⑯ 二人の雪村
「それについては、私から説明しましょう。」
サン・ジェルマンが、横から助け船を出した。
「実は、先日、ミケーネ君から、こんな話をお聞かせ頂きまして…。」
かくかくシカジカと、これまでのカグヤと武蔵との、成り行きについて話す伯爵である。
「…それは大変だったわね…というか、むしろ残念な事をしたわね。」
雪子がそう言うと、カグヤはまた少し、悲しげな顔を見せた。
それを見た付き添いのミケーネが、彼女の頭に手が届かず、仕方なく腰の辺りを撫でる。
「そういう訳で、この天才科学者の私が、ひと肌脱ぐ事にしたんですよ。」
「ナルホド…ってまさか!?」
そう言ったのは雪村だった。
「そう、当然ですが、雪村君ご本人には、最初にお伺いを立てて、快く承諾を頂きました。」
「えっ、でも、こんなに早く…?」
心底驚いた様子の雪村。
「次いで、彼の時空を超えた姉で、且つ実質上の分身でもある雪子さんにも、もちろん事前に、話は通してあります。」
「そうね。確かに、ついこの間、私もその件に賛同したわ。」
雪子も、ソレを知っていた事を認めた。
「ちょっと、みんなして、何なんですか?アレとかソレとか…ハッキリ言って下さい!」
弓子が、柄にもなくイライラを募らせて見せた。
「"百聞は一見に如かず"と言います。今から、皆さんにお披露目しましょう。どうぞエレベーターで、地下3階の私のらラボへ。」
伯爵がそう言うので、皆は地下3階に降りて行った。
一行がラボに入ると、部屋の中央に、縦2m、横1m幅50cm程の、透明なガラスケースの様なモノが立っていた。
ただ、中に白いガスが充満しており、ナニが入っているのか良く見えない。
「では、お披露目します。」
サン・ジェルマンがそう言って、ナニやらスイッチをイジると、ケースの中のガスが次第に消えて行き、同時にケースの天板が持ち上がるようにして、上に開いた。
「きゃあっ!」
同時に、そこに居た、雪子とカグヤ以外の、女性たちから悲鳴が上がった。
「ああ、レディの前でした。コレは失礼。」
伯爵はそう言って、ケースから出て来たモノに、さして慌てるでも無く、白いガウンを掛けたのである。
そして、そこに居たのは、何と、"もう一人の真田雪村"だったのだ!
しかし、よく見ると、何となく違いを感じる。
下唇の右下に、雪村本人には無いホクロがある。
髪の色も、少し本人より茶色いようだった。




