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「カグヤと彼氏と日本史の謎」(セーラー服と雪女 第21巻)  作者: サナダムシオ


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㉔ 八丁堀にて

 二人が到着した場所。

 そこは18世紀末の江戸。

 現在で言うところの、東京都中央区。

 八丁堀の近辺である。


 当時のこの辺りは、宿場町と言うよりも、武家屋敷、特に同心などの、役人の住まいが並ぶ地域であった。


 ただその程近くに、版画の出版元や、芝居小屋が有り、ウロウロしていれば、浮世絵師に出逢えそうな街であった。


 因みに同心は、下級役人であったため、立派な屋敷に住んでいても、案外カネに困っていたりした。

 まあそこが、今回のカグヤの狙い目であった。


 とある呉服屋の放蕩息子が、何日かお忍びで芝居見物三昧したくて、立ち寄ってはみたが、残念な事に、近くに適当な宿屋が無い。


 そこで、どうかコレを路銀に、幾晩か泊めては貰えないだろうか?…という話をでっち上げ、カグヤが砂金をチラつかせたところ、まんまと引っ掛かってくれた、同心の奥方が居たのである。


 場面が想像し難い方は、テレビ時代劇"必殺仕事人"の、中村主水宅を思い浮かべて貰うと良いだろう…ええっ?そっちも知らない?…これは失礼しました。


 もちろん、こういった小細工を、カグヤが自分で思いつくはずも無く…それは例によって、雪子の入れ知恵によるモノであった事を付け加えておこう。


 まあ、兎に角そんな訳で、当分の間、二人で夜露を凌ぐのに、困らない算段はついたのである。

 それに、ここから15分も程歩けば、日本橋があり、砂金の両替にも困らない。そういう点でも、良い活動拠点になった。


 それも、これも、雪子の事前のアドバイスのおかげなのである。


 それから三日程、カグヤと成雪は、毎日芝居小屋通いを続けた。


 しかし、場内や街中、行き帰りの道程など、二人でそれなりに気を配って、キョロキョロしてみたが、辺りに写楽らしき人物は見当たらない。


 それでも、芝居そのものは興味深く観劇できたので、そこそこ有意義な日々は過ごせていたのだった。


 そんなある日の事、芝居小屋の主が、観劇後に、成雪に声を掛けて来た。

 すわ、写楽の手掛かりが得られるかと、二人は期待したのだが、彼からもらった話は、全く筋違いのモノだった。


「兄さん、随分と熱心に毎日通ってるねえ。芝居が好きなのかい?」

「…ええ、とても興味深いてすね。」

 成雪は、当たり障りの無い返答をした。


「兄さん、中々イイ面構えをしているねえ。どうだい、芝居をヤッてみねえかい?」

「えっ?」


 成雪は困ってカグヤを見る。

 カグヤも困った。こういった場合の対処法は、雪子から聞いていなかった。


「実は今日、ウチの役者が一人他所に引き抜かれちまって、人手が足りなくなったところなんだ。セリフの無い端っこの役だ。人助けだと思って、手伝っちゃくれねえかい?」


「ああ、まあ、そういう事でしたら…。」

 成雪は、チラリとカグヤの方を見る。


 カグヤは、放蕩息子の連れの、お手付きの女中のテイで横に居たので、彼が大っぴらに、その場でお伺いをたてると、変に見えただろう。


 カグヤとしては、劇団内部から、写楽の情報を探るというのもアリかな、と考えたので、彼にウンと頷いて見せた。

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