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「カグヤと彼氏と日本史の謎」(セーラー服と雪女 第21巻)  作者: サナダムシオ


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9/22

⑨ 武蔵の選択

「さあ、ムサシ様、いよいよ約束の日になりましたよ。」

 カグヤは嬉々として、洞窟内の武蔵に話しかけた。


 今年で61歳になる宮本武蔵は、実は末期の肺ガンを患っていた。そしてどうやら、コレが最近の不調の原因のようだった。


 しかし、カグヤ・イシュタルにとって、そんな事は、些末なモンダイに過ぎなかった。

 何故なら、彼女は、不老不死に近いカラダに成れる薬"エリクサー"を、この日のために、持参していたからだ。


 何しろコレさえ飲んでもらえば、どんな病気も、たちどころに完治してしまうのだ。そして体力も30歳程まで戻り、自分とほぼ同じ"300年の寿命"を生きてもらえる。


 早く武蔵様とそうなりたい。

 でも歴史への影響を考えて、我慢していたのだ。

 彼女はただ、今か今かと、今日までその時を、健気にも待っていたのである。


 だが、その彼女の提案を受けた武蔵の返答は、予想外のモノだった。

「愛するカグヤよ、済まない。儂はこの60年余りの人生で、充分納得し、満足した。よってこれ以上の延命は、望まぬ。」


「そんな、私との人生は?遺されたワタシはどうなるのですか?」

「お主は、未だ、若く美しい。いくらでも、儂の代わりは見つけられようぞ。」


「伊織は?アナタの息子の事も、どうか考えてあげて!」

「アヤツは、儂より遥かに腕が立つし、ナニより賢い。心配無かろう。」


 それ以上、カグヤがナニを言っても無駄だった。

 一度こうと決めたら、テコでも動かない。

 宮本武蔵とは、まさにそういうヒトだった。


「…よく…分かりました。」

 余りの事に、放心のカグヤは、やっとの事で、そう答えたのだった。


 宮本武蔵は結局、1645年6月13日に61歳でこの世を去り、彼の最後を看取った宮本伊織も、1678年5月18日に、65歳で老衰により、その生涯を閉じたのだった。


 彼もやはり、不老不死になる事を希望しなかった。そして、父上と同じように、自然に任せて死にたいと、カグヤに言ったのだった。

 

 何でも普通のニンゲンの三倍の能力をもち、超能力まで備えていた彼も、皮肉な事に、寿命だけは、ヒト並だったようである。


 カグヤ・イシュタルは途方に暮れてしまった。

 長年目標とし、楽しみにしていた大切な願いが、とうとう何一つとして、叶わなかったからである。


 やがて、伊織の死を見届けた彼女は、江戸時代の肥後の国に、ミケーネの宇宙船を呼び出すと、失意のまま、故郷の惑星ニビルへの帰路に就いたのだった。

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