはないが、労働者が多いのか酒場がとにかく目立つ。
勇者はいそいそと冒険者ギルドに向かった。
カランカラン。
寂れたドアがギィっと開く。
「いらっしゃい。」
50年前ならきっと美人だっただろう老婆が、チラリとこちらに目をやった。
「何しに来たんだい?」
「この薬草を換金したくてな。」
さっと懐から薬草を取り出す。
「どれどれ。これは……凄いじゃないかい。」
「幻の薬草じゃないかい。失った手足さえ再び生やしちまう高級ポーションの材料だよ。お前さん、これどこで見つけたんだい?」
「偶然ひろ……いや、こちらの企業秘密さ。それより、いくらになるかい?」
「大金貨一枚だね。」
「いいね。なら金貨100枚で渡してくれるかい?」
「いいさ。金庫から金を持ってくるから、ちょっと待ってな。」
俺は、今晩の酒とおネェちゃん達を想像した。
ドス。
金貨の袋が目の前に置かれた。
「ちなみに、魔王が復活したって話は聞かないかい?」
「お前さん、何言ってるんだ。魔王がいなくなって魔物も少なくなって、冒険者ギルドもこの有様さ。冒険者を目指す人間なんて僅かだよ。」
50年前ならきっと美人だった窓口の老婆に、鼻で笑われてしまう始末。
「ありがとよ。ちなみに、美人がいる酒場は知らんかい?」
「それなら、ちょうど私の姪がいる酒場があるよ。出てすぐ右の、エールと豚が描かれた看板の店さ。焼き豚が名物だよ。」
俺はそそくさと酒場に向かう。
「あの婆さんの姪なら期待できるぞ。いひひ……久々のおネェちゃんタイムだ。腕が鳴るぜ。」




