第一話 世界
ある日の放課後。学校のグラウンドでは部活動の明るい声が聞こえてくる。俺はそれを横目に教室のゴミを校舎裏に捨てに行った。
校舎裏はグラウンドとは違い人の声すら聞こえなかった。
「ふぅ、こんなもんか。」
ゴミを校舎裏のゴミ捨て場に置き家に帰ろうとしたその時だった。
「…誰かいるんですか?助けてください!」
(なぜ校舎裏に人の声が?いや、まずは助けることが優先か。)
「大丈夫かー?今行くからな。」
俺は声のする方向へ向かった。
声の主と目が会った瞬間、時間が止まったかのように感じた。
一瞬猫に見えたが、よく見ると全然違う。
白い体は抱き心地の良さそうなフォルムで、手は長い袖で見えない。そして、耳は長く、壊れたフェンスに絡まっていた。
(ぬいぐるみか?)
そう思っていると話しかけてきた。
「そこの人ぉ助けてください…耳が絡まっててぇ。」
俺は直感した。コイツに関わると今までの平穏な日常は消えてしまうと。
「まず聞いていいか、お前はなんだ?」
(質問の答え次第ではすぐ帰ろう。)
「私ですか?私はこことは異なる世界から来ました。ヘルメースと申します!」
ヘルメースと名乗る人物が手を上げたその瞬間。
「にぎゃぁぁ!?」
体を動かしたせいで耳が引っ張られていた。
「…何してんだ。」
「耳が絡まってたのを忘れてましたぁ…」
「んで、異なる世界から来た?奴がこの世界に何の用だ?」
「その質問には答えと一つ願いを聞いてもらっていいですか?」
「私の世界では魔獣と言う魔王の手下が世界の脅威となっているのです。なので!あなたには私の世界を救う勇者になって欲しいのです!」
「よし!分かった。帰る。」
「えっ?!待ってください今ので断るんですか!?」
「俺以外になりたい奴や向いてる奴がいるだろ。そいつに頼めばいいさ。」
(あいつなら喜んで引き受けるだろうし。)
「あなた、貴方にしか頼めないんですよ!他の人ではなく、貴方自身にお願いしているんです!」
「…俺にしか頼めない?」
「そうです!それに、私今耳が引っかかってますし…」
(あいつじゃなくて俺にしか頼めないか…)
俺は拳を握って言った。
「…分かった。なってやるよ、勇者に!」
「ありがとうございます!それで、まずは私を助けて貰っていいですか?」
俺はフェンスに絡まったヘルメースの耳を解いた。
「それじゃあ、行きましょう。」
ヘルメースの背後で黒い渦が巻き始め、空間が開いた。綺麗な草の匂いが押し寄せた。
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