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「カグヤと彼氏と日本史の謎」(セーラー服と雪女 第21巻)  作者: サナダムシオ


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④ 鳥族と猿族の雑種

 その道場は武蔵の希望で、天井高を通常よりかなり高く設計されていた。言わば、ちょっとした体育並みだったのである。


 その注文理由は、やはり、武蔵自身が、縦方向への動きを、彼の武術に取り入れていたからであった。


 しかしその特殊設計すら、伊織の肉体的なポテンシャルの前には、全く足りなかったのだった。


 しかも、今の彼は全力を出していない。

 本気でやったら、一体どうなってしまうのか。

 今後の成長も、末恐ろしいモノが期待された。


「…以上だ。今後一切、儂に教えを請う事を禁ずる。」

「しかし、父上…。」

「クドいぞ!だが、武道以外なら、今後いくらでもチカラになってやる。儂を頼って良いからな。」


 武蔵は最後に、優しくそう言うと、先に道場から出て言ってしまった。

 残されて伊織は、暫くの間、その場に座ったまま、

一人で静かに涙を流していたのだった。


 と、そこへ、廊下の片隅で、一部始終を聞いて居た、カグヤが入って来た。

「伊織…。」

「母上様…。」


「ごめんなさいね。今起こった事は全て、私のせいなの。」

「母上が…なんで?」

「私が、ニンゲンではないからなのよ。」

「えっ。」


「見た目は似ていても、私は有翼人種である鳥族の末裔。つまりアナタは、トリとヒトとのハイブリッド…つまり混血なのよ。」 

「そう…なんですね。」


「しかも私は、その中でも戦闘に特化した一族。そして古来から、純血種より、雑種の方が優秀な個体が生まれるとされている。アナタは、その最たるモノなのよ。」

「…。」

 伊織はもう、何も言えなかった。


「武蔵様だって、決してイジワルな気持ちで、あんな事を言ったりしないわ。彼だって実の息子に自分の技を伝授したかったはず…でもソレ以前に、アナタの肉体的なポテンシャルが高過ぎるのよ。"柔良く剛を制す"とは言うものの、チカラの差が大き過ぎるのよ。」

 

 実は、その影響はそれだけに留まらなかった。

 彼は頭脳も、ずば抜けて優秀だったのだ。 


 彼は江戸時代の書物を次々に読破して、あらゆる方面の知識を、あっと言う間に蓄えた。

 そして、程なくしてそれを、都市計画や、上様の政始に活かすことが出来るようになっていたのだった。


 武蔵からの推挙を待つまでもなく、彼の明石藩主、小笠原忠政の近習に出仕する事は、いつの間にか、待望されるようになっていた。


 歴史の記録では、15歳で初出仕とされている…もちろん、見かけ上の年齢と、自己申告によるモノであるが…ホントは6歳ですとは、口が裂けても言えない事であった。


 因みに、彼の出自についても、もちろん真実は明かせないので、カグヤが適当にでっち上げた記録をもとに、申告されたのであった。

 もっとも、実子ですと仮に言ったとしても、二人のパーソナリティの違いから、誰も信じないであろう。


 もちろん伊織のニセの故郷に、その種の記録を忍ばせて、歴史的な矛盾を隠した事は、言うまでもない。

 それは、いつも抜かり無い、サン・ジェルマンのアドバイスに基づくモノであった。

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