⑳ 並行宇宙
"照和"の時間軸。
それは、我々の良く知る"昭和"の時間軸のすぐ隣に有る、並行宇宙である。
そこは所謂パラレル・ワールド。
この、紆余曲折の激しい物語の重要人物、"始まりの雪子"の故郷でもあった。
まさに今、そこに、ミケーネの宇宙船から、カグヤと成雪は降り立ったのである。
とは言うものの、いきなり、オレンジ色の大きな亀の甲羅みたいな宇宙船が、街中に現れたら大騒ぎになる。
たから、名古屋市守山区の、森林公園脇に建つ、真田研究所のエントランス前に、ミケーネお得意の、横付けをしたのだった。
「じゃあ、楽しんで。ボクはこれで失礼するけど、また帰りたい時に、例のリングで呼び出してね。」
ミケーネはそう言うと、手を振って去って行った。
何時もながら、鮮やかな手際である。
エントランスに入ると、そこでこの研究所と隣りの監察局のまとめ役、真田雪子が、待って居た。
「ようこそ。我が研究所へ。有る意味、ココが私の、全ての旅路の出発点なのよ。」
にこやかに出迎えながら、雪子が言った
「今回は、お招き頂きありがとうございます。お言葉に甘えて、お世話になりますね?」
とカグヤが答える。
「ボクもお世話になります。よろしくお願いします。」
成雪も、後ろから顔を出して、挨拶した。
「何だか、ずいぶん可愛く仕上がったわね。まるで弟みたいな感じ。」
雪子は、そう感想を述べた。
「さあ、二人とも、エレベーターに乗って。」
雪子に誘われて、みんなで乗り込む。
「取り敢えず、二階の居住区に案内するわね。」
そういう訳で、皆でエレベーターから二階に出た。
そのフロアには、長い廊下を挟んで、左右に5部屋ずつ、合計10部屋あった。
「エレベーターから一番近い、この右側の部屋を使ってね?他の部屋は、いろんなヒトが、仮眠やら何やらで使ってるから…。」
雪子は、二人にそう言って部屋を見せると、一度中座すると言って、去って行った。
その部屋は、大きな窓が中庭に面していて、なかなか居心地が良さそうだった。
「いいお部屋ねえ。」カグヤが言う。
「そうですねえ。」成雪も、ソレに同意する。
暫く二人でノンビリしていると、コンコンと、部屋のドアがノックされた。
「どうぞ。」と、カグヤが答えると、懐かしい顔が、ドアから覗いた。
それは、真田由理子、真田香子、杉浦鷹志、村田京子、それに先程の雪子だった。
誰か足りないと思ったが、それは、ここに居るはずの無い真田雪村と、あのサン・ジェルマン伯爵だった。
そもそも、目の前のメンバーも、顔はアッチの世界と同じでも、雪子以外は、みんな初めましてなのだ。これが並行世界のややこしいところなのである。




