第二話 勇者と魔獣
光が増していき、俺は目を閉じた。
異なる世界。つまりは異世界だろう。
異世界と言えば空飛ぶドラゴン。大きな建造物。
(ちょっと楽しみだな。)
「着きましたよ!目を開けてください。」
(いざ、異世界へ!)
目を開けると、そこには長閑で緑が広がる草原だった。
「ここがお前の世界なのか?」
「そうですよ、何かありましたか?」
(そうだよな。これが普通だよな。)
「もしかしてガッカリしましたか。」
「いや。それより勇者って具体的に何をするんだ?」
「そうですね、具体的にと言ってもひとまずは魔獣を討伐するだけで良いですかね。」
「魔獣を討伐するだけって、俺は武術はもちろん、スポーツすらまともにやったことないんだぞ?」
「そこはご安心を。私が…えっと名前ってなんでしたっけ?」
「とうごだよ。」
「そう!とうごさんを全力でサポート致します!」
そう言うとヘルメースはふわふわと浮遊しながら俺に近づいてきた。
「さぁ、お手をお繋ぎください!」
「なんだ?握手か?」
ヘルメースの袖で隠れている手らしき部分を掴んむ。
その瞬間ヘルメースが光を放つ。目を開けると握っていたはずの手には剣が握られていた。
「こうして、私が剣になる事でサポート出来るのです!」
「訳が分からないよ…」
「まぁまぁそう言わずに!これで魔獣を倒せるんですよ。」
(ツッコミしたくはあるが…)
「まぁ良いか。」
「それじゃ!魔獣が発見されたところに行きましょう!」
―――
ヘルメースの指示の元、示された道を歩く。
その間に疑問だったことを聞くことにした。
「ひとつ聞きたいんだがいいか?」
「はい!私に答えれることなら何でも!」
「勇者の仕事の一つが魔獣討伐なんだろ?でも、それって俺じゃなくて冒険者とかに頼めば良いんじゃないのか?」
「いい質問ですね…実は魔獣は通常では倒すことができないんですよね。」
「倒すことが出来ない?そんなのにどうやって対抗するんだ?」
「魔獣は異界の者にしか倒せないんです。つまり、現在のこの世界では貴方しか倒せないんです。」
(そんな事が実際にありうるのか?誘い文句に聞こえるが…今はコイツの話を信じるしかないか。)
「そんな事が有るんだな。」
「えぇ、怪しく感じると思いますが、それが魔獣というものなのです。」
ヘルメースと会話していると、森の奥から声が聞こえてきた。
(男性の悲鳴…!?)
「恐らく魔獣に襲われているのでしょう。急いで行きましょう。」
俺はヘルメースを握ったまま森の奥へ入った。
―――
森の奥に入ると、騎士団らしき人々が黒い狼に襲われていた。
「攻撃が効かなくても弾くことは可能だ!全員、身構えろ!」
後ろを見ると何名かが血を出して倒れていた。
十中八九、奇襲を仕掛けられたのだろう。
「早くした方が良いな。」
「とうごさん、ここは魔獣に気付かれてない内に奇襲を仕掛けましょう。」
「それが良さそうだな。」
魔獣の背後に回り、剣を構える。
「いいですか、魔獣の胸部を狙ってくださいね。それ以外では倒し切れませんから。」
「あぁ、分かった。」
俺は剣を強く握り直した。
勢いよく飛び出して魔獣の胸部をしっかり狙う。
しかし、野生の勘だろうか。魔獣は簡単に避けてしまった。
魔獣はこちらに鋭い視線を向ける。本気で狩りするように。
俺は恐怖で足がすくんでしまった。
(動かねぇ…クッソ!)
「とうごさん!動かないなら相手のカウンターを狙って下さい!」
剣から声が聞こえてきた。
こちらも相手に視線を向ける…
すると、勢いよくこちらに駆け寄ってきた。
俺は剣を構えてタイミングを見計らう。
(…今だ!)
そう思った時には既に剣が振り下ろされていた。
魔獣の頭から胸部にかけて斬られた。
魔獣は黒い煙とともに消え去った。
「やりましたね、とうごさん!勇者としての初討伐ですよ!」
「やった…のか?」
確かに魔獣は俺の手で倒した。そう、倒したのだ。
「…!、安全を確認!残ったものは負傷者の手当を!」
リーダーらしき人物が部隊に指示を送る。
「魔獣を討伐した貴方は一体…」
そのリーダーらしき人物が話しかけてきた。
「いや、俺はそんな大した者じゃないんで。」
俺はその舞台から急いで離れた。
「とうごさん…まだ感謝の言葉を貰ってませんよ…」
勝手に動いた腕の感覚が不快に残っている。
俺の初仕事は幕を閉じた。




