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「カグヤと彼氏と日本史の謎」(セーラー服と雪女 第21巻)  作者: サナダムシオ


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⑥ 武蔵を破る者

 しかし、まさか、その安定した日々のパターンが、崩れる日が来ようとは、伊織は想像する事も出来なかったのである。


 その剣士の名は、夢想権之助と言った。

 20年程昔、まだ未熟な頃に、武蔵に、まるで遊ばれるように、破れた事があったらしい。


 そのリベンジのために、やって来たという訳だ。

 諦めの悪いヤツめ。伊織はそう思ったが、武蔵は「相手をしてやる」と言った。武蔵は、そういうチャレンジ精神を持つ者の事が、嫌いではなかった。


 そして武蔵は、何の気まぐれか、道場ではなく、自らの屋敷に招き入れ、その庭で試合をしてやると言い出したのだった。


 そう言う訳で、武蔵と権之助の試合を、縁側で座って、伊織とカグヤが見届ける事となった。


 権之助のエモノは、まるでヤリのように長い杖であった。なので、武蔵も真剣ではなく、大小二本の木刀を使う事にした。


 以前の試合時では、権之助は刀を使ったが、その攻撃を武蔵の二刀で受け止められ、その後、額を打たれて負けたらしい。


 その反省を踏まえての、長い杖という訳だ。

 権之助は、それで槍のように突いたり、薙刀のように払ったりして、次々に攻撃を繰り出した。


 だが、武蔵は全ての攻撃を見切り、跳んだりしゃがんだりして、避けきってしまう。ただ、その分、自らの攻撃の機会も、なかなか得られないようだった。


 勝負の動くきっかけは、一瞬の出来事であった。

 権之助が低く構えたかと思うと、左手で地面の砂を掴み、さっと武蔵の顔に向けて撒いたのだ。


 武蔵が視界を失った瞬間に、権之助の長い杖が、その喉元に突き付けられたのである。


「それまで!」

 伊織が試合を止めた。


「私の勝ちで、よろしいですな?」

 権之助が満足気にそう言って、ニヤリと笑った。

「よもや、卑怯なり!とはおっしゃいませんよね?武蔵殿。」


「うむ、構わんぞ。儂も若い頃、随分お世話になった手法ゆえ…コレも兵法というヤツじゃ。」

 武蔵もそう言って笑った。


「私は…こんな結果…認めませんよ。」

 伊織は許せなかった。


「夢想権之助とやら、私と勝負なさい!私に勝てたら、その時初めて、宮本武蔵の円明流の負けを、認めましょう。」


 権之助は武蔵を見る。

 武蔵は頷いて見せた。


「いいでしょう。出る杭を打つのは、先輩兵法者の務め故。」


 その返答を聞くや否や、伊織は木刀を掴んで庭に降りていた。代わって武蔵が、縁側からカグヤと見届ける事となった。

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