㉑ 再び自己紹介
「初めまして。暫くの間、お世話になります。カグヤ・イシュタルです。」
「ボクはパートナーの成雪です。」
二人はそんな挨拶をした。
「初めまして。由理子です。」「その姉の香子です。」「杉浦鷹志です。」「村田京子です。」「…みんな、今日からよろしくね?」挨拶の最後に、雪子がまとめた。
どうやら、このフロアで仮眠をとるのは、彼女たちのようだった。
この時空では、雪子とサン・ジェルマンとの接点が無く、彼も名古屋テレビ塔にアジトを構えて居ないらしい。
そういう訳で、この研究所が、"チーム雪子"の集合場所になっているのだ。だから村田京子には、パートナーが不在だ。そしてどうやら、由理子と鷹志も、付き合っていないらしかった。
その時、突然、館内に警報が鳴り響いた。
そして『侵入者有り。侵入者有り。場所は敷地内中庭。警備班は急行されたし。』そんな館内放送が、天井の各スピーカーから流れたのだ。
カグヤたちが、急いで窓から外を見ると、そこに居たのは、黒いワーゲンビートル・タイプ1であった。
すると雪子が「ああ、あれは…。」と呟くと、左腕に着けたリングで連絡を取る。
「雪子です。今すぐ警報を止めて。アレは侵入者じゃなくて、お客様よ。警備班も戻してちょうだい。」
その後、「ちょうどイイ機会だから…。」と雪子に言われて、カグヤの部屋に居た一行は、皆で新しいゲストに会いに行く事になった。
一行が中庭に出てみると、ちょうど運転席から、とある人物が降りたところだった。
「いやあ、どうもすいません。なにぶん見切り発車で、まだ細かい時間まで、設定ができませんので…突然の訪問になってしまいました。」
笑顔でそう言う彼は、"あの"サン・ジェルマンだった。
「全くだわ。アナタ、もうちょっとで、ウチの警備班にハチの巣にされるところだったのよ。」
「お手間を取らせました。おや、カグヤさんたちも、先に到着してたんてすね?」
「はい。あの…私の知っているサン・ジェルマンさんですよね?」
「…そうですとも。ああ、クルマの色ですか?コレ、新型の5号車なんですよ。実は、"とある事件"の時、並行宇宙を旅する機能を、入手するチャンスに恵まれたんです。」
それは、あの"ロシア隕石事件"の事だった。
(第19巻 参照)
あの時、伯爵はミケーネの宇宙船の修理を手伝っていた。彼は、船の内部の回路の仕組みから、並行宇宙を移動する機能を推察していたのである。
相変わらず彼は、全く抜け目の無い、食えない男である。ひょっとしたら、全て計算ずくで、ミケーネと由理子を、隕石追跡に向かわせたのではないのか、とさえ思えて来るのだった。




